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(アンリエット視点)
何であんなことをしてしまったのか。そもそも、王太子が悪いのだ。学園で、見たこともない美少女を嬉しそうに抱きしめていたのだ。あんなのを見たら、頭に血がのぼってもおかしくないはずだ。
やっと誰もが憧れ望むものを手にしたのだ。それを排除するのにどれだけのことをしてきたことか。
それを裏で上手くしてきたのにあの時は我慢ならなかった。やっと手にしたそれを簡単に持っていかれそうで怖かったのだ。
公爵令嬢だから、身分的に王女でさえなければ、平手打ちしたくらいじゃ勘当までされてはいなかったはずだ。
それと婚約していたのが、王太子でなければ、不用意に婚約者以外の異性に抱きついていた王太子のことをもっと責め立てられたはずなのだ。
その後に王太子を誰かと勘違いした令嬢たちが、次々と学園に訪れたようだ。それを勘当されてから耳にした。そして、ふとした疑問が生まれた。
「あの時、王太子を誰と勘違いしたのかしら?」
留学なんてする余裕は王太子にはなかった。他の王子も、そんなことしてはいなかった。いたとしても、王太子と間違うほどの美青年にはねらないはずだ。
ならば誰が、そんなことをしたのか。その子息にはめられた気がする。王太子が王女である同腹の妹を抱きしめていなくとも、王太子のことを留学して来た子息と思い込んで、私にあれこれ言って来たはずだ。
最初の令嬢のように言われ続けたら、私とて我慢の限界を迎えるのも早かったはずだ。現に勘当されてからも、何人も来たのを噂で聞いた。
それは、1つの国ではなくて、ルベロン国の周りの国々から来ていた。
「この国にそんな隠れた美青年がいるってことよね?」
王太子にそっくりな美青年。もしかすると国王のご落胤とかなのでは!?
「っ、」
私は、そこでハッとした。あれだけ、各国から美青年を追いかけてやって来ているのにその青年が見つかっていないのだ。
まるで、存在しないかのように消えてしまったのだ。それは、留学している間に翻弄するのが役目だったのではなかろうか。
自分の方が王太子に相応しいと虎視眈々と狙っているのだろう。時期が来たら、王太子にそっくりな、ううん。それ以上の美青年が王太子に相応しいのは自分だと言い出すはずだ。
そのために他の王子たちが離脱するまでになって、王女たちも各国に嫁ぐことになったに違いない。
それに第1王女にも婚約者ができて、その婚約者に嫉妬してすっかり王太子は腑抜けてしまったようになっている。
王太子にそっくりな子息を探して味方になれば、勘当した家族も私のことを見直すはずだ。そう思って、私は必死になって美青年を探し回った。
絶対にどこかにいると信じ続けて、見つからないことに意地になって、一生を台無しにすることになるとは思いもしなかった。
だって、私が一番誰よりも真相に近づいているはずだから。
そう思い続けることで、自分を保つようになったアンリエットは、その美青年を見つけさえすれば、婚約者になれて、妻に娶ってもらえて幸せになれるといつの間にか思い込むようになって、ずっと探し続けることになり、周りにあまりのことに現実逃避
をしたと思われても、おかしな行動をやめることはなかった。
やめてしまえば、現実を見なくてはならなくなる。見たくもない現実よりも、いるかもしれない人を探し続けた方が幸せだった。
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