私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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母親は、バレリアに落ち着きなさいと言いたそうにしていたが、さっきの言葉だけで過剰反応されたこともあり、その言葉をわざわざ口にすることはなかった。

父親も、注意したいところだが、面倒くさいだけだと見なかったことにしたようだ。

そんな時にルシアは、周りをきょろきょろしてから、やはり気になって仕方がないことを母に尋ねることにした。


「おきゃくさま?」
「そうよ。お出迎えしましょうね」


ルシアの問いかけに母は、にっこりと笑ってくれた。姉に対して、そんな風に笑うところをルシアは見た記憶がない。


(そういえば、おかあさま。おねえさまには、わらわないな。どうしてかな?)


だが、ルシアの言葉に笑顔で答えていた母親の声を聞いて、ようやくバレリアはルシアを思い出したかのようにこう言ったのだ。

ルシアの方を見もせずにバレリアは、苛立っているのを隠そうともしていなかった。


「ルシア。大人しくしててよ」
「ん! いいこ!」
「その馬鹿みたいな話し方も、どうにかならないの?」
「???」
「本当に何なのよ。見てるだけで苛つかせるんだから」
「そんなこと言うことないだろ」
「そうよ。ルシアは、まだ7歳なのよ」


7歳の妹の話し方が、気に入らないバレリアにその後も色々言っていたが、それに両親の方がそんなことを言うなと非難したが、気に入らなさそうにするばかりだった。

それこそ、両親はバレリアにその頃の自分を思い返してみろと言ってやりたかったようだが、それも今日はせずに両親は顔を見合わせて肩を竦めただけだった。

どうにも、バレリアは妹が気に入らないのは明らかだったが、ルシアはそのことに全く気づいていなかった。


(わたしのおはなし……? わたし、いいこじゃないの??)


バレリアが色々と言っているが、両親やルシアの世話をよく任されているメイドのソフィアは、ルシアによく気にしなくともいいと言ってくれていたが、ルシアは何かと姉に何を言われていても、姉がどうしてそんなことを言うのかが全くわからないままだった。

7歳になっても、ルシアはたどたどしい話し方しかできなかったのも関係していたのかも知れない。

だが、彼女の兄の少し上の兄も、幼い頃はルシアのような話し方をしていたらしく、それについては両親や使用人も彼を世話したことのある者は気にすることはなかった。

気にするというか。それで、バレリアはルシアばかりに苛ついてばかりいたが、弟の時は何も言わなかった。

更に自分がルシアと同じくらいの時は、もっと酷かったことを彼女自身が全く覚えてはいないようだ。わがまま放題で、周りがバレリアが何を言いたいのかがわからないのが伝え方が下手だと思っておらず、喚き散らして、泣き続け、駄々を延々とこね続けて、自分がしてほしいことをしてもらうまで、それはもう大変だったのだ。

それに比べたら、息子も、末っ子も、とてもいい子でしかなかったが、バレリアはそんな過去のことなどノーカンのように無視して、ルシアだけが苛つかせる存在のトップに入っているかのようにしていた。

そんなことがこれまで侯爵家にあったことなど知る由もないルシアは、姉に会うたびに色々と言われ、周りはそれを気にしなくていいと言うことに別のことを思うようになっていた。

ただ、自分がいい子ではないことが気がかりになり始めていたのだ。今日は、いい子にすると約束したことがルシアの中で、大きくなり始めていたのだ。

それこそ、なぜ、その思いが急に大きくなり始めているのかもルシアは全くわかっていなかったが、周りもそんなルシアの変化に気づいてもいなかった。

みんなバレリアの一喜一憂に気を取られ過ぎていたことも大きかったようだ。


「全く、バレリアには困ったものだな」
「それでも婚約したんですから、ここから変わってくれるとよいのですけど」
「変わればいいが……」
「まぁ、婚約者を見つけたのですから、あとはあの子の問題ですわ」
「……そうだな」


そんなことを両親が話していたが、ルシアは全く聞いていなかった。いや、聞いていたところで理解はできなかっただろう。そんなことは、いつものことだった。歳が離れすぎているせいと性格の違いから、この家の中では姉妹のどちらかに感情移入しやすいかと言えば、可愛い盛りのルシアの方をみんなが可愛がっていた。

バレリアは、ルシアを目の敵のようにしてばかりいて、全くお姉さんらしいことをしたこともないのだ。それどころか。邪険に扱い、言い返せないことをいいことに好き勝手なことばかりを一方的に言うのだから、その差が開いていく一方となっても、縮まることはなさそうだった。


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