17 / 57
17
しおりを挟む伯母からの手紙の返事がもらえると思っていたシーラは、以前よりも別の理由で緊張しながら向かったのだが、そこにいたのは……。
シーラにそっくりな髪色をした女性がそこにいた。
「初めまして、あなたの母の姉のエルヴィーラ・バシュキルツェフよ」
「伯母様……? っ、初めまして、シーラ・ヘイデンスタムと言います。お会いできて、とても嬉しいです!」
あまりのことに動揺してしまい、とんでもない不格好な挨拶をしてしまった。
それに怒ることなく、エルヴィーラはにこりと笑ってくれた。その笑顔が、母によく似ていて、シーラは泣きそうになった。
「手紙をありがとう。あの子が亡くなったという知らせが、どういうわけか来なかったのよ」
「っ、」
(やっぱり)
シーラは、そうではないと思いたかったが、しっくりきていたことが本当のことだったようだ。
エルヴィーラは、懐かしそうにシーラを見ていた。
「あの子の小さい頃に似ているわ」
「あら、髪色だけじゃないわ。お転婆なあなたに似ていたら大変じゃない。シーラ嬢は、お淑やかで聡明な令嬢よ。お母様によく似ているわ。この色合いが、古くから喪に服す色合いだとすぐにわかったくらいだもの」
「それは、凄いわね。最近は、これより少し明るめなのよね」
「つ、」
シーラの家に来てくれていた夫人は、エルヴィーラのことをよく知っているようだ。
(そういえば、お母様のことも、よく知っていたわね)
「中身は、全然違うけど、血筋ね。こうして、並んでいると母娘に見えるわ」
「っ、」
「それは、嬉しいわ。私、息子しかいないんだもの」
「私もよ」
そこに王妃がやって来た。一斉にお喋りをやめて、カーテシーをした。
王妃は、シーラを見るなり手招きをした。
「?」
「呼ばれているわ。近くにお行きなさい」
エルヴィーラに言われて頷いた。失礼にならないように。それでも急いで近くによった。
王妃は、その側にいたエルヴィーラを見て手招きはしないが目線で同じように側に来るように促した。エルヴィーラは、それを察知してシーラの後ろに控えた。その髪には、ベールがつけられていた。髪の色をしっかり隠すものだった。シーラに会う時には、外していたが王妃に会うとなり、すぐさま付けたのだ。
本来なら、付けたままでいるものだが、シーラに会うのに髪の色を見せたかったようだ。
「シーラ。伯母上と会えたようですね」
「はい。王妃様と皆様のお力添えがあってこそで、ありがとうございます」
「積もる話もあるでしょう。別室を用意してあります。そこで、話すとよいでしょう」
「お心遣い感謝します」
エルヴィーラも、王妃に感謝して、婦人たちにも礼を言っていた。
嬉しそうに別室に向かうシーラと寄り添うエルヴィーラ。それを微笑ましく見送る面々は……。
「不思議ね。あぁしていると本当の親子にしか見えないわ」
「あの髪の色合いのせいで、もらわれ子のように言われていたそうですよ」
「まぁ、それは酷いわね」
「昔は、エルヴィーラも同じこと言われていたわね」
「あの頃のエルヴィーラは、凄かったわね」
王妃は、積もる話があると別室を用意させたが、それを聞いてしまえば、色々としたくなってしまうと思いあえて聞かない方向にしたのだが……。
「……それにしても、義姉に妹の死を知らせないだなんて、とんでもない殿方がいたものね」
「えぇ、私も驚きましたわ。知らなかったエルヴィーラを見ていられなかった」
そんな風には微塵も見せなかったエルヴィーラ。シーラを見て、もう会うことが叶わない妹を思い出して、泣きそうになっていただろうが、シーラが嬉しそうにするのを見て感激しているのも伺えた。
242
あなたにおすすめの小説
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる