姉の歪んだ愛情に縛らていた妹は生傷絶えない日々を送っていましたが、それを断ち切ってくれる人に巡り会えて見える景色が様変わりしました

珠宮さくら

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ジャイニが、シータと同じくよく転ぶようになっていた。日に何度も転ぶせいで、手や膝など、擦り傷と切り傷、打撲などが身体中にあって大変だった。

きっとシータも、こんな風に痛々しい身体をしていたはずだが、ジャイニは手当てをしたことがなかったから知らなかった。

自分が怪我をするようになって、身体のあっちこっちが痛くて仕方がなかった。そんな身体でよく勉強できたものだ。そんなことにジャイニは感心していた。


「また、転んでいたのか」
「……」
「恥ずかしいから転ぶな」
「っ、」


転んでも、いつものことのようにして心配など、ビジェイがすることはなかった。

ジャイニと婚約したビジェイは、ずっとこんな感じだった。シータが戻って来たら婚約しようとしていたのにそれが叶わないとわかり、他の令嬢を慌てて探したが、他の令嬢と婚約できずに仕方がなくジャイニと婚約をした。

婚約したいと大騒ぎしていた時とは、全然違っていた。仕方がなく婚約をした時から、以前のシータの真似を続けているように見えるジャイニに冷めきった表情を向けるばかりだった。

それだけでなく、周りの面々も以前のシータの時のように馬鹿にして色々言っていた。


「あんな方だったなんて思わなかったわ」
「本当にそうね」
「それに比べて、留学先で見初められたシータ様はあちらで素晴らしい成績をおさめているようよ」
「流石ね」
「学園で、王太子がシータ様に一目惚れしたそうよ」
「まぁ! 素敵ね」
「あちらの王太子は、見た目も中身も素敵らしいから、羨ましいわ」


それまで、シータに散々なことをしていたことすら綺麗さっぱりと忘れていた。何なら、自国の王太子であるビジェイのことを貶していたが、それは王太子に聞こえないようにはしていた。

こちらに戻って来たら、シータとは仲良くできると思っていた。そんな令嬢ばかりだった。

それは、両親も同じだった。


「娘2人が、王太子の婚約者になるなんて思わなかったわ!」
「そうだな。だが、シータのあの頭の良さなら、当たり前だがな」
「そうね。あんなに頭がいいなんて思わなかったわ」
「……」


ジャイニは浮かれまくっている両親の言葉に無表情となっていた。

シータが留学して、あちらで婚約したことを知ってから、益々疲れ切っていた。それまで、シータが受けていた仕打ちを一身に受けることになったジャイニは顔色も悪く、シータの隣にいた頃とはすっかり別人のようになっていた。


「ジャイニ。あれだけ、断り続けてやっと婚約したんだ。王太子を怒らせるようなことをするなよ」
「っ、」


それまでとはまるで違っていた。両親の期待は、シータに傾いたまま、ジャイニの方がオマケのようになっていた。

それを言われるたび、ジャイニは部屋に戻ると……。


「っ、何よ! シータなんて、私が側にいないと駄目なのに。転びまくって、愛想を尽かされて戻って来ればいいのよ!!」


そんなことを言葉にするようになった。

その言葉通りになったのは、シータではなくて、ジャイニだった。

転びまくって、王太子に愛想を尽かされることになった。


「お前といたら、私まで恥をかく。婚約は破棄することにする」
「っ、」
「全く、もっと早くわかっていたら、シータと婚約していたのは、私だったのに」


ビジェイは、そんなことを最後の最後までジャイニに愚痴っていた。

でも、これまで暇人のように好き勝手なことをして執務も側近たちにやらせてばかりいた王太子と婚約したがる令嬢が中々現れることはなかったことにジャイニは、ざまぁみろと思う余裕もなかった。

ジャイニの身体は、酷い青痣だらけになって、手足の擦り傷、切り傷も治りきる前に新しいのができて、貴族の令嬢とは思えないほど、酷いことになったことと婚約破棄となったジャイニを家の恥と言って、勘当されることになるまで、そんなに時間はかからなかった。

そうなったジャイニは、それを機にシータのとろこに行こうとしたが、彼女が妹に会うことは叶わなかった。

アトゥルが、それを許すことはなかったのだが、姉妹の2人とも、それに気づくことはなかった。


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