私は途中で仮装をやめましたが、周りはハロウィンが好きで毎日仮装を続けていると思ったら……?

珠宮さくら

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(それはそれで、同じ女性として、どうなんだってところだけど。イベリスさんと同列に自分を置くって、身の程知らずな気しかしないんだよね。絶対に同じ女性だからでは済まされないものがあるわよね。でも、羨ましいかというと実際のところは、あんまり羨ましくはないかも)


そう思いつつ、コピーをしたのを纏めてとめようとして、ユズカはぼんやりしすぎていたようで、紙で綺麗に指を切ってしまう。


「っ、あぁ、やっちゃった」


思いのほか、ざっくりと切れたらしく血がすぐに滲んできた。コピーしたものに血がついたら大変だとその手を離した。

ざっくりやるのは、久々だ。針で刺しまくったよりも、血が凄い出始めていた。本当に綺麗に切れたようだ。


(コピー用紙って、こんなに切れるんだ。針より痛いな)


他人事のようにそんなことを思ってユズカは指から滴り落ちそうになっている血を眺めていたら、声をかけられた。


「大丈夫かい?」
「え?」
「あぁ、なんて美味しそうな香りなんだ」
「えっと、ユーフォルさん……?」


(だよね??)


突然、気配なく後ろに居たユーフォルは、見たことないほどうっとりとした顔をしていた。ただですら美形なのだ。そんな顔をしていたら、勘違いする女性が大勢現れそうな顔をしていたが、彼の目の前にいるユズカは、そんな勘違いをするような女性ではなかった。


(凄い。なんか、恍惚とした顔をしてるけど、何で??)


ユズカの怪我をした手を躊躇いもなく取ったかと思えば、血の出た指を咥えたのには、流石にびっくりし過ぎて固まってしまった。


(ユーフォルさんが、指を食べてる?! いや、指じゃなくて、血かな?)


「っ、」


切れた傷口をユーフォルが舌で舐めた痛みにユズカは顔を顰めずにはいられなかった。


「この、戯け者!!」


ガツッ!

モルセラが杖でユーフォルの頭を思いっきり殴りつけていた。その音は物凄く痛そうだったが、殴られた拍子に指から口が離れていてよかった。そうでなければ、噛みつかれていたかも知れない。

頭をおさえて、ユーフォルがしゃがみ込んでいるのは、レアな気がする。物凄く情けない姿をする彼を見られるとは、ユズカは思っていなかった。


(この角度から上司を見ることになるとは思わなかったな。身長的に見下されても、私がユーフォルさんを見下ろすなんてないと思っていたのに。あの音からして、たんこぶできてそう。大丈夫かな?)


しゃがみ込んだままの上司を見てユズカは、そんなことを思っていた。


「ユズカ。これの在庫を確認してきておくれ。それとその前にちゃんと手当てしといで」
「あ、はい。えっと、これ、コピーしました」
「それは、あたしが預かって置くよ」
「はい。失礼します」


ユズカはすぐ様、頼まれた在庫確認のためにその場をあとにした。

本物のドラキュラのようなユーフォルの態度にドキドキしてしまったが、手当てをして在庫確認しているうちに完璧に成りきっているんだなと変な感心をしていた。


(血の匂いで即座に反応できるなんて、役になりきってて凄いな。私ほ、仮装していた時なんて、そんなの考えて動いていたことなんてないのに)


ユズカは、そんなことを思っていた。

そんなことがあったことすら、次の日にはユズカは綺麗サッパリと忘れていたが、上司の方はユズカと違い忘れるなんてできずに土下座しそうな勢いで謝罪したが、何をそこまで必死に謝ることがあるのだとユズカの方は忘れ去ったことを思い出すこともないまま、謝罪を受け取ったことで何とかおさまることになった。


(上司に土下座させたなんて、他所に広まったら、また何を言われることになるか)


ユズカが気にしていたのは、それだった。でも、そんなことを考えたのも、1回だけであとは綺麗さっぱり土下座のことも忘れたので、実際のところ何があったかを知っているのは、ことを起こした者とそれを止めに入った者だけだった。

被害にあった本人が、この調子なのだ。広まっていたら、頭を悩ませてあったことを思い出していたかも知れないが、そうはならなかった。


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