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しおりを挟むステファニアが婚約して、オルテンシアもようやく留学先の王太子に好かれていて、熱烈なアピールをされるようになって気づかないわけにはいかなくて、たじたじになっていた頃には、留学先の王太子のジェミニアーノと婚約をしていた。
婚約したのを見届けるかのようにして、オルランドは留学を終えて帰国した。
あちらで、王女と婚約をして、ステファニアとよりを戻せるならしようとしたミケーレにとどめをさしたことも、オルテンシアはだいぶ経ってから知ることになった。
「オルテンシア。どうした?」
「いえ、何でもありません」
ジェミニアーノは兄に負けず劣らず情報に疎いなんてことはありえないため、知っていてあえてオルテンシアには伝えていないのだと思った。だから、この話題を今更だと思ってあえて口にしなかった。
ミケーレが全てをやったことにされていた。跡継ぎからも降ろされ、王女との婚約もなくなり、家族からも周りからも信用も信頼も何もかもを一片に失くすことになった。
それも、王女との婚約が解消となって、ステファニアとよりを戻そうとしたから、そうなったようなものだ。大方、ステファニアが公爵家の子息と婚約したこととオルランドが彼の元婚約者の王女と婚約したことで、何があったかにたどり着いたのだろう。
まぁ、たどり着かないわけかないが、そこまでになってステファニアの婚約を台無しにしたのは間違いない。そうでなければ、暴露されることはなかったのだ。
オルランドは可愛い妹の1人であるステファニアのために動いたまでに似すぎない。いざとなれば、自国の王太子が計画していたことをいくらでも崩せる策を講じていたのだ。
それには、あの王太子は気づいていなかったようだ。ミケーレが今更になって暴露されたのも気にかける余裕がなかったのは、オルテンシアがジェミニアーノと婚約したと知って激怒していたからにほかならない。
自分と婚約するはずのオルテンシアが留学から中々戻って来ないだけでなく、そこの王太子と婚約をしたのだ。
しかも、思い通りにいかなかったことがなかったらしく、コケにされたとばかりに余裕もなくなった王太子が、オルテンシアのことを奪いに乗り込んで来るとは思いもしなかった。
もっとも、ジェミニアーノの方はそうなるだろうとわかっていたかのようにオルテンシアを守った。どちらも王太子のはずが、余裕のなくなった方は酷いとしか言いようがなかった。
こんな人にステファニアは唆されたのかと思うほどだった。
「オルテンシア嬢。そんな男より私の方が、君を幸せにできる」
「……あなたがしたことで、今こうして幸せになれています。これ以上の幸せはないと思いますけど」
「っ、オルテンシア嬢」
「私を幸せにしたいとおっしゃるなら、その顔を見せないでいただけますか?」
オルテンシアは、虫唾が走ると言いたかったが言わなかった。
だが、こんなにもあっさりと拒絶されるとは思っていなかったようで、婚約者として連れ帰るとオルテンシアの腕を掴んで、ジェミニアーノがブチギレることになったのは、この後すぐのことだった。
そんなことになった者を王太子にしていけるわけがなかった。あっという間に彼は、これまで貶めて来た人たちと同じく坂を転がるように厄介者として追いやられることになった。
そんなことがあって、ジェミニアーノは隣国の王太子から婚約者を颯爽と守った人物と思われることにもなった。
「素敵ね」
「本当よね。あんな風に私もなりたいわ」
オルテンシアたちはいつ見かけても仲睦まじくしていた。それは、他の兄と妹も同じだった。
伯爵家の3兄妹たちは、こうしてそれぞれが運命の人と添い遂げることになって、誰もが羨むほどの幸せな人生を送ることになった。
ちなみにオルテンシアの元婚約者であるフィエロは、再び侯爵家の跡継ぎとなり、男爵令嬢のカルロッタが黒幕ではなくて、実の弟がしたことで婚約者が全く関与していなかったことがわかってから、怒鳴り散らすのをやめた。
お互い被害者として接するようになったが、それまでの散々なことを言っていたのとフィエロがしていたことではなくて、弟がしていたことだとわかって、カルロッタは婚約していたくないと言っていたが、世間体を気にしたのとそんな風に被害者同士でもあり、弟がやらかしたことの責任を兄として、きっちり取れる人物なのだと見栄を張りたいミケーレによって解消も破棄もしてもらうことは叶わなかった。
そのせいで、益々2人の仲は険悪となったかというとそうではなかった。カルロッタは、侯爵家の跡継ぎとなったミケーレの方と婚約し続けることに異論はなくなっていた。
オーダーメイドのアクセサリーを買えるほどだ。贅沢三昧ができることを考えて、あっさりと機嫌を直したようだ。もっとも、機嫌を取るために散財を繰り返すことになって、結婚してからがもっと大変なことになったが、それはミケーレの自業自得でしかない。
カルロッタも、散々な目にあったが好きなものを買い与えてくれることになって、罵詈雑言を浴びせかけられていた日々があったからこそ、贅沢ができると思って疲れ切っていた。
侯爵家の跡継ぎを産んだ後にひっそりと療養が必要になったと田舎に追いやられて息子にも会わせてもらえなくなる未来が訪れるとも知らず、ましてや療養が必要となってからひっそりと離縁されて、侯爵家に新しい妻が迎え入れられて、その女を息子が母親だと思って育てられることになるとは思いもしなかった。
ただ、ずっと続くことになると思っていた幸せの寿命が物凄く短いことに気づくことなく、あんな目にあったのだから、これからは幸せになる一方だと浮かれてしまったことで、ミケーレにこんな厄介なのを妻にしておけないと早々にどうにかしようと思われていることにも気づかなかった。
ある意味、気づかない間の束の間の幸せが一番だったのかもしれない。
そんな風に元妻を切り捨てたミケーレも、新しい妻を迎えても、彼がこれからは自分が幸せになる番とばかり思っていても、その通りなることはなかったのは、自分がこれまでやったことに反省も謝罪もせずに過ごして来たからだと気づくことはなく、次に目に見えて不幸になるのは自分だと知りもしないまま、己の息子だと思っていた元妻から取り上げた子供が、別の男の子供だと気づくことなく新しい妻が産んだ子供も父親が違うことも気づくことはなかった。
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