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「父上。あの女のことですが……」
ゲラーシーの方も、両親に呼ばれて実家に戻っていた。シーラに散々な恥をかかされたことに彼女と婚約なんてする気はなくなっていた。みんなの前で馬鹿にされたことが許せなくて、どうにかしてもらおうと必死だった。
シーラの義兄になった幼なじみのヴァジムも、側にいるが何かしでかさないかと監視しているのがわかってゲラーシーのイライラは募るばかりだった。
「それを見ろ」
「? これは?」
父親に手紙を見るように言われて、ゲラーシーは怪訝な顔をしながら中を見た。
「っ、」
「お前の留学中の評価だ」
「0って、こんなの何かの間違いです!」
「間違いだと? あちらは、こちらより授業に出席して態度もよくないと評価の普通はもらえないところだ」
「は? 授業なら出てます」
「必須なものには出ていたようだな。だが、出ているだけで態度はよくなかったようだ。殆ど寝ていたと書いてある」
「っ、そんなことは……」
「それ以外には、どうして出席していなかったんだ? 私は、あちらでやり直せと言ったはずだが? こちらで改善が見られないから、きちんとしたところに留学させたんだ」
「そんなこと知らなくて」
「知らないだと!? 私たちは散々言ったはずだ! 向こうでも先生に聞いたはずだ。聞いて納得してからサインしろと言われた書類があったはずだ」
「あ、いや、それは……」
ゲラーシーは聞いてはいたが、どうにでもなると思っていた。何しろ自分は、王弟の息子なのだ。そんな評価を下すとは思っていなかったのだ。
「その上、授業に参加せずに遊び回っていたそうだな」
「っ、あれは、その、社会勉強です」
「平日にか? それに留学生の世話係になった令嬢に数回、話しかけられて感謝したのならわかるが、その令嬢の母君の葬儀に喪服をあつらえて出席したことは、どう説明する気だ?」
「感謝を表しただけです」
ゲラーシーは、しれっと答えていた。
「わざわざ、あつらえてまでか? その令嬢や姉妹たちも制服で出席して、他の生徒たちも学生は生徒で出席していたはずだが? お前だって祖父の葬儀で制服で出席したのを覚えているはずだ」
「それは、よくしてもらっていたので、それこそ感謝をしていると知ってほしくて……」
「喪が明けたら婚約者になるのは、自分だと誇示したかったのではないのか?」
「っ、そんなことは」
「ないのか? 留学期間の半分どころか、最初の試験も受けずに戻って来て、その令嬢の婚約を解消して、自分が婚約するのをどうするかと頭を悩ませていたと聞いたが?」
「そんなことは……」
ゲラーシーは、しどろもどろになっていた。それこそ、シーラが喪中の間にあちらで、やることなんてないと思い、それなら戻って策を練ればいいとそれを口実に戻って来たのは、あちらの堅苦しさに辟易したからだ。
「それなのにその評価がおかしいと言えるのか?」
「えっと、その、色々と勘違いと誤解があるようです」
そんな息子の言葉に呆れ返った顔をしていた。
「お前の留年が決まった」
「なっ、なぜですか?!」
「留学生となって評価が0な生徒は、お前が初めてだ。だが、0なんて生ぬるい採点だ。マイナスになっていてもおかしくない。なのに留年しないとでも思っていたのか?」
「そんなの父上なら、どうにでも……」
「するわけあるか!!」
「っ!?」
ゲラーシーは、そんなことを言う父親にえ?何で?という顔をしていた。
「それとお前を跡継ぎからも外すことにした」
「それでは、誰がここを継ぐというんですか?!」
「養子をとる。お前に跡を継がせるより断然いい。学園を卒業するまでは面倒みてやる。だが、留年はこれっきりだ。続けて留年するなら、即刻勘当する」
「そんな、母上!」
「……私、気分が悪いので部屋に戻りますわ」
ゲラーシーは、母親に縋ろうとしたが、母親はそんな息子を見ようともせずに部屋に戻ってしまった。
「その令嬢に何かしたとわかっても、勘当するからな。謝罪だけして、あちらにどうにかしてもらおうとも思うな。これは、決定事項だ。まぁ、仮にお前のようなのを婿にしたいと言い出すところがあれば、婿にでもなればいいが、我々は何の援助もする気はない。婚約者の令嬢にも、彼女の家族にもきちんと納得してもらってからにするんだな」
「っ、そんな……」
ゲラーシーは、父親の言葉に力なく崩れ落ちた。そんな息子を見ることなく、父親も部屋から出た。
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