完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します

珠宮さくら

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エウフェシアは色々と頑張ったところで、結局はループすると思っていた。ループを止めることは、誰にもできないと思っていた。

そう、目覚めるまではそんなことになると思っていたが、それも目覚めるまでのことだった。


(?)


エウフェシアが、目を覚ましたところは、ループで戻るお決まりのところではなかったのだ。

でも、目覚めた途端、ループしていたことを覚えていなくて、ただ違和感が前面に出るだけだった。


(ここは、どこだろ?)


目が覚めたエウフェシアは、見知らぬ部屋に寝かされていた。見知らぬというのも変な感覚だが、エウフェシアの部屋ではないと思ったのは、すぐだった。

誰だったかが、何かとお揃いにしたがっていて、エウフェシアの好みのものなど何もない部屋にいたような気がしたのだ。それが誰だったのかは覚えていないが、自分の部屋なのに好みのものが何一つないところにエウフェシアは長らくいた気がしたのだ。

そう、公爵家の令嬢として、最低限のものしかない部屋でもなかった。……それも、変な話だが、エウフェシアはそんなことを思った。なぜだか、わからないが、そう思ったのだ。


(変な感じ)


でも、どこか懐かしい気もした。この部屋に何の愛着もわかないが、部屋に対してではなくて不思議な感覚で言い表すのは難しいが、上半身を起こして部屋を見渡していた。


(何だか、身体がとても怠い。それに関節が動かしにくい。風邪で、寝込んだあとみたい。……それより、酷いかも。何があったの?)


自分の手なのにグーパーとしても、長らく使っていなかったかのような違和感が大きかった。


「まぁ! エウフェシア様、お目覚めになられたのですね!!」
「?」


そこにメイドの格好をした女性が慌てふためいていて大騒ぎしながら廊下を駆けて行ってしまったのを呆然と見送ることしかできなかった。

残されたエウフェシアは……。


(目覚めたって、言ったわよね……? 私、ずっと寝てたってこと? 公爵家でも、私に専属のメイドなんて付いていたことなんてなかったのに。……いなかったわよね?)


そんなことを思って首を傾げずにはいられなかった。そんなことをしていると両親らしき人たちや他の人たちが、部屋にやって来たのはすぐだった。両親らしき人たちというのも、エウフェシアはその人たちを見ても違和感しかなかった。違和感というか。見慣れない人たちにしか見えなかった。そんな風に駆け込んで来て、自分の心配をしてくれる人を知らないと思ったのだ。


(私の両親って、あんなだったっけ? 私の心配をしてくれるなんて、変な感じ)


そんなことを思っているとエウフェシアは、とある人の婚約者候補の1人として試練を受けていたが、ただ1人中々目を覚まさずにいたのが、エウフェシアだと聞かされて、目をパチクリとしてしまった。

それで、眠ったままでいたことにも驚いたが、その話を聞いても理解が追いつくことはなかった。


(婚約者候補……? 試練? 何の話?)


わけがわからなくなっていた。時間が経てば解決するかと思ったが、そうはならなかった。ずっとエウフェシアは目が覚めてから困惑した顔ばかりしていた。

目が覚めてから、なぜか知っている人が見当たらなかったのだ。


(知っている人のはずなのにまるで別人のような感覚なのは、どうしてなの?)


そのせいで、エウフェシアは現実味を感じられずにいた。身体が慣れようとも、エウフェシアは、慣れないものに囲まれている感覚が残っていた。








「エウフェシア! あぁ、よかった。中々目が覚めないから心配していたのよ」
「……」


学園の授業に出るためにエウフェシアは、日常に戻ることになったが、記憶は曖昧なままで以前のことを思い出せないことに変わることはなかった。

試練を受けている間のことも、何をしていたかをエウフェシアは思い出せずにいた。ただ、姉が学園の寮から妹が目を覚ましたと聞いてすっ飛んでやって来た時に身体が固まってしまった。何より、抱きつこうとして来た姉を思わず突き飛ばしてしまったのだ。それも思いっきり、拒んでいた。


「エウフェシア……?」
「っ、」


突き飛ばされた方も、それを見ていた面々も驚いていた。そんなことをしたエウフェシアの方も驚いてしまった。ただ、姉だという令嬢に抱きしめられるのが我慢ならなかった。抱きしめられるどころか。触られることが、嫌だと思ってしまったのだ。


「えっと、まだ、目覚めたばかりでお疲れなようです」
「そ、そうよね。試練が、あんなに続くのなんて稀だものね」


みんな、試練のせいで精神的にまいっていると思ってすんなりと納得してくれた。

確かにまいってはいる。でも、姉のことはそれだけではない気がしてならなかった。


(試練なんて、覚えていない。でも、この人が、姉なの? 何だか、見慣れないわ。こんな人ではなかった気がする)


そんなことがあってから、エウフェシアは学園でも色々と言われても、誰が誰だかわからずに困惑してしまう毎日に疲労困憊になってしまった。

学園は、みんなが寮生活をしていたが、エウフェシアはそれにも違和感を覚えてしまっていた。


(学園が寮生活なのにどうして、こんなにも違和感を覚えてしまうのかしら。凄く変な気分)


試練を長く受けていたようだが、それがどんなものだったかをエウフェシアが思い出そうと思っても靄がかかったようになって、全く思い出せないままだった。

それでも、苦手なことには過剰に反応した。姉の時のように突き飛ばして触れられることを拒む人は他にもいたが、なぜそんなことをするのかがわからなかった。

ただ、全力で拒むことを我慢していては、エウフェシアは自分が完全に壊れる気がしていた。


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