親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

文字の大きさ
3 / 16

しおりを挟む

まぁ、そんなこんなでディリッパの方は解決した。ただの女の敵ではなかった。

来るもの拒まず去るもの追わずだが、身内の女性にも優しいだけの子息だった。優しすぎるところがあって、女性を無下にできなかっただけのようだ。


「……わからないものね」
「本当よね」


ヴィリディアンも声に出さずに友達の言葉に頷いていた。

いつもいるもう1人の語学が堪能な令嬢は、ディリッパと従姉と楽しげに会話していた。

すっかり従姉が彼女を気に入り、実の姉のように何かと世話になった相手らしくディリッパは語学が堪能で従姉が気に入った令嬢を気に入ってしまったようだ。

クオーラとの婚約があんな形で破棄となってすぐに彼女と婚約したのだ。

それこそ、女ったらしの子息などあり得ないとディリッパのことを毛嫌いしていたはずが、今はそんなこと誰が言っていたとばかりにしている。

……うん。勘違いしていただけなのだから、そうなってもわからなくはないし、それをディリッパに言う気は、ヴィリディアンや他の友達もないが、目まぐるしい変化に呆然としていた。

ただ再従妹が、仲間に入れなくなって射殺しそうな目で友達を見ているのが、ヴィリディアンの視界に入らなければ、問題は全くない。


「再従妹の目力、凄いわね」
「あれに気づかないのも、凄いけど」
「いや、振り返らなきゃ意外とあの距離はわからないものよ」
「ここから見るから凄いってことね」


ヴィリディアンたちは、再従妹の見えないところにすればよかったかもと思い始めていた。


「ヴィリディアン!!」
「……」


そこにあれから、何の音沙汰もなかったクオーラが鬼の形相でやって来たのだ。

数日すぎたから、いつものように何か言ってくる気はないと思っていた。流石に今回のは、自分のやらかしのせいだと思ったものと思っていたが、どうやら違うようだ。


「よくも恥を欠かせたわね!」
「……」


この数日、何で現れなかったのかはわからないが、やっぱり来たのかと思うだけだった。

怒鳴り散らすクオーラに気づいて、ディリッパがこちらに来ようとしていたのをヴィリディアンは止めた。

友達が、それをすぐに理解してディリッパは心配そうにこちらを見ていた。従姉も、そうだ。


「あなたが、婚約者のことちゃんと教えてくれたら、こんなことにならなかったのよ!」
「クオーラ。婚約した話をどう聞いたの?」
「どうって、幼なじみと同じ時期に王子とディリッパ様と婚約したって聞いたけど。そんなことは、どうでもいいのよ!」
「……それを聞いて、どっちが、どっちって聞いたのよね?」
「は? 聞くわけないでしょ。私の方が王子と婚約したと思うでしょ」
「つまり、確認しなかったことで、王子と婚約したのは、自分だって思ったってことでしょ? それのどこが、私のせいになるの?」
「だから、そこはいいのよ! あなたが、私に言えばよかったのよ!」
「……」


何で、そうなる?!とヴィリディアン以外は思ったはずだ。

ヴィリディアンと一緒にいる友達も、ディリッパたちも、クオーラの怒鳴り散らす内容を聞いて、絶句していた。


「でも、この間、破棄になってよかったって言ってたわよね?」
「両親が頼み込んで婚約したから、破棄になって、どれだけ私が叱られたと思っているのよ! 我が家の恥さらしって言われたのは、あなたのせいよ!」
「……」


いや、だから、何で??だとヴィリディアンは、目をパチクリさせた。これは、今まで以上に難解だ。言ってることが、変だ。


「わかるわ!」
「っ、」


そこにディリッパの再従妹がまじって、ヴィリディアンをボロクソに言った。

めちゃくちゃ流暢にこの国の言葉を話すのにディリッパと従姉は、ポカーンとしていた。

ヴィリディアンは、自分を罵倒する言葉がクオーラより多いことに驚いてしまった。これでよく、話せないと頼っていたなと思ってしまった。


「あなたとは、いいお友達になれそうだわ!」
「私も、そう思っていたわ!」
「……」


とんでもない友達ができたなとヴィリディアンは、白けた目で2人を見ていた。

ディリッパが、流石に再従妹のやっていることに腹が立ってこちらに来ようとしていたが、ヴィリディアンは……。


「ねぇ、クオーラ。私の家がどこか知ってる?」
「は? 子爵家でしょ?」
「……いいえ。今は、違うわ。ハーサン公爵家の養子になったの」
「え? こ、公爵?」
「あなたの家は?」
「は、伯爵」
「で、そちらは?」
「あ、その、私は……」
「男爵令嬢だ」
「お兄様!」
「二度とそう呼ぶなと言ったはずだ!」
「っ、」


ヴィリディアンは、にっこりと笑った。


「どちらのことも、一語一句違えることなく、養父母に伝えておくから」
「「っ、」」


クオーラたちは顔色悪く、言い逃れようとしたが、ヴィリディアンが許すことはなかった。


「ごめんなさい。やることができたから、先に帰るわ」
「えぇ、またね」
「私たちのことは気にしないで」
「ヴィリディアン嬢」
「あなたは、一切関係ありません。彼女と私の問題です」
「……そう、だな」


ディリッパの顔色は悪かった。ヴィリディアンが物凄く怒っているのが伝わったのだろう。


「ひ、卑怯よ!」
「……」
「あなたが養子になったなんて、聞いてないのに

「だから?」
「え?」
「聞いていようと聞いていなかろうとも、あなたは、自分がしたことを全部私のせいにしようとした。幼なじみで、自分より爵位が下っただけで、そうしようとした。どちらも、私が気に入らないから、そうしたってことでしょ? 2人とも、最低ね」
「「っ、」」


クオーラは言い返したそうにしたが、ハーサン公爵家と聞いて悔しそうにしていたし、再従妹は顔色悪くしてディリッパを見ていたが、ディリッパは無視していた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結済】監視される悪役令嬢、自滅するヒロイン

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 タイトル通り

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

処理中です...