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しおりを挟むシータが、留学に行ってしまってからのジャイニは、日がな1日ぼーっとしていた。
それは家でも、学園でも、腑抜けた顔をしていた。
「あんな間抜けな顔を初めて見るわ」
「本当ね」
「でも、シータ様が、あの国に留学することになるなんて驚いたわ」
「あら、私は頭がいいのには前々から気づいていたわ。なぜ、スキップせずにいるのかと思っていたくらいよ」
「確かに成績が良かったものね」
前まで、シータのことを呼び捨てにしていた令嬢たちは、様付けで呼ぶようになっていた。頭の良さも知っていたかのように話していた。
あっさりと掌返しをして、シータが凄い令嬢だったことを認めるようなことを色んなところで当たり前のように話した。
そんなことになってから、王太子のビジェイが久々にジャイニのところに現れた。
それまで、毎日のように顔をあわせていたのにシータが留学してから初めてだった。
「ジャイニ。君と婚約のことだが……」
「そのことなら」
「あれだけ、君が嫌がっていたから、やめることにした」
「え?」
ジャイニはシータが留学してから、やることもなくなってしまい、それまで色々と言われていたのとは真逆なこととなり、ヒソヒソと遠巻きに今まで聞いたのとは別の方向のことを色々言われるようになっていた。
そんな時にビジェイがやって来たので、ジャイニはもうシータもいないからと婚約を受けようとした。やることが何もなくなって暇を持て余していたのと周りに嫌味なこと言われるのを回避するのに利用した。
散々、酷い断り方をしていたというのに都合よく未だに変わりなく好かれていると思っていたジャイニは受けようとしたのだ。だが、王太子の方からやめたと言ったことに驚いていた。
それどころか。シータに酷いことを言ってしまったから謝罪したいとビジェイは言い出したのだ。ついでにあの国に留学するくらいの才女こそ、王太子である自分の婚約者に相応しいとまで言い出して、それにジャイニは眉を顰めずに入られなかった。
「まぁ、そういうことだ」
用は済んだとばかりにビジェイはいなくなったのをジャイニは呆然と見ていた。
極めつけは、シータがいなくなってから、ジャイニがよく転ぶようになったのだ。
「っ、」
「何、あれ」
「妹さんの真似かしら」
「信じられないわ。こんな風になってから、真似るなんて神経を疑うわ」
それまで、ジャイニのことを妹思いの姉と見ていた面々が、実は違っていたとようやく思うようになった。
ましてや、妹の真似をして興味を引こうとしていると思われるようになったが、ジャイニはそんなつもりはなかった。
「何なのよ」
何かが足元を掠めて転んでいるのだが、きょろきょろしても何も見えはしなかった。
「そういえば、シータも、よくきょろきょろしていたわね」
そんなことを思い出していたジャイニのことを誰も大丈夫かと声をかけてくれることはなかった。そんな中で、擦り傷、青痣だらけになるのにジャイニは部屋で手当てを自分でする日々を過ごすことになった。
そこで、自分が口先だけで何の役にも立っていなかったことを思い知ることになったが、後の祭りでしかなかった。
それでも、シータが戻って来たら変わると思っていた。それまでの辛抱だと思っていたが、それで終わるものではなかった。
長年、それでシータを苦しめ続けていたことも、ジャイニは気づかないでいた。
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