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第3章
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しおりを挟むフィオレンティーナは、1か月半眠っていたとは思えないほど、目が覚めてから元気にしていたが、周りが心配して、屋敷の中を歩くくらいしかしていなかった。
そんなある日、ようやくクラリスと庭に出ることになった。
クラリスは、調子がよくなっているようだ。クラリスだけでなくて、国中で花の守り手が現れたことで、元気になる者が増えているらしく、その知らせにフィオレンティーナは喜んでいた。
目が覚めてから暗い顔をしていることも多く、何かとフィオレンティーナのことを気にかけてくれていた。また、眠りこけたら大変だと思われているのだろう。
だが、フィオレンティーナはここに生まれ落ちてから、風邪一つ引いたことがなかった。
あれだけ、一人で使用人の何人分の仕事をこなしていたかわからないというのに寝込んだことがなかったのだ。食事もろくに取れなくとも、倒れることもなかったのだ。
(あれも、私が妖精に好かれていたからなのかな?)
そんなことを思っていたが、誰かにそのことを聞くことはなかった。あんな扱われ方をしていたと知られたくなかったのだ。
それに過ぎたことだとフィオレンティーナは、今のことに集中することにした。
「これって……」
「フィオレンティーナ様のお部屋から見える庭を親方たちが、整えたんですよ」
「親方さんたちに皆さんも……」
ジェズアルドたちを見て、フィオレンティーナは驚いていた。
「フィオレンティーナ様のおかげで、このお屋敷で雇ってもらえたんです。それで、家族みんなでこっち越して来てます」
「家族で……、そうでしたか」
フィオレンティーナは、双子の片割れが烙印持ちとなって、大変なことになっていることを聞いていた。養父母たちからではない。出入りしていた者たちだ。その者たちは、この屋敷に出禁となったようだ。
フィオレンティーナは、両親たちがどうしているかと心配する気にはならないが。
こちらに避難しているというより、仕事を評価されて雇われたのだとフィオレンティーナは思っていた。
「素敵なお庭ですね」
「フィオレンティーナ様の手掛けたお庭に比べたら、まだまだです」
「お、親方さん」
「気に入らないところがあれば直してください」
「そんな、気に入らないなんてないですよ。……ここで、ガーデンパーティーしたいですね」
「パーティー?」
「あちらでは、ガーデンパーティーをよく開いていたんです」
(でも、準備はやらされたけど、参加はしたことなかったのよね)
使用人たちは、仕事をやらずに好き勝手していて、フィオレンティーナ一人で切り盛りしていた。それなのに給料をちゃっかりもらっていたのだから、何とも言えない。それもこれも、庭で花を世話したいがためにしていたのだ。
もう、あの庭は見るに堪えないものになっていることだろう。
「あ、お礼にガーデンパーティーさせてください」
フィオレンティーナは、それなら自分にもできると思った。
それを言われた面々は、いい案を思いついたと言わんばかりのフィオレンティーナとは別の顔をしていたことに彼女は気づいていなかった。
そう、ガーデンパーティーをしたいのではなくて、自分が主催する側で裏方を含んでいたからだ。
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