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しおりを挟むリアムから久々に手紙が来たのは、イライザの祖母のお茶会から、しばらく経ってからだった。
“遊びに行ってもいいか“という内容でなく、“行くから、よろしく“という文面にイライザは久しぶりに声を出して笑ってしまったほどだ。
(婚約破棄されたから、ここに来るって、愚痴でも聞かされるのかしら?)
やって来た幼なじみは、見違えるほど逞しく格好良くなっていた。ちょっと、やつれているのが残念だが、それでも花の似合う可愛らしい男の子は様変わりしていた。
(なんで、この容姿で婚約破棄されたのかしら? 我が国の公爵家の次男で、優良物件なのに)
浮気なんて出来るほど器用な性格ではない。どちらかというと婚約者を大事にし過ぎる傾向が強い。
そんな幼なじみが、この国の王女であるイライザよりも、婚約者が浮気を心配して不安に思うのならと付き合いをきっぱりやめてしまえるような男だ。
(まぁ、リアムにとって、私はただの幼なじみでしかないのよね。婚約者をそれだけ大事にしていたのにどうして、婚約破棄になったのかしら?)
イライザも、浮気相手だなんて思われるのは面白くない。何より機嫌とりをする幼なじみなんて見たくもなかったから、丁度よかったと思っていた。寂しいと思わなかったわけではないが。相手が隣国の王女であろうと一人の女性を大事にするためにしたことだと思っていた。
「……ここは、変わってないな」
「住んでる人間が、変わってないもの」
「そうか? イライザは……、いえ、イライザ様は、以前にお会いした時よりも……」
「様付けしなくていいわ。敬語も不要よ」
「ですが」
「幼なじみと話しているのよ? 公務で話す時みたいにされたら、眠くなってしまうわ」
「……イライザは、以前に会った時より、ずいぶんと綺麗になったな」
「変わってないわけないでしょ。昔みたいに泥んこまみれで走り回ってるのと一緒にされても困るわ」
「……そういうつもりで言ったのではないんだが」
「わかっているわ。ありがとう。あなたも、見違えるほど、逞しくなったわね。とても素敵よ」
他愛もない話をしてから、リアムは婚約破棄の話をし始めた。
長期休暇中に具合が悪くなった彼の婚約者で隣国の王女からの知らせに見舞いにすぐにでも行きたかったが、こちらに戻って来ていて、そうもいかず、心配して贈り物を送っていたらしい。
「この国で一番美しい花と手紙を送っていただけなんだ」
この国の美しい花という単語にイライザは、思い当たることがあった。
きっとリアムは知らないのだ。この国で、美しい花々には大なり小なり、毒があることを。
そんな花を贈ったせいで、それを自室に飾った王女はものの見事に被れてしまったらしい。
更には、リアムに出した手紙はそもそも嘘だったらしく、綺麗な花が届いたとして、お茶会を開いて見せびらかして、参加して令嬢たちもみんな被害にあったことで、被れてしまったのだ。
そもそも、嘘をついた方は向こうなのにとんでもないものを送りつけたとして、婚約破棄になったというのだ。
「イライザは、大丈夫だったのか?」
どうやら、イライザにも幼い頃に渡していたことを思い出して、今更ながらに心配していたようだ。
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