前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら

文字の大きさ
30 / 99
第2章


フィオレンティーナは、周りの殆どの貴族が妹のチェレスティーナに媚び売るのに必死な面々ばかりだとは思っていなかった。

いや、そういう面々ばかりだろうともフィオレンティーナは、それを知ったところで、はっきり言ってどうでも良かった。

それよりも、花の世話ができないことの方が嫌だった。フィオレンティーナの頭の中は花のことでいっぱいいっぱいとなっていて、周りで何を言われているのかもわかっていないほどに花のことばかりを考えていた。

部屋に閉じ込められていた頃よりも、それは強くなっていた。


(お庭の花たちは、どうしているかな。……このお花を見ると思い出してしまうわ。全部が枯れ果ててはいないと思いたいけれど、荒れ放題になってる頃かな)


そんなことを思って、学園の花を見ないようにしようとしたが、それもできなかった。やはり、花を見ていると和むのだ。フィオレンティーナの世界から、花を追い出すなんてことは不可能だったようだ。

ただですら、花の世話をさせてもらえなくなっているのだ。フィオレンティーナには、数日でも花に触れ合えなければ、気が変になりそうだった。身体が元気になろうとも、心が壊れてしまいそうだった。

触れあえなくなっても、見るだけでもしなければ、心が癒されないで荒んでしまう。


(やっぱり、ここの花たちって、不思議だわ)


気のせいかも知れないが、フィオレンティーナが見ると風もないのに揺れているのをよく見かけるのだ。そんな花が可愛くて、微笑ましくて、フィオレンティーナはにこにこしていた。

フィオレンティーナは学園に来てから、いつの間にか以前のように笑うようになっていた。それが続いて、フィオレンティーナは学園の花たちが気になり始めていた。

それこそ、そんなことに気づくなら、自分のことで色々と言っているのを聞いて、嫌な思いをしていてもいいところのはずだが、そんなことにはなっていなかった。

フィオレンティーナのすべては、食事と花に振り分けられていた。その中でも、花が一番の癒しとなっていた。

学園に来ているというのに勉強はその中に含まれていなかったのは、授業についていけないからではない。フィオレンティーナには物足りないものばかりだったせいで、つまらないとすら思っていた。

そのため、全ての授業には難なくついていけてしまっていて、余所事ばかりを考える余裕がたくさんあった。


(あの花って、あそこより、日陰が好きなのよね。あっちは、お日様が大好きでお水をたっぷりあげると長持ちするのよね。前世のお花に似ているから、あの花たちを見ていると懐かしい気分になるな。子爵家の庭は、こうして見ていると珍しい花が多かったみたいね。世話が難しそうなのばかりだった気がしてならないわ)


そうならば、あの庭師が世話をしていたとしても大変なことになっていそうだ。そう思うだけでフィオレンティーナの胸は張り裂けそうだった。

世話をして来た庭を台無しにされることで、フィオレンティーナのしてきた努力を無駄に終わらせることにではなくて、せっかくの花が駄目になることにフィオレンティーナは悲しんでいた。

誰に認められなくとも、花たちが変わりなく咲き誇っていてくれれば、それでよかった。フィオレンティーナは、あの庭を台無しにしようとしたと周りに疑われていても、そんなこと今更どうでもよかった。

最初は、そんなことで疑われて信じてもらえなかったことにショックを受けたが、今更だと思ってしまったのだ。

あの人たちにそう思われるのは、今更なのだ。あの人たちにそう思われたから、何だと言うのだろうと思った。

それを広められようとも、広めたことを信じられて疑われても、よく知りもしない人たちに何を言われても、どうでもいいと思うようになっていた。

疑われても、自分は一切そんなことをしていないのだ。それが事実だ。

ただ、疑われて引き離されたせいで、本当に台無しにされることになったことに悲しんでいた。そんなことをしたと決めつけた家族にも、世話などしてもいない庭師にも怒りを向けて憤慨するより、フィオレンティーナはただただ悲しみの方が強かった。

自分の方ができるとか。庭師に向いているとも思ってはいなかった。それを自慢に思うこともなかった。

ただ、花たちがストレスなく、特性を活かして他の花と咲いているなら、それでよかった。

そのためなら、フィオレンティーナが悪く言われることになろうとも、花たちがまともな世話をされているなら、フィオレンティーナは誰にも信じてもらえずとも構いはしなかった。


あなたにおすすめの小説

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる

あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。 魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。 しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。