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しおりを挟むエルマンガルドの両親は、できの良い方の娘が、実はハリボテだとも知らず、ブランシュが留学先で1か月も経たずに伯父夫妻の養子になりたがっていると知って、恩知らずな娘だと思って愚痴っていた。
まだ、エルマンガルドの化けの皮が剥がれる前のことだ。
「全く、双子でもこうも違っているとは思わなかったわ」
「見た目からして、よくわかるところはあるがな」
「でも、エルマンガルドが、公爵家の子息と婚約したのですから、邪魔されたら困るわ。あちらが、面倒みてくれるな。養子にさせてしまいましょう」
「そうだな」
こうして、ブランシュは意外にもあっさりと伯父夫妻の養子になることになった。
いや、ブランシュだけが拍子抜けしていただけで、ブランシュの叔父夫妻たちは、そうなると思っていた。
今なら、エルマンガルドが公爵子息の婚約者だからだ。これが、その後、どうなるかで面倒くさいことになる。ギリギリだったことを知ったのは、この後だった。
オデットは、上手くいったと聞いて、ホッとしていた。まだ、あちらでは騒ぎになっていないのだとわかって、正直なところ。ブランシュが幸せになる邪魔をしてしまったのではないかと気にしていたのだ。
「……オデット嬢。大丈夫か?」
「はい。まだ、騒ぎになってなくて、よかったです」
「あぁ、オデット嬢の仕返しか。……まぁ、叔母上たちは耳にしていても、スルーしているのかもしれないな」
「あー、都合よく聞こえるんですね」
「あぁ、これで、わかるのか?」
「はい。母と兄が、そうでしたから」
「……それは、オデット嬢も大変だな」
ブランシュの従兄であるジェラーム・アロシュは、そんなことを言った。オデットは……。
「いえ、母は兄さえいればいいような人ですから、兄も家の中のことや私生活さえ整えてもらえば優秀な人なので……。今の婚約者と上手くいかずとも、あわせられる方が現れて、あの母に負けない方なら大丈夫だと思います」
「……」
ジェラームは、何とも言えない顔をしていた。
オデットの父が、どう判断するかだが。私生活のみで、公爵家のことや働き始めて仕事ができないなら、跡継ぎとして問題あるとわかれば、兄をオデットが見なくなるだけだ。そんなことを思って、オデットは公爵家の今後を気にしていた。
留学している間に変わってくれればいいが、エルマンガルドとの婚約が上手くいかなくなっても、母がいる限りは難しい気がしていた。
あの母と渡り合えるのは、そうはいないだろう。
ブランシュは、こちらに来て養子になった。オデットだけが、留学期間を終えて戻るのかと思うと何とも言えない顔をしていた。
ジェラームは、それを見てオデットをずっと気にかけていてくれたが、オデットは自分のことでいっぱいいっぱいになりすぎていて、あまり彼のことをよく見ていなかった。
すぐそこに優良物件とも言えるブランシュの義理の姉妹になれる機会があることに全く気づいていなかった。
つまり、素敵な従兄には見えても、素敵な子息にはまだまだ見えていないということだ。
それをそっと眺めていたジェラームの母と姉は……。
「あの子には、もっと頑張ってもらわないと駄目みたいね」
「お兄さんが、とても優秀で見た目もいいらしいから、ジェラームでは魅力的に見えないのかしらね」
「伯母様、従姉様……? どうかなさったの?」
こそっとしていたら、ブランシュが不思議そうにやって来て首を傾げることが多かったようだが、その辺のこともオデットは気づいていなかった。これには、ジェラームも気づいていなかった。
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