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しおりを挟むそこから、全てが吹っ切るまで、オリーヴはすぐだった。
それこそ、刷り込まれた王子様像にしがみついていたって、自分の理想ではなかったのだ。まぁ、三度目は本当に好きだったのかもしれないが、それも刷り込まれたものだと思ったら、オリーヴは楽になれた。
「あの、前に誘ってくださっていたのに断り続けてしまって、ごめんなさい。その、今更だとは思うけど、皆様のおすすめの場所に出かけてみたいのだけど、今のおすすめはどこかしら?」
オリーヴは、それまで話しかけてくれていた令嬢たちにそんなことを言った。
令嬢たちは、きょとんとしながらも、嬉しそうに笑ってくれた。
「よければ、ご一緒しましょう。ご案内します!」
「私たち、新しいお店ができたと聞いて今から、そこに行こうと話していたところなんですよ」
「新しいお店?」
「えぇ、とっても素敵らしいらしいですわ」
「行った人たちが、褒めすぎているのかもしれませんけど」
「え? 褒めすぎることがあるの?」
「ありますわ。それとお客が多くなって、店の人たちが図に乗って、お客の身なりで態度を変えてしまうところもあるんです」
「そんなところは、すぐに潰れてしまいますけど」
令嬢たちは、散々断っていたというのに嫌な顔もせずにオリーヴを迎え入れてくれた。とても、素敵な人たちだと思ったが、話している内容にオリーヴは苦笑することが多かった。
そんな令嬢たちと仲良くなって、ある時こんな話になった。
「そういえば、オリーヴ様の国の王子の話を耳にしましたわ」
「え?」
「何でも、王子が好きだと噂になった令嬢と婚約したそうですが、それがその噂を故意に流したのが、その令嬢だったそうなんです」
「っ、」
それを聞いて、オリーヴはぎょっとしてしまった。今、祖国の王子は、オリーヴが幼なじみとくっつけた人しかいないのだ。間違いようがない。
「まぁ、それで婚約して、どうするつもりだったのかしらね」
「それこそ、王子に知られてしまって婚約破棄で揉めているそうですわ。何でも、その王子には本命がいらしたようなんです」
「……本命がいらっしゃるのになぜ、婚約したのかしらね」
「……」
そんな話をしていると令嬢たちの婚約者が現れた。子息たちとも、オリーヴは顔なじみになれた。その中に見慣れない子息がいた。
「まぁ、イーデン様。もう、戻られたのですね」
「戻られた……?」
オリーヴは、それに首を傾げた。どこかに行っていたようだが、その言い方に引っかかってしまった。
「あ、オリーヴ様。こちら、公爵家のイーデン様です」
「初めまして、イーデン・ヴァンスです」
「初めまして、オリーヴ・ダルトと申します」
すると他の子息たちが、オリーヴと話していた婚約者の令嬢を連れて行ってしまった。何やら急いでいたようだ。令嬢たちは、婚約者の行動に怪訝な顔をしながらも行ってしまった。
残されたのは、オリーヴとイーデンだ。
「私、実はオリーヴ嬢のいる国に留学しに行ったのですが、行っても目的が果たせなくて、戻って来たところなんです」
それを聞いて、オリーヴは顔色を悪くさせた。
「それは、何か不快な思いをされたのですか?」
「いえ、その……、単刀直入に言いますとあなたに会いたくて留学したんです」
「え? 私に?」
「はい。それが、あなたがここに留学していると聞いて、すぐに戻って来てしまいました。さっき、それで色々と誂われてしまっていたんですが、こうして話すために手助けしてもらえたのでよかった」
「……」
イーデンの言葉と態度で、好かれているのはよくわかったし、友人にも恵まれているようだ。
オリーヴは、幼なじみが嘘をついていたことやあの王子に本命がいたのにそれを邪魔してしまった罪悪感もあったが、なぜ本命がいたのにあっさりと婚約したのかに疑問しかなかった。
まぁ、結果的には余計なことをして王子の恋路を邪魔してしまったのだ。それに今更、ニコラにどんな顔して会えばいいのかも、わからなかった。
それもあり留学期間を延ばして、イーデンとの時間を増やすことにした。
それまでは、想いを寄せてくれている人と一緒に過ごすことなどしたことがなかったのだ。イーデンと話すのは、楽しくて時間を忘れることが多かった。
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