母は、優秀な息子に家の中では自分だけを頼ってほしかったのかもしれませんが、世話ができない時のことを全く想像していなかった気がします

珠宮さくら

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オデットは、生モノで再び大当たりしたことは聞いていたし、それで入院したのは聞いていたのだが……。


「オデット様」
「……」
「オデット嬢。大丈夫か?」


ブランシュが心配そうに側にいて、その従兄のジェラームがそんなことを言って、母親と姉に頭を叩かれていた。


「っ!?」
「馬鹿じゃない。そんなことしか言えないの?」
「大丈夫なわけないでしょ。本当に気の利かないわね」
「よさないか。オデット、泣きたい時は泣くといい」


オデットは、それを聞いて苦笑いをした。


「死んでも死なない気がしてたのに。こんな、あっさり訃報を聞くとは思わなくて、まだ現実味がないんです」
「そうか。突然だからな」
「……」


そう。オデットの母が亡くなったという知らせが来たのだ。それを聞いてもオデットは涙が出なかった。

葬儀やら、何やらをオデットはどんな顔していたのかわからなかった。ただ、自分のことをどうにかするので手一杯で、兄が何やら話しかけているのも無視していた。


「オデット!」
「……え?」
「服を選んでくれ」
「は?」


ふと、呼ばれて気づいた時には、母を見送った後だった。何気にショックだったようだ。

まぁ、亡くなったことを喜ぶほど、酷い娘ではなかったことを喜んでいいのか。あんなのでも、亡くなったことにショックを受けていることに複雑な思いが芽生えていた。

そんなところに兄が服のことを話し始めたのだ。信じられなかった。


「留学も、もう終わるのだろ? それまでの服をコーディネートしてくれ。あとは、戻って来てからでいいから」
「……」


兄が、何を言っているのかが最初わからなかった。

だが、コーディネートと聞いて、イラッとしてしまった。


「そのくらい自分してください」
「なんだ。前はしてくれただろ」
「お母様に頼まれたから、仕方なくです」
「私が頼んでいるんだぞ」
「頼んでいるから、なんですか? というか。その歳で恥ずかしいこと言わないでください」
「なっ、恥ずかしいだと!?」


そこから兄妹喧嘩となり、騒ぎを聞きつけて父がやって来て、怒られたのは兄だ。


「覚えろと言っただろうが!!」
「っ、」
「できないなら、婚約者にしてもらってください」
「オデット。キルデリクに婚約者はもういない」
「え?」


どうやら、母が亡くなる前に婚約破棄になっていたようだが、色々ありすぎてオデットに知らされていなかったようだ。

既にコーディネートを任せて、兄は大恥をかいたようだ。一体、どんな格好をしたのやら。

しかも、エルマンガルドは破棄だけでなく、家に恥をかかせたとして勘当までされていた。

母の葬儀の時にぼーっとしすぎて、会った気がしなかったのは、来てなかったからのようだ。

母もいなくなり、婚約者も頼れなくなったから、オデットを利用しようとしたようだ。こりない人だ。


「キルデリク。卒業までに1人で、コーディネートができるようにならなければ、この家の跡継ぎから外す」
「そんな、あんまりです!」
「卒業まで、まだ猶予があるんだ。覚えろ。学園の勉強はできるんだ。やろうと思えばできるだろ」
「っ、」
「オデット。留学を延長したいと言っていたな。手続きはしておく。こちらのことは気にせず、あちらで頑張りなさい」


それを聞いて、キルデリクの方が絶望した顔をしていた。

そんな兄を見て、跡継ぎから外されるのも時間の問題にオデットに思えてならなかった。

流石にオデットとて、父に下着の話はできなかった。そんなことを言ったら、今ここで勘当されていただろう。


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