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しおりを挟む何もしたくなくなっているというのにエウフェシアは、いつもアルテミシアたちに巻き込まれて終わっていた。
(どうして、ループし続けるんだろう……? 私は、やり直しなんて望んでいるつもりは全くないのに)
ループし続けることにエウフェシアは、げんなりしていた。そのことを忘れていたら、まだよかったのかも知れないが忘れることも叶わなかった。数えるのも馬鹿らしくなった頃に少し違ったことが起こった。
エウフェシアは頑なに行動をすることはなかったから、世界が先に痺れを切らしたのかも知れない。
「エウフェシア」
「っ、殿下」
姉の婚約者の王太子がエウフェシアに声をかけて来たのだ。エウフェシアが浮気しているわけでもないのに浮気現場を見ているのを楽しんでいたわけでもない。聞き耳を立てていたわけでもない。ただ通りすぎようとしている時だったのだが、なぜかエウフェシアの方があたふたとしてしまった。
(ここにどうして、いるの!? これまで、一度も会ったことないのに)
今まで、姉がエウフェシアの婚約者と浮気している現場で、王太子と鉢合わせしたことはなかった。その逆もなかった。こんな風に周りに人がいない時にわざわざ話しかけられたこともなかった。
ようは利用価値がない時は、エウフェシアなど空気のような対応をされていたのだが、この時はわざわざ声をかけられてしまったのだ。利用することにしたということに他ならない。
「隠すことはない。知っている」
「……」
(知ってるのに放置してるってこと? どうして??)
王太子によって、姉が何をしているのかを聞かされることになったエウフェシアは、数日何をしていたかを覚えていない。ループし始めてから、そんな風に記憶が抜けるのは初めてだった。
(よくもまぁ、ここまで調べ尽くしたものだわ。……というか、ここまで調べ尽くしているのに、王太子が何もしないのも変よね。何で、私に事細かに話す必要があるのよ)
余計なことに首を突っ込むはめになった気がしてエウフェシアは頭痛を覚えてしまった。
ヘシュキオスだけとアルテミシアは浮気していると思っていたが、それは氷山の一角に過ぎなかったようだ。
(いつの間にやら、ヘシュキオス様みたいになってたみたいね)
姉が何をしているかなんてまるで興味がなくなっていたエウフェシアは、教えられた数々のことにぎょっとしてしまった。
だが、エウフェシアは首を傾げたくなった。それを事細かに調べ尽くしているのをエウフェシアにわざわざ教えた王太子に何をしたいんだと思ってしまった。
(何かなければ、私に話すわけがない。私は何に巻き込まれたの?)
そんな姉の裏の顔をはっきりと知ることになったエウフェシアは、久しぶりにぼんやりしすぎて両親や学園の先生やらに怒られることになった。それまでは、やり直し続けていたせいで何を言われるかなんてわかりきっていたのだが、ぼんやりし過ぎて聞いてなかったせいに他ならなかった。
更に姉は、すかさずこう言って来た。
「エウフェシア。大丈夫? 具合が悪いんじゃない?」
「……」
「無理することないわ」
アルテミシアは、両親に色々と言われているのを見かねたのか。両親が側にいるから、優しい姉の顔をしてそんな風にエウフェシアに気遣うようなことを言ったのだ。
「そうなのか?」
「風邪なら、移さないでちょうだい。迷惑よ」
「……」
両親は心配するでもなく、エウフェシアにそんなことを言ったが、アルテミシアは医者を呼んでくれようとした。両親や周りに人がいるとアルテミシアは、いつもエウフェシアに対して優しくしてくれていた。それをエウフェシアは丁重に断った。
普段なら、アルテミシアにそんな風にされないようにしていたが、久々にそれを姉にされてしまったのだ。
(最悪すぎる)
エウフェシアは、まともに姉の顔を見れないまま、部屋に戻って王太子に言われたことを考え始めた。
姉の浮気相手はヘシュキオスだけではなかったのだ。味をしめたのか。要領を掴んだのかはわからない。
(そういえば、完璧な令嬢と呼ばれる言葉を聞くのもなくなってきていたわね)
妹の婚約者だけでは飽き足らず、他の令嬢の婚約者にまで手を出し始めたことを聞かされたのだ。婚約者が浮気しまくっているのを聞くより、身内のことをあれこれ聞いてもいないのに聞く方がしんどかった。
王太子が知っていると言うだけはあったのは間違いなかった。ありすぎる程の証拠を王太子は持っていた。
(知りたくなかったな。でも、もう、自慢の姉には見えてはいないけど、これはどうなっているの? これまでと違うことになってるのは、間違いないようだけど、周りが騒ぎ立てているのも放置しまくっていたから、完璧なお姉様はどこにもいなくなっているようだけど、これも私が悪いって終わりになるとかないわよね?)
王太子が、詳しく調べておきながらも、好き勝手するアルテミシアを放置しているのにエウフェシアは首を傾げつつ、この時はどう終わることになるのかが気になってしまった。
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