私だけの王子様を待ち望んでいるのですが、問題だらけで困っています

珠宮さくら

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セレスティノは、自分の兄の酷さを知っているだけでなくて、これまでに散々な目にあってきているようだ。

人よりも優秀なこともあり、普通よりも劣る兄よりも婚約者が先にできた弟が気に入らなかったようだ。こんな逸材を逃すわけにはいかないと婚約することにあっという間になってしまい、幼い彼はかなり大変な目にあったようだ。

それまでにも、色々とあったようだが、その時が一番酷かったようで、弟ばかりを褒める両親にもムカついていたようだ。

それこそ、そんなことに腹が立って仕方がないのなら、努力でもすれば良かったのだが、セレスティノの兄もルシアの姉のように別の努力を頑張ってしまうタイプだったようだ。そんな頑張り方をされる方が迷惑でしかないが。

散々なことをしてくれたことで、セレスティノは婚約を解消することになったと話してくれたのを聞くことになり、ルシアは……。
 

(まぁ、一回り近く歳の離れた妹に苛立ちをぶつけるのと少し歳の離れた弟の婚約者に意地悪いことをするのとだとどっちがマシってこともなさそうだけど。でも、問題は身内同士のいざこざに自分の婚約者を巻き込んでしまったことよね。意地悪いことされてた令嬢が、どう思って、どうしてるのかが気になるところだけど……)


ルシアは、そちらがどうしているのかとそんなことが気になってしまっていた。今は、ルシアは兄の婚約者に自分も迷惑していて、周りにも迷惑をかけているのだ。


「……それは、大変でしたね。それで、元婚約者は、どうしているんですか?」


立ち直れてなかったら、いたたまれない。ルシアは、姉の時も、兄の時も、相手がいい人とはかけ離れていて、同情の余地もないタイプばかりなため、とてもいい人だったらどうなっているかと思ってしまっていた。

だが、ルシアが思っているようなことにはなっていなかったようだ。


「彼女は、今は隣国の子息と婚約してます。そもそも、彼女は年上が好みだったようです。それに自分より可愛らしい子息と婚約してしまって、そのことにも随分と悩んでいたようです」
「……」


(ん? これは、どう反応するのがいいのかしら?)


どうやら、解消になって元婚約者は良かったようだ。でも、弟を妬んで意地悪いことを散々なまでにして、解消させるようなことをしたのだ。そんな兄がいては、弟がどんなに優秀でも後々になって困るのは間違いない。


(元婚約者は、それを口実にして解消できたことを喜んでいるのだとしたら、複雑なものしかないでしょうね。あちらは、好みでなかったようだけど、彼も同じだったかは別問題だもの。少しでも好きだったなら、解消になって喜ばれて、むしろ感謝されてしまったら、立ち直れないわよね)


そんなことを思ってしまったが、そこまでは聞くことはなかった。セレスティノの気持ちを本人から聞くなんて、ルシアにはできなかったのは、彼が物凄く複雑そうに遠い目をして話してくれていたからかも知れない。


「それに兄は、マルティーナが昔から好きなんです。マルティーナも、それを知っているんですけど、あなたのお兄さんの家の方が嫁ぎ先にはいいと思っているようなんですよね」
「……つまり、このまま結婚しても、ズルズルと関係を続けると思っているんですか?」
「あの二人なら続けると思います。そのためにあなたのお兄さんを自分たちの味方にして、他がおかしいと状況にしてしまってるんですよ」
「……」
「あの二人が揃うとたまに他の誰に何を言われても二人の言うことの方が正しいみたいになるんですよね」
「兄みたいになった方が他にもいたんですか?」
「えぇ。でも、周りに言われるうちにおかしいことに気づいて離れたことで、今ではどうして二人の方が正しいと思っていたかと不思議がってます」
「……」


(まるで、洗脳か。催眠術みたいね。お兄様の場合は、婚約者に言われているからってところが大きく作用してそうね。……きっと、そういう血が濃いのね。お姉様に続いて、お兄様もあぁなんだもの。私も気をつけないと駄目ってことよね)


ルシアは、そんなことを思いつつ、それを上手いこと利用するようなのが侯爵家の次期当主の嫁になるのかと思って何とも言えない顔をした。


(それをお兄様に伝えたところで、信じてはもらえなさそうね。すんなりと信じてくれるのは、その3人以外でしょうけど。今の状態じゃ、引き離そうにも口実がないのよね。下手なことをしたら酷くなることだけは、よくわかったけど)


ルシアは、さてどうしたものかと思い、セレスティノを見た。


「セレスティノ様は、お兄様がお好きですか?」
「好きそうに見えますか?」
「……そうですね。良い弟には見えますよ」


良い弟と聞いて、セレスティノは何とも言えない顔をしていた。それだけで、好きではないことは明らかだった。


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