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「どうした?」
「それが……」
マルジョリーは混乱している母をよそに帰宅して来たばかりで、珍しく親子喧嘩をしているように見えた父に説明をした。
聞かれなければマルジョリーは、誰にも言わずにいた。でも、流石にここまであちらの母親から言われているなら、はっきりさせるしかないだろうと簡潔に淡々と答えた。そこにマルジョリーの日頃の恨みつらみが入らないように何の感情もなく、わかりやすく伝えることだけに集中した。
「つまり、マルジョリーは婚約者からは未だに何も買ってもらってはいない上、毎週のように出かけていると言われていると?」
「えぇ、あの方、他の令嬢に貢いでいるのでしょう」
「「は?」」
「ずいぶんとたくさんの方に心を許して親切にしているようですよ」
「マルジョリー。婚約者が、浮気しているのを知っていて放置しているのか?」
「マリユス様に最初に好き勝手にするから、私にも好き勝手にすればいいとおっしゃっていましたから、そうしています」
そこから、父親は調べあげてたらしく、それをあちらの家にマルジョリーのせいにして色々言うのはお門違いだと言ってくれたようだ。
あちらの家の爵位が上だから、強く言えなかったようだ。それで、少しは大人しくしてくれるかと思っていたが、そんなことはなかったようだ。
「マルジョリー!」
「はい?」
ある日、マリユスに名前を呼ばれた。それは珍しいことだった。いや、婚約してから初めてだったはずだ。
「お前、なんてことをしてくれたんだ!」
「……いきなり何ですか?」
怒鳴られることをマルジョリーはした覚えはない。逆に怒鳴りつけてやりたいことは両手では足りないほどあるが。
「お前が余計なことを言うから、父親たちにどれだけ怒られたと思うんだ!」
「私は、何も言ってはおりませんけど?」
「お前しかいないだろ!」
そこから、父がマリユスの家に物申したらしいことがわかった。
「あぁ、それは、あなたのお母様が私が物を強請りすぎると私の母に文句を言って毎週連れ回すかのように言われたらしいので、訂正しただけです」
「っ、」
笑顔で言いきってやったのがお気に召さなかったようだ。
そこから、マルジョリーがいかに使えない令嬢なのかを熱弁したらしく、それに腹を立てたのが父だった。そもそも勘違いして婚約する息子を間違えたのは、向こうだ。
それなのになぜ、娘がここまで我慢させられなければならないのかと言ってやりたかったようだが、あちらの方が爵位が上すぎて言いたいことをあまりはっきり言えなかったようだ。
それでも、何とか婚約は破棄することになって、マルジョリーはホッとしていた。両親は破棄ではなくて、解消にしたかったようだが、マリユスが……。
「マルジョリーは、私との婚約解消に同意してはくれないほど、私にぞっこんなんだ。ここは、すっぱりと断ち切りたいから、破棄することにしてください」
なんてことを余計にも言ってくれたことで、マルジョリーは婚約を破棄することになり、同時に傷物になったというわけだ。
そんなことがあったため、マルジョリーの両親は娘のことを物凄く心配してくれて、幼なじみとの留学でいい気分転換になると思ったようだ。
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