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しおりを挟むヴィクトワールは頭にきたまま、サヴィニー伯爵家に戻った。
「絶対にこのままでは許さないわ。お父様たちが、どうにかしてくれるはずよ」
リュシエンヌが、みんなに祝福されるのを思い返して不愉快そうにしていた。
「ちょっと! もっとスピード出せないの!?」
そんな文句を御者に言っておきながら、数分後には……。
「っ、痛! ちょっと! どんな運転しているのよ! 頭をぶつけたじゃない。ちゃんとしてよ!」
スピードを出せと怒り、出したら怒り、またゆっくりに戻せば、遅いと怒鳴った。
御者が、それにブツブツとヴィクトワールに聞こえない声で文句を言っているのは、いつものことだった。
機嫌が悪い時は、いつもこうだ。やってられない。さっさとサヴィニー伯爵家に着くことだけに集中した。
「お父様!」
「ん? ヴィクトワールをどうした?」
サヴィニー伯爵家では、そわそわとリュシエンヌの帰りを両親は待っていた。
だが、待ち侘びた娘ではなくて、厄介ごとしか持って来ないヴィクトワールが怒り心頭で帰って来たのに夫妻は顔を見合わせた。これは、面倒くさいことになりそうだ。
「酷いんですよ! 私が、婚約破棄されたのにリュシエンヌったら、婚約者からのプロポーズを受けたんです!」
「……は?」
「何が、酷いの?」
「だから、私、婚約破棄になったんですよ!」
「それは……」
「とっくに愛想尽かされていたから、今更でしょ」
母にそんなこと言われるとは思っていなかったヴィクトワールは、眉を顰めた。
「なっ、あんまりよ! お父様!」
「あー、お前の破棄とリュシエンヌのことは、別物だ。破棄の理由を聞いたのか?」
「っ、それは……」
「今みたいに妹のせいにあれこれしてきたからと言われたのではないの?」
「っ、」
両親は、ヴィクトワールが破棄されるのは時間の問題だとわかっていた。でも、流石にこの日に被せてくるとは思いもしなかった。
だが、この調子なら、ヴィクトワールが何かしたに違いないとサヴィニー伯爵夫妻は思っていた。
そこにリュシエンヌが、婚約者とリシャールを連れて帰って来た。
リシャールが、何があったかを話して、リュシエンヌたちのプロポーズをぶち壊したことを詫びた。
それによって、ヴィクトワールとの婚約破棄はあっさりと認められた。リシャールの両親も、タイミングの悪さをリュシエンヌたちに謝罪してくれて、祝福してくれた。
リュシエンヌとテオドールは、とんでもないハプニングに見舞われたが、色んな人に祝福されて、リュシエンヌは嬉しそうにしていた。
顔色の悪さもなくなり、食欲が前のように戻っていた。
ただ、1人納得しなかったのは、ヴィクトワールだ。トントン拍子で、婚約破棄となったことに物申しても、誰も聞き入れてくれなかったのだ。
そのせいで、ヴィクトワールは部屋に引きこもっていた。
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