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第1章
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しおりを挟む隣国となるフィオレンティーナたちが住むトゥスクルム国で、オギュストたちが住むフォントネル国の学園生を留学生として今年こそは預かりたいと理事長であるオギュストは再三、トゥスクルム国の学園の理事長に毎年のように言われていた。
それには、毎年のようにオギュストは同じ反応を返して難所を示していた。あの子爵家の庭を見る前のオギュストは、それまで同様の反応をしていたに過ぎなかった。
花に理解ある者が、めっきり少ないのがトゥスクルム国というところだった。そんなところで、わざわざ学ぶことなどフォントネル国の者にはない。むしろ、辛くなってしまい、長居なんてできなくなっていた。
トゥスクルム国に行けるなら、まだマシだ。オギュストは、隣国の話題を口にするだけでも気分が悪くなるほど、その身に宿る血が拒絶するかのように不快感を感じた。それほどまでの凄まじい抵抗感を感じていた。
それでも、理事長になってからオギュストは何度か行ったことはあるが、期待してもいないのに幻滅して疲れ切って祖国に帰ることになった。オギュストですら、そんな風になるのだ。学生を留学させようと思うはずがない。
彼が理事長なんてしているのは、妻が子供好きだからに他ならない。なのに病弱で、医者に子供は無理だと言われていて、それならばとオギュストは子供たちの話をできるようにと理事長になった。
それだけ妻を彼は心から愛していた。妻の喜ぶ笑顔のために嫌なこともやる男だが、妻のために隣国に行くことは我慢の限界を軽く超えることだった。それこそ、妻の具合を悪くさせるところでしかないと思っていて、トゥスクルム国の話題すら口にしないようにしていた。
もっとも、クラリスが隣国の話を口にしないのは夫であるオギュストが、その言葉を聞いただけでも辛そうにするから話題にしないだけだ、夫ほどクラリスは隣国への不快感は大きくはなかった。
そんな時に噂を耳にしたのは、オギュストだった。それは見事なガーデンパーティーをトゥスクルム国のとある貴族が開いていて、話題になっていると言うではないか。
それにオギュストは、すぐに食いついた。たとえ、それがトゥスクルム国の話題でも、気になる単語があったのだ。
「ガーデンパーティー? あの国で?」
オギュストは、それを耳にした途端、彼の血が騒いだのを感じた。なぜか、物凄く興味を惹かれてしまったのだ。
「とても魅力的な庭だそうだ」
それを聞いた途端、彼は物凄く庭を見たくなって、仕方がなくなってしまった。それこそ、フォントネル国でなら、そうなることはあった。
でも、トゥスクルム国の話題にのぼっている庭だ。言葉通りな期待などしても、期待しすぎていたと後悔することになると普段なら思うところだが、そう思うことはなかった。
そこから、わざわざオギュストはトゥスクルム国の学園の視察に自ら日程を組んで行った。そっちは大したことなかった。期待なんて、元よりさらさらしていなかったのだが、そんなもんだと思ったよりも酷かったのは確かだが、それで疲れることはなかった。
だが、評判となっているというガーデンパーティーは言葉に表せない程、オギュストは感激した。
なんて素晴らしいのだろうと思い、彼は庭を隅々まで堪能した。トゥスクルム国で、血が喜びに沸き立つなんてことは、初めての経験だった。更に出されたお菓子やお茶にも、おもてなしの心が感じられた。普段なら、トゥスクルム国で食べ物なんて口にしないのだが、食べただけでも心がホッとした。
自国でも、そこまでの感激をオギュストはしたことがなかった。その興奮が冷めないままに戻るなり、妻にその話をして聞かせた。それも、初めてのことだった。
周りにトゥスクルム国の貴族たちがいても、オギュストはイライラしたり早く帰りたいと思うことはなかった。ただ時間が許す限り、その庭を眺めながらお茶とお菓子を堪能して、ゆっくりした時間を過ごした。
その間に沸々と思ったのは、愛してやまない妻にこの庭をどうにかして見せてやれないかということと学園の生徒たちにも、どうにかして見せてやれないかというものだった。
本人は、理事長なんて向いていない仕事をしていると思っていたが、いつの間にか理事長らしいことを無意識に考えるようになっていたことに彼は気づいていなかった。
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