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しおりを挟むダヴィットは、深いため息と共にこうも続けた。
「私の婚約者が、物凄く怒っているんだ」
「それは……」
「彼に最初に言われた王女だよ。大体さ、王女の顔というか、私の婚約者の顔くらい知っとくべきだよね。それに身分が低いから、つり合わないとか言っといて、着てる服が身分が高い人間のあつらえたものって、バレるようなの着てたんでしょ? 馬鹿すぎるよね」
「……」
シーラは、それを聞いて何とも言えない顔をしてしまった。
周りも、王太子の言葉に何とも言えない顔をしていた。何なら、シーラに同情的な視線が集まり出してすらいた。
ダヴィットは、久々の最愛の人からの手紙にうきうきして開けたというのにそれは王太子が期待していたようなものではなかった。
「あいつ、私の婚約者に何をしてくれてるんだ。婚約を解消したいと言われでもしたら、絶対にただでは済まさないからな」
そんなことを王太子は、密かに誓っていた。
王女からの怒りのこもった手紙で、王太子である婚約者に対しての文面は皆無だったが、もらったものだからとダヴィットは大事にしていた。
「怒り狂った文字の荒れ具合は初めて見るな。乱れていても、なんて美しいんだ」
王太子は、そんな風にうっとりと届いた手紙を見ていた。そのことで色々と王太子は手紙を出していたが、返事は最近までなかった。
もっとも、ようやく手紙が来たと思っていたら、その文面にも婚約者に対する王太子への文面はほぼなくて、シーラのことを心配する内容と留学生がシーラに何かしていたら、ただではおかないとかなり物騒なことが書かれていたが、そんな手紙ですら王太子は大事にしていた。
「アウギュスタが、こんなに心配する令嬢か。……仲良くしておいて損はなさそうだな」
そんな文面でも、シーラを大事にしていて、そんな風に書いて送られて来たのは初めてだった。そのため、ダヴィットは興味本位とちょっとした期待をこめてここに来たのだ。
するとどうだろう。従兄が、シーラに会ってしまってはいたが、面白いことになっていたのだ。
まぁ、それを手紙に書いたら、会わせたことになんだかんだと言われるだろうが、シーラが元気そうにしているのを書けば、何かしらのリアクションが期待できるかも知れない。
そんなことを思って今、シーラのところにいたりする。彼も従兄のことをとやかく言えるほど、普通ではなかった。
「隣国からの評判も悪くなっちゃって、留学しようとしていた生徒が続々キャンセルしようとしててたんだよ。困っちゃうよね。あんなのをここの普通みたいに思われてるってことでしょ? 凄い腹立つよね」
王太子は、そう言いながら、どっかの誰かさんは逆宣伝が昔から上手いんだよねと言ってため息をついていた。
シーラは、苦労してるんだなと思い始めて、ヴァジムを見た。彼は、その評価に何とも言えない顔をしていた。
(あれは、どういう顔なんだろ?)
まさか、周りにそんなことをして回っていたとは気づいていなかったとは、シーラも思っていなかった。
ヴァジムは、王太子の言葉にそういえば……と色々と思い返していて、庇い立てできるものが何も思いつかずにとんでもないのと幼なじみだからと友達でいたことにようやく気づいていた。
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