存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした

珠宮さくら

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(カルロ視点)


俺には、戦うことしかなかった。座学は、からっきしだが戦術とかだとすんなり入ってくるのは、昔からだ。

それこそ、計算式とか、何に必要になるんだと思っていた。騎士になりたいだけなのだ。武術以外は必要ないとずっと思って生きてきた。


「とんでもない戦闘狂だな」
「バケモンみたいだ」
「……」


騎士になれたが、礼儀なんて必要ないと思っていたが、団長に恥をかかせるなと言われて、ハッとした。

憧れていた騎士団長のところに所属した俺は、それを聞いてから必要ないと思ったことも無駄にならないと頑張るようになった。

そんな時に新人が乗り越えられずに辞めていくと言われる訓練に参加することになった。

だが、俺には逃げ出したくなるような辛いものはなかった。楽しくて仕方がなかった。


「やっぱ、あいつ、バケモンだな」
「すげぇ、生き生きしてんな」


なんてことを周りに言われていたのも何のそので楽しくて仕方がなかった。


「団長。やってられないっすよ」
「あ? 私の騎士団にそんなこと言う奴がいるとはな。表に出ろ。根性叩き直してやる」
「いや、飯が不味すぎてやる気が出ないんすよ」
「あー、今年の新人どもは、味覚が可笑しいのばっかみてぇだな」


当番制とはいえ、新人が料理をするのだが、その辺が壊滅的なのしかいないのだ。

だからといって、訓練で甘い顔をして代わるなんてことをすれば、実践でも甘える奴も出て来る。

そこで、模擬戦の勝者に団長の娘の手料理が食えるとなって、味を知っている面々は盛り上がっていた。

正直、俺は食えればどうでもいい人間だ。だから、お袋には作り甲斐がないと専ら言われて来た。

それが、副団長までも本気で勝ちに来るほどらしいので、存分に戦えて負けてしまった。

そんな時に食べていいと言われたそれは、めちゃくちゃ美味かった。

それだけではない。服を繕うのも上手くて、弟や従妹、両親までもルクレツィアのことを気に入った。


「姉ちゃん!」
「ねぇね」


従妹は、両親を早くに亡くしてこの家に来てから、両親にもあまり甘えようとしなかったが、ルクレツィアにはすぐに懐いた。

ルクレツィアのところの双子の弟妹も、母親の代わりのようなことをルクレツィアがしているから、滲み出る母性があるのだろう。

子供に囲まれているルクレツィアを見ると家庭を持つのが楽しみにすらなったのだから、不思議だ。


「カルロ様」
「っ、」


ただ、そんな風に名前を呼ばれて微笑まれただけで、幸せを実感できた。

それこそ、恋愛なんてして弱くなるなんてことはなかった。ルクレツィアのためにもっと強くなりたいと思うようになり、騎士団の食堂の料理を食べるたび、ルクレツィアの料理が恋しいと思うようになるのも、婚約してから思わない日がなくなるほどだった。


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