私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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ルシアが目が覚めた時には、一目惚れしたと思った王子様は目の錯覚だったのだと痛覚することになった。

それこそ、一瞬でも王子様だと思って見えてしまった過去の自分に言ってやりたい。


(視力検査をした方がいいかも知れないわね。光の加減にしても、あれはないわよ。どこを見てたんだろ。前世の私なら目が悪かったから、ありえそうだけど、今はいい方なのに。光の演出って、こういう時に残念な者すら素敵に魅せる効果があるようね。その演出にまんまと数秒でも騙された自分が嫌だわ)


全く素敵ではなかったのだ。それどころか、普通の子息の方が、何倍もまともに見える。

そこに立っているだけで、まともに見えない子息も、世の中にはいるようだ。そこに変な感心をルシアはしかけていた。

それほど、今見るとどこをどう見て王子様だと思って一目惚れしたのかと頭を抱えたくなってしまうほどの子息なのだ。

確かに日の光できらきらとしていたから、そこを間違えたのかも知れない。だが、マジマジと見た彼は格好よいところなんて欠片もなかった。

しかも、どうして、そんなのと姉は婚約したのだろうかと思ってすらいた。他に選べなかったのかと思うほどだった。

まさか、その他がもう既にいない状態なのだとまでは、この時のルシアは知りもしなかったのだ。


(……何で、あれを王子様だと思ったのかな。不思議なものだわ。7歳からしたら、きらきらとしているのが王子様像だったのかも知らないけど、あれはないわよ。……お姉様って、あぁいうのが好みなのね。まぁ、普段から着ていた服を思い返すと趣味が残念なのはわかっていたけど、異性の好みも残念だとは思わなかったわ)


しかも、将来的にこのまま結婚をすれば、彼の義妹になるのだ。ルシアが血だらけになってぐったりと倒れていても、医者でもないからと帰ろうとしていたと言うではないか。

それを引き止め、来たばかりだとごねた姉のバレリアは自分もここにいてもやることないからと言い、バレリアがメイドに用事を言いつけたせいだと母が怒鳴れば、婚約者のバルトロメは同じような思考で仮病だと思ったのだからと擁護したらしく、それに呆れ果てて二人に出て行けと行ったら、本当に遊びに行ってしまったというのだ。

しかも、二人はデートを満喫して、バレリアは浮かれまくって帰宅して、ルシアの心配など口にすることもなく、疲れたからとさっさと休んだらしい。

肝が座っているというか。自己中すぎて、どこから口出しすればいいのかが、ルシアは全くわからなかった。


(凄いわ。そんなところで、婚約者と意気投合するなんて……。似た者同士だと最強ね。両親は、あんなにいい人たちだというのに。お姉様は、誰に似たんだか。あぁはなりたくないものだわ)


そこから、両親は姉とその婚約者のことで、イライラしっぱなしとなっているようだ。使用人たちも、ルシアが血だらけでぐったりしているのに全く心配する素振りも見せなかった二人にありえないと怒っているようだが、そんな二人に話が通じたことはないようだ。

ルシアは、そんな姉とその婚約者のやることなすことに怒る気にはならなかった。ただ、呆れるばかりだった。

それこそ、ルシアが考えていることを全部口に出せば、怒っている人たちも大笑いして、その通りだと思ってくれて、こんな風に苛つくのを見ることもなくなりそうだが、今は7歳児なのだ。下手なことを言って、頭の心配をされても困るから言葉遣いには気をつけていた。


(前は、あんなにたどたどしく話していたんだもの。そこは、気をつけないと)


ルシアは、自分が前世のことをばっちり思い出したことを誰にも言うつもりはなかった。それこそ、信じてもらえるかではなくて、前世でやり残したことをやり遂げたいがために思い出しただけであって、やり遂げたら消えるかもと思っているところがあったからだ。


(それにしても、いい子にするって、具体的にどうすればいいのかしらね)


ルシアは、そんなことを思っていた。


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