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しおりを挟むルチアは、フェデリカが本物の聖女だと思っていたから、大したことなく戦争は終わるものと思っていた。
それこそ、耳に入らなくなったから、おおごとにならなかったのだと思っていた。
それが、まさかルチアの耳に入らないようにみんながしているなんて思いもしなかった。
学園で、歳が近い貴族や平民も関係なく、ルチアの周りには人が集まっていたが、今日は女子会をしていたようで、女性しかいなかった。
別のところで、そこに集まる婚約者や気のある男性が集まっていて見守っていた。
そんな2つに分かれたのを王太子は見慣れていたが、ここに割り込むのには勇気がいった。
「ルチア様」
「?」
「殿下が、お見えのようです」
「あ、セヴェリーノ様」
「やぁ、楽しそうなところ、すまない。ルチアを連れて行ってもいいかな?」
仕方がないと言わんばかりの女性やくすくすっと笑う者やキャーキャーと騒ぐ者がいた。
「あの、何かありましたか?」
「街の外れで難産の女性がいるそうだ」
「え?」
「母子ともに危ういかも知れないという知らせが来た。馬車では間に合わないかも知れない。護衛と馬で行けるか?」
「行きます」
「すまないが、私は行けない」
「そんな顔をなさらないでください。護衛をお借りします」
ルチアは、護衛と馬にも声をかけて向かった。
「殿下。よろしいのですか?」
「私が一緒に行っても何もしてやれないからな。このくらいしかできないのが歯がゆいが」
そんなことを言いながら、護衛と馬がいなくなるのを見るのは辛いものがあった。
「あの、王太子殿下。街で怪我人ですか?」
「いや、難産の女性がいるんだ」
「まぁ、なら、講堂でお祈りしなくては」
「そうね。私、みんなに声をかけて来るわ」
ルチアと話していた面々は、すぐさま行動した。
何かあれば、すぐに王族のもとに知らせが来た。直通でルチアにしないのは、いらぬ心配事まで耳に入れたくないからだ。
そして、ルチアが慌ててどこかに行くのを見て、自分たちには何もできないと思うことなく、みんなで祈ろうとするようになったのも、ルチアの側にいる者たちがしていたから、広まったことだった。
セヴェリーノは、自分にはできることがないと思ったのを恥じた。ルチアだけでなく、みんなで難産の女性と生まれて来る子供の無事を祈った。
そうして、少しずつ周りを幸せにするためにみんなが少しずつ変わったことで、この国は他の国より豊かな国となり、笑顔溢れる誰もがその国に住みたいと思う国となっていった。
その中心にルチアがいたが、彼女はあの調子のままで変わることは決してなかった。
王太子と結婚してからも、2人は仲睦まじくし続けて、そんな2人を見かけるたび色んな人たちに羨ましがられつつ、素晴らしい一生を送ることができたのだった。
そんな彼女が、自分が本物の聖女だと思うことはなかった。ずっとフェデリカこそ、本物と思っていたが、彼女が知らない間に国を争わせた偽物の聖女として、魔女扱いされて2つの国がとっくに滅んでいることも知ることはなかった。
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