絶大な力を持つ聖女だと思われていましたが、どうやら大した力がない偽者が側にいないと争いの火種しか生み出せないようです

珠宮さくら

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(フェデリカ視点)


学園に通うのが、こんなに楽しいとは思わなかった。

祖国では、王女という肩書きがあったせいで話しかけてくれる人も限られていた。でも、ここでは違っていた。

聖女のことを必要としてくれているから、ルチアも必要だと思われて、忙しくしていると思っていた。

だから、学園にも来れていないと思っていた。一緒に来ることになった人たちもいるから、そちらにかかりっきりなのだろうと思って、そのうち落ち着いたら会えると思っていた。

それが、トントン拍子に王太子に求婚されることになり、有頂天になっていた。

祖国の国王である父は、聖女となった私を誘拐されたのを連れ戻そうと戦争になろうとしているらしく、それを穏便に終わらせられないかと王太子やこの国の陛下に懇願した。

私やルチアのせいで、そんなことになったら、ルチアだって傷つくはずだ。


「ルチア……?」
「もう1人の聖女です」
「もう1人だと? そんな者がいるのか?」
「いいえ。聖女は、フェデリカだけです。フェデリカ、聖女は君だけだ。おかしなことを言うな」
「え? でも……」


王太子は、何を言い出すんだとばかりに言った。他の誰もがルチアのことを聖女と認めていなかったことにようやくそこで気づいた。

前まで見聞きしたら、すぐに分かったのにここではそれが鈍ってしまっているようだ。

理想の養父母ができて、婚約者ができて、一緒にいて楽しいと思える人たちといたから私が衰え始めていることに気づかなかった。

いや、気づいたらルチアが別の国に彼女を信じる人たちといなくなっていたからかも知れない。

同じ国にいたから、私の力は絶大なまま使えていたかのように鈍くて使いものにならなくなっていくのを止められなかった。

私の心が、まっさらではなくなってしまったからかも知れない。

ルチアを追いかけて行きたいのにそんな力がなかった。

そのため、置いて行かれた私は必死になって聖女のふりをし続けるしかなかった。そんな私の焦りなんて知らない婚約者や周りは……。


「おい、戦争を仕掛けて来たぞ。みんなを守ってくれ」
「聖女様が、どうにかしてくれると信じているのに。どうして、助けようとしないんだ!」
「そうよ! こんな目に合っているのに見てるだけってあんまりだわ!」


あんまりなのは何でもかんでも聖女を頼ろうとする周りだ。

どうして、ここに来たら大丈夫だと思ってしまったのか。さっさと居なくなったということは、ルチアの方が見る目があったということだ。

どこで私は間違えてしまったのか。そんなことを思っていても、ルチアがいなくなってしまい、聖女の力も上手く使えなくなった私が、ルチアに会うことは二度と叶わなかった。

取り戻そうとする父と聖女を何としても奪わせないと争うことになった2つの国を止められる者は現れなかった。

聖女でも何でもない魔女とように罵られるようになり、婚約を破棄される頃には、もう何もかも手遅れとなっていた。

一体、私はどこで何を間違えてしまったのか。それすらわからなかった。


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