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しおりを挟む両親は口論していたが、それは保留となって、診察の結果を告げられることになった。
「私、歩けなくなるの?」
「そうなる可能性が高い。でも、これから手術をして、リハビリをしっかりして、ちゃんとした治療していけば、歩けなくなることはまずないよ」
それを聞いて、ベルティーユは眉を顰めて、泣きそうになった。
「ダンスは? 練習したら、お父様と踊れる?」
「ベルティーユ」
「お父様とダンスを踊る約束をしたの。頑張ったら、できる? ずっと練習しているの」
これまでも、ずっとその約束を守ろうとベルティーユは頑張ってたくさん練習していた。それが、全く上手くいっていなくて、ダンスの先生にはセンスというか、その才能がないかのように言われて匙を投げられているが、上手く足が動かないのも、病気だったからのようだ。
でも、ベルティーユではダンスはハードルが高すぎるようだ。
「約束したのに。ごめんなさい。お父様」
「謝ることはない。ベルティーユは、何も悪くないんだ。むしろ。すまなかった。とっくに診察を受けているものと思っていたんだ」
父の言葉にベルティーユは、きょとんとした。その顔に父は首を傾げた。
「お父様。私、診察受けたの初めてよ?」
「何だって?」
「っ、」
父は、それを聞いて母を見た。母は、視線を彷徨わせていた。
「どういうことだ?」
「あの、その、色々と忙しくて……」
「忙しいだと? 病院で検査は受けさせて何ともないと私は、お前から聞いたはずだ」
「そ、それは、その大した病気じゃないと思って……」
そこで、母が大した病気ではないだろうとそのままにしていたことが発覚することになった。先程もそうだが、再び、病院で夫婦喧嘩が勃発することになったのも、仕方がなかったと思う。
更にアレクサンドラのことも、父は激怒した。ベルティーユにそんなことを平然と言うなんて、どうかしていると怒っていた。
アレクサンドラは、遊び回っていたのに呼び出されて病院に来て、つまらなそうにずっとしていた。ベルティーユが病気だったから何だと言わんばかりに他人事にしていた。
その態度が、父は気に入らなかったのだ。先程聞いたことを聞けば、確かに言ったというのにも腹を立てていた。
それには、母以外のみんなが、凄い顔をしたが、アレクサンドラは本当のことだと言わんばかりにしていた。
それに慌てて母は、こう言ってアレクサンドラを庇っていたが、それをベルティーユがしていたら、この母は庇ってはいなかっただろう。
「子供言うことよ」
「だから、何を言っても許されると? そんなわけあるか。双子の片割れの気持ちすらわからないで、誰の気持ちならわかるというんだ」
「そんな、アレクサンドラだって、他の子の気持ちくらいわかるわ」
「ベルティーユの気持ちがわからなくともいいとお前が、そんな態度だからアレクサンドラが真似ているとは思わなかったのか!」
それがもとで、両親は離婚することになった。アレクサンドラが母に引き取られて母方の祖父母のもとに行ってしまったのは、ベルティーユの病気が発覚してすぐのことだった。
ベルティーユは、あの日から入院することになってしまい、母とアレクサンドラに会ったのは、あの日が最後になってしまった。
あの家に帰っても、もう2人がいないとわかってホッとした気持ちしかなかった。
父は、離婚した時に双子なのだから毎年検査をアレクサンドラに受けさせるように何度も母に言っていたようだ。
だが、アレクサンドラはいつも元気いっぱいに走り回っていたのもあり、検査をすることもなく過ごしているようだ。
元より、母は自分に似ているアレクサンドラを可愛がっていたが、あまり似ていないベルティーユのことをぞんざいにしていた。
今回の離婚のことも、ベルティーユが大袈裟にしたせいだと思っていた。それは、母だけでなくて、アレクサンドラも同じだった。
更には母方よ祖父母も同じように思っているようで、両親が離婚してからは、ベルティーユがそちらの祖父母に会うことはなかった。
元々好かれてもいなかったから、ベルティーユは会えなくなってホッとしかしていなかったが。
ベルティーユの方は、病気がわかってから入院し続けて、手術をしたり、リハビリをしたりしながら、ダンスは無理でも、父と散歩をするのだと病院で頑張っていた。忙しいだろうに父はちょくちょく顔を見に来てくれた。
頑張っていると医者や看護師に言われたとベルティーユはよく褒めてくれたが、ベルティーユは浮かない顔をしていた。
「ベルティーユ。頑張りすぎるな」
「……うん」
父は、ベルティーユになんと声をかけていいのかがわからない顔をしていた。
だが、ベルティーユが目標とする自分の足だけで歩くのは困難だった。どうしても杖を手放すのは難しかった。
すると何度も病院に見舞いに来てくれていた殿下と呼ばれていた第2王子が、落ち込んで泣いているベルティーユに言った。
「ベルティーユ。僕が、君の3本目の足になるよ」
「?」
その意味がわからなくて、ベルティーユは泣いていた涙が止まって、きょとんとした顔で彼を見た。
「僕に掴まって歩けばいい」
「でも」
それすら、難しい時がある。ベルティーユの足のせいなのか。元より、ベルティーユがドジなせいなのかがわからないが、倒れやすくなっていた。
「歩くのが難しいなら、僕が大人になったら抱きかかえて、どこへだって連れて行く。頑張り過ぎて転んで怪我するよりいいと思うけど、どうかな?」
「レオンス様、ずっと一緒にいてくれるの?」
「うん。君がいいって言ってくれたら、僕が側にいる」
そんなことがあって、ベルティーユとエドモン国の王子であるレオンスは、婚約することになった。
それを誰よりも喜んだのは、同じ病気の第1王子だった。彼は、車椅子で生活していて、病気を見つけるのが遅くて自力で歩くのが難しくなっていたが、ベルティーユを見てくれたあの初老の医者が彼のかかりつけ医なため、詳しかったのだ。
そんな共通点があったことで、第1王子とも、ベルティーユはすぐに仲良くなった。
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