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シーラは、父に普通にしていいと言われても、姉妹に何を言われても喪に服すことをやめようとはしなかった。
それが、アルヴァとリネーアには、どうにもいい子ぶってるように見えてならなかったようだ。
アルヴァは父に言われた通りに好きな格好をして、やたらと婚約者の侯爵家の令息であるマティアス・アルムフェルトと出かけようとしていた。
「その格好は……?」
「地味な格好だとあなたが色々言われるでしょ?」
「……」
マティアスは、アルヴァの気晴らしになるかと少しして家にまでわざわざ迎えに来てくれて、彼は婚約者の姿に絶句していた。それこそ、あまりにしつこくされるせいかも知れない。それも、母親を亡くしたばかりだからとでも思ってくれていたのかも知れない。
チラッとリネーアの流行りの格好と喪中らしい格好のシーラを見て、マティアスは何とも言えない顔をしていた。アルヴァとリネーアの頭の心配をしたのかも知れない。
まだ、母を亡くして1か月過ぎた頃だ。普通なら、どこかに出かけたがって婚約者に催促し続けるようなことはせずにどこにも出かけられない婚約者を心配して、マティアスが連れ出して気晴らしをと誘うものだ。
それでも、断って出かけるのはやめて家でお茶をくらいにおさえて、数ヶ月は出かけるなんてことはせずに大人しくしているところだが、アルヴァはそんなこと全く考えていないのだ。アルヴァだけではない。リネーアも、そうだ。
(これが、二人の普通だと思いたくはないものね。特に片方は、彼の婚約者なんだもの)
そこで、彼が出かけるのをどうするのかを見ることになった。出かけることだけは、全力で避けたいはずだ。シーラも、彼が上手く回避できなければ何か言おうとは思っていたが、できれば姉の婚約者をここで庇うことは避けたいところだ。
(後で何を言われるか目に見えているもの)
「あー、すまない。今日は、他に予定が入ってしまって行けないんだ」
ちょっと白々しく見えたが、シーラは心の中で彼を応援していた。
(頑張って! できれば、喪中期間の前半は遠さげられそうなことを言って逃げて)
アルヴァは、シーラとは違う。物凄く驚いた顔をして、婚約者を見ていた。
「え? そんな、少しくらいいいじゃない」
だが、マティアスは申し訳ないと繰り返した。
「それとしばらく忙しいから、どこかに出かけるのは難しいと思ってくれ。予定が経ったら、私から誘う。すまないが、そういうことだ。失礼する」
「ちょっ、待ってよ!」
マティアスは、シーラと目があって小さく頭を下げられた。シーラは、それに頭を下げた。アルヴァは、必死に追いかけて行って引き止められなかったことで荒れに荒れてしまったが、仕方がない。
リネーアは、アルヴァがいないところでは……。
「何、あれ。全然、上手くいってないんじゃない。ここまで迎えに来てくれるって自慢していたのに笑えるわ」
「……」
「それに流行りの服も知らないみたいね」
(喪中の婚約者に合わせた格好をしてくれていただけじゃない。そんなこともわからないのね)
そんなことをリネーアは言っていたが、シーラが内心で呆れているとアルヴァが憤慨して戻って来ると……。
「お姉様。残念でしたわね」
「ここまで来ておいて、あんなのあんまりだわ! 信じられない!」
アルヴァの言葉にさもその通りだと頷いているリネーアにシーラは呆れてしまった。
(わざわざ迎えに来ようとしたのも、ここで他の姉妹がどうしているかと気にして見に来てくれたのよね。それなのにあんな格好しているのを知ったら、急用を思い出すわよね)
シーラは、そんなことを思っていたが、アルヴァは憤慨していて大変だった。
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