7 / 20
7
しおりを挟むバウティスタ王太子は、カルメンシータがあちらで婚約者と仲良くしていると噂を聞いたらしく、それから学園で荒れ狂っていた。荒れ狂うと言っているが、それは側近の側とエステファンアがいる時だけしか見られない光景だった。
(まぁ、無理はないのかな……? 婚約者と仲良くしているだけで、ここまで荒れ狂うって、なんか変な人)
エステファンアには、王太子がよくわからなくなっていた。
パトリシオよりも、質が悪いように見えてならなかった、
「エステファンア嬢。あまり王太子には近づかない方がいいですよ」
「えぇ、でも……」
他の側近がエステファンアにそう言ってくれたが、エステファンアはパトリシオをチラッと見た。
別に王太子の側にいるつもりはない。エステファンアは、パトリシオの側にいるだけだ。それもこれも、婚約者のことを心配しているからではない。
(私のお菓子)
そして、何とも言えない顔をエステファンアはした。今日のおやつは、限定品は無理かも知れない。
そんな風に思って、しょんぼりしているエステファンアをパトリシオ以外の側近たちは、大いに勘違いしたようだ。
ここにエステファンアの心の内を聞ける者がいたら、色々と言われていただろうが、そんなことできるものがいないため、エステファンアは他の側近たちに気遣われることになった。
「……そうですよね。婚約者が、元気ないと気になりますよね」
「はぁ、こんなに心配されているのに気づかないとはな」
「全く、これまで散々エステファンア嬢を困らせておいて、ここでも困らせるとは……、羨ましいにもほどがあるな」
ぼそりと呟いた言葉に側近たちは頷いていた。
「?」
それが聞こえていなかったエステファンアは、はてなマークを浮かべていた。
パトリシオが、腑抜けていなければ、エステファンアのしていることに狂喜乱舞していただろうと側近たちは思っていた。
だが、そこまでのことではなかったりするのだが、わからないとこえないようだ。エステファンアの中では相変わらず、お菓子が頂点に君臨しているだけなのだ。
だが、そんなこと知らない子息たちは、パトリシオが選ぶだけはあるなとエステファンアのことを見るようになっていた。
それこそ、誤解でしかないが、どうにかしようとエステファンアなりに頑張っていたのだから、それも頑張りのうちになるのか……?
まぁ、なにはともあれ、エステファンアなりの頑張りはしているが、それが思うようにいってないようでいて、それなりになっていると母や使用人たちは見ていた。
(??)
エステファンアにははてなマークを浮かべてばかりいたが、食べていいとお菓子を差し出され我慢するエステファンアではない。
他の子息たちから、婚約者を心配して困ったげにしているとして、上手くいかないことにしょげているのを好意的に見られているようだ。
それだけではない。子息たちだけでなく、腑抜けたパトリシオのシスコンっぷりに……。
「あそこまでなのね」
「なんか、ちょっと、幻滅だわ」
「シスコンすぎよね」
「それに比べて、あんなに情けないのにエステファンア様は、よく付き合えるわよね」
そんな風にキャーキャー騒いでいる中で、目が覚めたみたいな令嬢が現れ始めたのだ。
そのため、エステファンアのことをちんちくりんだと言わなくなった者も、少しばかり現れるようになった。
その辺のことを知ったことで、エステファンアの母たちはいい傾向だと思っているようだが、そんなことになっていることを知らないエステファンアは……。
(なんか、お母様たちの機嫌がいいな。なんか、いいことあったのかな?)
エステファンアは、自分が勘違いされていることに全く気づかないまま、そんなことを思って首を傾げていた。
勘違いばかりとなっているが、エステファンアとして美味しいお菓子をおやつに堪能できれば、それでよかった。
落ち込んでいる婚約を見ても、エステファンアには未だにおやつが大事だった。
121
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました
由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。
このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。
「――だったら、その前に稼げばいいわ!」
前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。
コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。
そんなある日、店に一人の青年が現れる。
落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。
しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!?
破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。
これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む
ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる