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しおりを挟む(お兄様が何を言っても取り合ってくれないのはわかったわ。それに向こうの考え方もわかった。二人っきりになるたびに誰かしらの悪口を好き勝手に言っていることも把握しているのだから、そろそろ仕返ししてもいいわよね)
ルシアは姉の時のように兄の卒業を目前にして婚約破棄なんてことにはしたくはないが、このままズルズルとそのままにしておいたら、侯爵家が大変なことになる。
ルシアは、兄がそのままにし続けることを利用することにした。
(二人が兄を利用して、信じ込ませ続けているのなら、そうさせる別の理由を本当にしてしまえばいいのよ。……なんか、いい子とほど遠いことばかりに知恵を使ってる気がするわ。でも、仕方がない)
ルシアは、にっこりと笑顔になって、セレスティノにこんなことをするのは、どうかと持ちかけた。
それを聞くなり、セレスティノは少し驚いた顔をしたが、ルシアと同じように笑顔になって賛同してくれたのは、すぐだった。
「いいですね。今のところは、兄が幼なじみを好きなのは本当ですから使えると思いますよ」
「今のところは……?」
「それが、兄のところに婚約の話がきそうなんです」
「きたら、そちらに気持ちがいくと思ってるんですか?」
「そういう人ですから」
「……」
どうやら、セレスティノはそんな話が兄のところにきそうなのをどうにかしたかったようだ。
そこでルシアが提案したことで、兄に仕返しできると思って笑顔になったようだ。
(何だか、私たち似てるわね)
そんなことを思いつつ、二人はそこからどうするかを話し合って動くことにした。
優秀な人が揃って仕返しをするととんでもないことになることを身をもって知ることになった相手に同情することはなかった。
そんなことをルシアたちが仕掛けて動いているとは知らずにマルティーナたちは、いつもと変わらずに好き勝手にし続けることをやめることはなかった。
そんな彼女たちの周りが少しずつ変化していて、学園でやたらと令嬢たちが、ひそひそと話すようになったのだ。
「え? そうなの?」
「そうらしいわ」
何やら初めて聞いたとばかりに驚いて、同情する令嬢が増え出したのだ。
「……そうなのね。それなら、あのままにしていることもわかるわ」
「切ない話よね」
「本当ね。……私、ずっと誤解していたわ」
「私もよ」
それだけではなかった。マルティーナにやたらと散々なまでに無視したり嫌味を言っていた令嬢たちが、わざわざ彼女に話しかけるようになったのだ。
そして、彼女とやたらと一緒にいる婚約者でもないただの幼なじみのクラウディオの方にも、何かと声をかける者が日に日に増え始めたのだ。
「あなたたちも、大変ね」
「何の話?」
「とぼけなくてもいいのよ」
「そうよ。私たち、あなたの味方よ」
「そうね。みんな、あなたの味方だわ」
「?」
マルティーナは、訳がわからない顔をしていた。それまでと真逆にみんなから、味方だと言われるようになったのだ。
そんなことを言われても、マルティーナには何のことやらわからずにいた。
「お前も、大変だよな」
「?」
「とぼけなくともいいさ。みんな、知ってる。まぁ、好みはそれぞれあるからな」
「何の話だ?」
「まぁ、なんだ。そこまでして、二人っきりになりたがるんだ。そのうち、アドルフィトもわかってくれるさ」
「は?」
クラウディオも、子息たちにそんなことを言われるようになり、訳がわからない顔をしていた。
その上、アドルフィトもわかってくれるとまで言われても意味がわからないままだった。
二人とも、意味が全くわかっていなかったが、そんなマルティーナとクラウディオに話しかける面々はわざととぼけていると思っていて、詳しい説明をする者は一人としていなかった。
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