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しおりを挟む「は? 婚約破棄したいだと?」
花嫁修業をしに向こうの家に行く時にもう実家になんて戻らないかのように散々なことを言って出て行ったはずだが、バレリアはそんなことなかったように戻って来て、そんなことを言ったのに集まった家族みんなが眉を顰めていた。
父は、婚約破棄と聞いてそんなことを言ったが、姉以外の心の中では同じことを思っていたことだろう。
(まぁ、こんなに早く何食わぬ顔どころか。被害者面して戻って来るとは思わないわよね。実家に戻る日はしばらく来ないみたいに言っていたはずなのに。自分で何を言ったかを全く覚えてないところが、そもそも酷いにも、ほどがあるけど)
ルシアは、姉が戻って来たと聞いて両親と兄が話を聞くとなり、どうするかと聞かれて、一緒に聞くと連れて来てもらって、ソファにクッションを置いてもらって座っていた。
(聞いて絶対、楽しくもないのは目に見えているけど、あとから聞くよりいいわよね。お姉様のことだもの。私が聞いてないのをいいことにあることないこと言いそうだし)
そんなことを思っていた。だが、聞いていたところで、あることないことを言われることになることもあるのだ。どっちにしろ。損でしかないことにルシアは気づいていなかった。
姉は、父の言葉に泣き真似をしながら、話し始めた。ハンカチは握りしめているが、どう見ても泣いてはいない。
(あれで、泣いているように見せられていると思っているなら、本当に残念な人よね)
見た目が7歳のルシアが、そんなことを思っていることなど、誰も気づいてはいなかっただろう。もしかするとこの中で一番辛辣なのは、ルシアかも知れない。
だが、そんな辛辣な心など言葉にする気は毛頭なかった。
「そうなの。酷いのよ。忙しいと言いながら、浮気をしてるんだもの」
「……そんなの前々からだろ」
「え?」
バレリアの家族は、破棄したいと言い出したことに呆れた顔をしていたが、婚約破棄の理由が浮気と聞いて、アドルフィトは呆れた顔をしてそんなことを呟いていた。
それに姉が驚いた顔をしていた。両親は息子の言葉に驚いてはいないのを見ると知っていたのだろう。
ルシアは知らなかったが、この姉と付き合い続けるのにうんざりして、他に癒しを求めてもわかるような、わからないような気がして遠い目をしていた。
「姉さんと婚約する前から節操なしなんだから。今更だろ。そんなのと婚約したのなんて、みんな知ってることだ。騒ぎ立てることないだろ」
「は? え? 婚約する前から……?」
「まさか、知らなかったのか?」
「……」
弟は、信じられないとばかりの顔を姉にしていた。
ルシアも、婚約前から節操なしだと聞いて、考えを改めたのは、すくだった。
(うちより格上の跡継ぎなのに婚約者がいなかったわけよね。そんなんだから、婚約できてなかったってだけじゃない。まぁ、婚約できなかったのも、お姉様も一緒だし、卒業も近いから婚約させたのだと思っていたけど……)
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