姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら

文字の大きさ
1 / 57


スヴェーア国。その国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、幼い頃からよく母親に髪を梳かれながら、色んな話を聞かせてもらっていた。

母には、他にも二人の娘がいたが、シーラを何かと可愛がってくれていて、そんな風に話をたくさん聞いていたのは、三姉妹でシーラだけだった。

母は自分とは全く似ていないシーラの髪の色がお気に入りだった。その髪色は、母の思い入れのある人に似ていたようで、にこにこしながら懐かしそうにしていた。

スヴェーア国でも、シーラに似たような髪色を見たことは滅多になかった。


「あなたは、お姉様によく似ているわ」
「お母様のお姉様のこと?」
「そうよ。隣国に嫁いで行ってしまって、長らく会えていないけれど。本当は、私が嫁ぐはずだったの。旦那様とは、お姉様が婚約して結婚するはずだったのよ」


それを聞いていた幼いシーラは、母の言葉に目を輝かせていた。そこまでして、嫁ぎたくないのはきっと……。


「お父様のことが好きだったのね!」


それが、正解だとシーラは信じて疑っていなかったが、シーラを見て母は困った顔をしていた。


「……ちょっと、違うわ」
「違う……?」


母の困り顔にシーラは、目をパチクリして首を傾げた。


「嫁ぐはずだった方が、その、とても怖い方って聞いていたのよ。そういう噂があって、誰も婚約したがっていなかったの。それが、私が婚約してはどうかってなってしまって、私、昔から怖いものが苦手なのよ。だから、怖い人のところには嫁ぎたくないって泣いていたの。それに隣国に嫁いだら、友達とも離れなきゃならなくなるから、それも嫌だったのよ。そうしたら、お姉様が“なら、私が代わってあげる。だから、もう泣かないって約束して”って言ってくれたの」


それを母は思い出したのか、懐かしそうにしていた。

シーラは怖い人と聞いて、眉を顰めていた。


「私も、怖いのは、嫌い。お母様のお姉様は、怖いものが得意だったのね!」
「ううん。私より、駄目な人だったわ。それにうんと寂しがり屋だった。でも、代わってくれたのよ」


姉として、泣きじゃくる妹をそんなところに嫁がせたくなかったのだろう。自分の方が怖がりなのに友達とだって離れたくなかっただろうが、そんなことを言ったのだ。

そんな姉に半信半疑だったようだが、本当に代わってくれたことに母は感激したようだ。だから、姉が向こうに行くまでに姉が喜んでくれることを何でもやったようだ。

シーラは、そんな母の姉に感激していた。自分だったら、姉や妹が泣きじゃくって嫌がることを自分も苦手なのに友達とも離れなきゃならないのに代わってあげられる自信なんてなかった。


「あなたの髪をこうして梳かしていると思い出すわ。あなたの髪色は、私のお姉様にそっくりなのよ。私は、昔から羨ましくて仕方がなかったわ」
「でも、私、お母様やお姉様たちと同じ色がよかったわ。私だけ違うから、みんなして姉妹だって気づいてくれないんだもの」


シーラは、それに悩んでいた。父とも、髪色も質も家族で一人だけ違うのだ。


「そうね。でも、この髪色は珍しいから、お姉様も、あなたも出会ったらすぐにわかるわ。昔は、この髪色を祖母が……、あなたの曾祖母や他にもいたのだけどね。受け継いで生まれてくることが少なくなってしまった。隣国のドニエ国では、縁起のいい色合いだと喜ばれるそうよ。喪に服す時は、その髪色を隠すようにウィッグをつけたり、ベールをつけて隠したりすると聞いたことがあるわ」


母が、そんなことを話してくれるのは、シーラだけだった。姉も、妹も、昔話になんて興味なかった。

病気で伏せるようになってからは、髪を梳かすのは、シーラが母にしてあげられる唯一のことになっていた。

段々と弱っていく母に対しても、シーラ以外の家族は冷たいものだった。父は、母の部屋にすら行くことなく、姉と妹が母に強請る時くらいしか会おうとはしなかった。


あなたにおすすめの小説

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。 ※不定期更新

『婚約破棄?結構ですわ。わたくしは何もしないで生きていきます』

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王太子ユリウスの婚約者だった伯爵令嬢リュシエンヌは、公衆の面前で一方的に婚約を破棄される。 だが彼女は泣かず、怒らず、復讐も選ばなかった。 「働かないと、決めましたの」 婚約者として担ってきた政務補佐、調整、裏方の仕事をすべて手放し、彼女は“何もしない”生活を始める。 すると王宮は静かに軋み、これまで彼女が支えていた日常だけが浮き彫りになっていく。 新たな婚約者を得た王太子。 外から王宮を支える女性。 そして、何もせず距離を保つ元婚約者。 誰も声高に責めず、誰も派手なざまぁをしない。 それでも、関係は変わり、立場は入れ替わり、真実だけが残っていく。 これは、頑張らないことで人生を取り戻した令嬢の物語。 婚約破棄のその先で、“何もしない”という最強の選択をした女性が、静かに自由を手に入れるまでの40話。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

【完結】婚約破棄に祝砲を。あら、殿下ったらもうご結婚なさるのね? では、祝辞代わりに花嫁ごと吹き飛ばしに伺いますわ。

猫屋敷むぎ
恋愛
王都最古の大聖堂。 ついに幸せいっぱいの結婚式を迎えた、公女リシェル・クレイモア。 しかし、一年前。同じ場所での結婚式では―― 見知らぬ女を連れて現れたセドリック王子が、高らかに宣言した。 「俺は――愛を選ぶ! お前との婚約は……破棄だ!」 確かに愛のない政略結婚だったけれど。 ――やがて、仮面の執事クラウスと共に踏み込む、想像もできなかった真実。 「お嬢様、祝砲は芝居の終幕でと、相場は決まっております――」 仮面が落ちるとき、空を裂いて祝砲が鳴り響く。 シリアスもラブも笑いもまとめて撃ち抜く、“婚約破棄から始まる、公女と執事の逆転ロマンス劇場”、ここに開幕! ――ミステリ仕立ての愛と逆転の物語です。スッキリ逆転、ハピエン保証。 ※「小説家になろう」にも掲載。 ※ アルファポリス完結恋愛13位。応援ありがとうございます。