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第1章
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しおりを挟む国内のことなら、オギュストはすぐにでもどうにかならないかと動けるが、隣国のトゥスクルム国のことになると難しいかと思いつつも、それでも一番に考えたことは、愛してやまない妻の喜ぶ顔を見たいと思った。
それこそ、あの庭を見たら、元気になるのではないかと思えてならなかった。一目自分の目で見たら、オギュストのように血が騒ぎ立てるはずだと思ってもいた。そうすれば、何かが変わるような気がした。
それこそ、話を聞いただけで見たいと思ったのだ。その後、自分の状況が周りに迷惑をかけると思って諦めることにした妻の気持ちもオギュストは痛いほどよくわかっていた。
だからといって諦めるなんてできなかった。いつもなら、オギュストも無理だと思うところでもあった。無理をさせて具合が更に悪くなったら、苦しい思いをするのは妻なのだ。
だが、オギュストは今回だけは諦めきれなかった。あの庭を見たら、何かが変わるという直感のようなものを感じていた。
そこから、彼は頭を悩ますことになった。
「クラリスにも見せてやりたいが、学園の生徒たちにも見てもらいたいものだ。あの庭は、それだけの価値があるものだ」
オギュストは、学園の生徒に今年は留学を一人以上はしてもらわねばならないと思っていた。
トゥスクルム国の学園の授業なんて、どうでもいい。あの庭を一目見るだけでも、オギュストのように感激するはずだ。その身に宿る血が騒ぎ立てて、喜びを感じるはずだ。それだけの価値が、あの庭にはある。
目を閉じただけでも、未だに鮮明にあの庭を思い起こすことができた。それだけで、血が騒いだ。それを思い出すたびにオギュストは、幸せな気分となっていた。
特に見てほしいと思う人物が、妻以外にも彼にはいた。
「特にリュシアンとキャトリンヌ辺りに見せたいものだ」
二人とも、オギュストの甥と姪だ。オギュストと同じく血が濃い二人の他にも甥はいるが、オギュストは二人が特にお気に入りだった。
キャトリンヌが行くとなれば、姪の婚約者も一緒に行くだろう。キャトリンヌは、フォントネル国でも稀な存在となっていた。彼女に先祖返りしているため、1人で隣国に行かせられないところがあった。そんな彼女を1人で行かせるなんてことをあの婚約者がするはずがない。
「行きたがらないだろうが、せめて、その3人には見せたいものだ。あれを見たら、私のようになるはずだ」
そう思って、理事長としてしっかりと生徒に伝えなければと準備を始めた。それは、嫌々やっている時とは比べものにならないほど、テキパキとしていてやることなすこと全てが早いものだった。
それこそ、理事長室の書類も、そうして片付けてくれればと秘書は思うところが多々あった。秘書も、彼に仕えるようになって初めて本気の姿を見ることになったことで、彼の妻のように物凄く驚くことになった。
それこそ、隣国に行った後だからと何かと気を遣うことになるものと思っていたが、どうにもいつもよりも変という言葉がしっくりくる状況になっていた。
「オギュスト様。あの、大丈夫ですか?」
「? どういう意味だ?」
「いえ、何でもありません」
「??」
隣国に行って帰って来てから、理事長の機嫌が良すぎるのだ。いつもと全然違っていて、別の意味で秘書は心配してしまっていた。それにオギュストが気づくことはなかった。
それどころか。テキパキと仕事をこなす姿に秘書は、何か良くない病気なのではないかとあらぬ誤解をしてしまったりもしたが、そうではなかったことをしばらくしてからわかることになった。秘書が心から安堵することになるまで、しばらくかかったが、そこまでになってもオギュストは誤解されていたことにも、誤解が解けたことにも気づくことはなかった。
だが、仕事をやる気になっただけで誤解されるオギュストも、中々のものだと思うが、そんな彼の秘書も中々だったようだ。
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