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しおりを挟む「あなたね。ゲラーシー様を誑かそうとしていたそうじゃない」
「ゲラーシー様……?」
突然、名前も知らない令嬢から、シーラはそんなことを言われていた。
いきなり、侯爵家の養子になったのだ。色々言われるものと思っていたが、家のことではないことで話しかけられたことに拍子抜けしてしまった。
「惚けないで。王弟殿下のご子息のゲラーシー様よ。知らないとは言わせないわ」
「……」
シーラは、首を傾げた。しかも、誑かそうとしていたなんて言われるようなことをした記憶が、シーラには全くないのだ。一緒にいる子息といえば、義兄のヴァジムくらいだ。他の子息とは、殆ど話したことはない。誰が婚約していて、婚約者がいない子息なのかがシーラにはわからなくて、変な噂を流されたら大変だと思って気をつけていたのだ。
それを誑かそうとしたと言われても困る。だが、その名前には聞き覚えがあるが、別の人だろう。……そう思いたいとシーラは、思っていた。
目の前の名前も知らない令嬢は、そんなことをシーラが考えていることも気づいていないようだ。
「ヴァジム様の幼なじみよ」
「お義兄様の……?」
(幼なじみがいることも、聞いてなかったわ。どんな方だろう?)
シーラは、ヴァジムに紹介されてもいないため、益々わけがわからない顔をした。
「どこまで惚けるつもりなのよ。白々しい」
「あの、その方が、私に誑かされたと話しているのですか?」
「違うわ。身分を知って近づいて来た令嬢が多くいて大変だったけど、そんな中でもあなたは違ったみたいにおっしゃっていたわ。でも、こんなに早く隣国の留学から戻ったのだもの。そんな令嬢たちに辟易なさったんでしょ。あなたも、含めてね」
「留学……?」
そこで、シーラは留学生に心当たりがあった。
(これは、誤解があるようね)
シーラは何食わぬ顔で、こんなことを言い始めた。
「あぁ、それなら、私が留学生のお世話係をしていて、先生に頼まれたので、数回ほどでしょうか。困っている子息に話しかけましたけど。その方のことでしょうか?」
「お世話係……?」
「えぇ、他にもいるんですけど、その、男子生徒が留学生と反りが合わなくて、問題になるといけないからと頼まれまして」
シーラの言葉にそんなわけないと話しかけてきた令嬢は言っていた。
「でも、その方は、自分は身分が低いから、つり合わない。だから話しかけるなと周りに言われておられたので、私の任された方ではないと思います」
「そんなことを言ったの?」
「えぇ、最初にそう言われたのが王女殿下でしたので、その身分が上な方に話しかけられて緊張してしまったのかと思ったのですが、他の方々にも同じように言われたようです」
シーラの言葉を王女に言ったと聞いて、眉を顰めていた。
「シーラ様。ちょっと、いいかしら?」
「はい」
「ナタリア。隣国から、来られている留学生も同じことを言っていたわ」
「そんな、じゃあ、ゲラーシー様が嘘をついていると言いたいの!? 信じられない!」
ナタリアと呼ばれた令嬢は、シーラが嘘つきなのよ!と言い、いなくなってしまった。
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