妹が一番まともだと思っていることも、王太子と兄が何を考えているかも知らないまま、友達の機転で私は同性に血祭りに上げられずに済みました

珠宮さくら

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「お姉様」
「……今度は何?」


テレーズは、妹が帰宅して着替えもせずに呼び止めるのにげんなりした顔をした。どうせろくでもないことだ。

そう思って身構えたくもないのに聞きたくないと思ってしまっていた。でも、この時のエリーズの表情は見たことないものだった。


(ろくでもないこと企んでそう)


思わず、テレーズは心の中でそんなことを思って眉を顰めずにはいられなかった。やっと、モニークの書く脚本から解放されたのだ。もう、厄介事に巻き込まれるのはしばらくは勘弁してほしい。


「シクスト様が、婚約破棄したいそうです」
「え……?」


それを耳にした両親も、兄も、テレーズと同じく反応した。また何かおかしなことを言い出すと思って身構えていた両親と兄も、びっくりしているのがわかったが、テレーズもその中にいた。

テレーズは、どうにも落ち込んでいるようには見えない妹を見ていた。そもそも、なぜ、姉のことを呼んだのか。両親に話せば済むことのはずだ。


「どういうことだ?」
「言った通りです。もう、堪えられないみたいです」
「……堪えられない?」


それは、エリーズ以外が思ったのは、エリーズのやることに堪えられないという意味だと思った。


「えぇ、お姉様の浮気に堪えられないそうです」
「「「「は?」」」」


両親と兄とテレーズの間抜けな声が重なった。顔も似たりよったりな顔をしていたことだろう。他所ではできない顔だったはずだ。


「?」
「何で、テレーズのことが出て来るんだ?」
「いえ、待って。テレーズが浮気しているって、何なの?」


父と母が、そう聞いた。テレーズは、突拍子もいかない単語を聞いて固まっていて、シクストがすぐさま近づいていた。


「テレーズ。こっちに座ってろ」
「お兄様。私、今、聞き捨てならないことを聞いた気がしますが、幻聴ではなかったのですよね?」
「そうだな。嫌な単語が私にも聞こえた」


こんな時にまで、両親や兄がテレーズの味方のような態度をするのにエリーズはイラッとした。


「どうして、浮気している方の味方をするのよ!」


苛立つあまり声を荒げるエリーズに声を荒げたいのは、こちらとばかりに言い返した。


「だから、お前の婚約破棄が、どうしてテレーズの浮気が理由になるんだ! おかしいだろ!」
「は? 私の婚約破棄? ちゃんと聞いてよ。お姉様の婚約破棄でしょ!」
「テレーズは、誰とも婚約していないぞ」
「そうよ。シクストと婚約しているのは、エリーズでしょ。忘れたの? 婚約するのが狡いと騒ぎ立てて、無理やりあなたたちが婚約したんじゃない」
「へ?」
「忘れてたのか」
「そ、そんなことした?」
「「「「した」」」」
「っ、」


エリーズの間抜けにも今更になって焦った顔をしたのを見てわテレーズは頭痛を覚えた。


(嘘でしょ?! あれだけ、騒いでいたのに。どういう思考回路してるのよ!?)


そんなことを思って頭を抱えたくなった。それは、両親も同じだった。

ガスパールは、もはや妹はテレーズしかいないかのようにしていた。一々、反応するのが面倒になったようだ。

それでも、エリーズはやっぱり、そんなわけない。違う!とか。騙されない!と言って認めようとしなかったが、エリーズが言いたかったのはテレーズが王太子と浮気していると言いたかったようだ。


(何で、そうなるのよ)


どうやら、姫抱きされているのをエリーズにはしっかり見られていたようだ。その前に抱き合っていたとまでいわれて、テレーズが訂正する前に兄たちが具合を悪くした時のことだとわかってくれたのは、よかった。

でも、エリーズがシクストに話したことで、あっという間に広まることになるとは思いもしなかった。


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