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しおりを挟むそんなミュリエルが、学園に入る少し前にミュリエルは王太子と婚約することに決まった。幼い頃から何かと頑張って来たのだからと同然のように周りには思われていた。ミュリエル以上に相応しい令嬢はいないと思われていたことをミュリエルは知らなかった。
それほど、公爵令嬢として頑張っていたとも言えるが、気にしすぎていたらトレイシーと伯父が気になりすぎるのも大きかったのかもしれない。
知らぬ存ぜぬのままが楽だったのだ。そうやってやり過ごして、ミュリエルはおかしいと思うことをしないようにしていていた。それは、無意識のものだった。
「やはり、ミュリエル様が選ばれたわね」
「他にはいないもの」
そんな風に言われていたのも、ミュリエルの耳に入らなかった。婚約してからの日々も、これまでと何ら変わらなかったのも大きかった。
そして、月日は流れ、2歳年下の妹が学園に入学した。その前から、ミュリエルには気になる生徒がいた。何ら変わらない日々に突如、その令嬢は現れることになった。
ミュリエルは出会ったことがないタイプだった。それこそ、トレイシーとは違っていた。
でも、ミュリエル以上に周りから……。
「あの令嬢、またなのね」
「いい加減にしてほしいわ」
自分が何をしているかがまるでわかっていない令嬢が、そこにいた。彼女は、ミュリエルの婚約者である王太子の周りに何かと出没して、気軽に声をかけては、周りをヒヤヒヤさせてばかりいた。貴族令嬢らしからぬことをしていた。
王太子も、初めてのタイプだったようで、どうしたものかと思っている間にそれが定着してしまっていた。これは、王太子も悪いはずだ。
もっとも、その令嬢以上に酷いことをしているのもいたのだが、ミュリエルはそちらはいつものことのようになっていて、目につかなかった。
「比べるのも変だけど、もっと酷い方がいると普通のように見えなくもないのが、おかしいわよね」
「本当ね」
周りの令嬢たちが、そんな風に話すのも、これまたミュリエルは知らなかった。
王太子にまとわりつく令嬢を見ていたトレイシーが、自分の気づいたことをあれこれと姉に言うようになったのも、その頃からだった。学園に2年遅れで入学したトレイシーは、勉強を頑張るよりも、そんなことを頑張っていた。
この妹こそ、もっと酷い方と呼ばれているのだが、姉の方は少なくとも耳に入っていなかった。トレイシーの方は、どうだかわからない。入っていても気にはする令嬢ではないだろう。
珍しい色合いを持っていることにあれこれ言われていて僻みややっかみから、あれこれ言われていると思っていた。そう思うことで、人より何も頑張って来なかったことを帳消しにしようとしていた。
そんなことをしたところで帳消しになんてなりはしないのだが、都合よく何事も考えることが癖になっているトレイシーは言葉通りに捉えることはなかった。
でも、ミュリエルは公爵令嬢なのは妹も同じなのだから、どんなに遊び回っていても、それなりのこととまではいかずとも恥をかかない程度のことはできるようになっていると思っていたが、そんなことないことを知りもしなかった。
伯父が、あれだけ側にいるのだ。流石にそれすらさせずに好き勝手させているとは思いもしなかった方が大きかった。
それゆえにあれこれ気づいたことを妹は、婚約者となっているミュリエルに言って来ているのだと思った。そんなことはないのは、周りからは明らかなのを溺愛するあまり見えていなかったようだ。
そう、この妹はそんなことのために姉に告げていたのではないのだが、姉にはそうは思われないと思っているかのようにこう言っていた。
「あの方、知らないのだろうけど、お姉様の婚約者に近づきすぎているわ。誤解されたら可哀想よ」
とある令嬢のことをトレイシーは、よくミュリエルに言うようになった。確かにミュリエルは、気に留めていた令嬢だったから、誤解されたら可哀想だと思ってもいた。
やはり姉妹で着目点が似ているのだなと思って、ちょっと嬉しく思えてしまった。似ているところなんて、外見的にはなくとも、内面的にはおるのだと思ったら、それが姉妹の絆のように思えてしまった。
それに誰かを気にかけられるのだと思ったのも大きかった。トレイシーから、そんなことを言うのを聞けるとは思っていなかったのも大きかった。
すべては、ミュリエルの勘違いだったというのに。大袈裟にも感激してしまっていた。
「王太子はお優しいから、迷惑しているって言えないのよ」
そんなようなことを言うトレイシーにその通りだなとミュリエルは思っていた。
だからこそ、その令嬢にミュリエルは、率先して色々言うようになったのは、そんなことがあってからだった。
その令嬢や王太子が困らないように。誤解されないように。そんな風に思って、ミュリエルはその令嬢を見かけるたび、煩く言うようにした。
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