幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです

珠宮さくら

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嫌っていようとも、助けてもらったのだ。お礼くらい言わなければなるまい。


「ありがとうございます」
「いや、それより……」
「ちょっと、私が話しているのよ。ちゃんと聞きなさいよ!」
「あ?」


サントスとは、何だ。こいつ?と言わんばかりに睨んでいたが、その後ろから現れた女性が……。


「失礼。怪我はない?」
「はい。サントス様に助けていただいたので。お見苦しいところをお見せしました」
「そう。いいのよ。……あなた、この方は王太子殿下の婚約者なのよ。無礼すぎるわ。それに誰の婚約者を怒鳴りつけていると思っているのかしら?」
「はぁ? そんなの知るわけないでしょ。ヴィディヤが、王太子の婚約者なのは、何かの間違いだもの。気にすることないわ」
「……」


その物言いに女性から表情が消えた。そして、何やら雰囲気も変わって、体感温度も下がり始めた気がする。

サントスは、ヴィディヤをその女性から遠ざけるようにした。


「?」


サントスは、しっと言うように唇に指をあてた。だが、その顔は物凄く楽しそうにしている。これを止める気はないようだ。彼は相変わらずのようだ。

それよりも、ヴィディヤは見たことない女性が気になってならなかった。


「この方が、誰かも知らないの?」
「知らないわ。何なの? どいつも、こいつも、私の邪魔して」
「そう。なら、私は?」
「はぁ?! 知るわけないでしょ!」
「そう。私も、あなたなんて知らないわ。貴族に成りたての方かしら?」
「失礼なこと言わないで! 私は、公爵令嬢よ!」
「あら、そうなの。私は、隣国の王女よ」
「……は?」


流石のトリシュナも、王女と聞いて馬鹿にできなかったようだ。

集まっていた者たちも、ヴィディヤも王女と聞いて固まってしまった。ついにこの国の恥を隣国の、それも王女にさらしたのだ。顔を悪くする者ばかりだったが、サントスは楽しそうにしていた。


「それで、あなた自国の王太子殿下の従兄も知らないのね。私は来たばかりとは言え、あなたを知らずとも、自国の貴族の顔も知らないのが、公爵の令嬢だなんて、あり得ないわ」


トリシュナは、言われ放題になりながら、間抜けな顔をしていた。王太子の時でもやらかしているが、隣国の王女にまでやらかさなくてもいいのに。

そんな中でヴィディヤは、すぐに動いた。トリシュナにこれ以上、話させまいとしてのことだ。


「サントス様、ご婚約なさったのですね。おめでとうございます」
「あぁ」


サントスは、ヴィディヤの突然の祝福に苦笑していた。すぐさま、ヴィディヤは王女に自己紹介して挨拶をした。そして、婚約を祝福した。


「ありがとう。でも……」
「は? 王女が、何でこんなところにいるの?」
「トリシュナ。無礼なことをしたのだから、謝罪をしたら、どうなの?」


だが、ヴィディヤがそう言うのが気に入らなかったのか。睨みつけて、いなくなってしまった。

子供のようだ。いや、子供でももっと礼儀がある。どう育ったら、あぁなれるのやら。

ヴィディヤは、気に入らないが言い返せなくなると居なくなるのをどうにかした方がいいと思ってしまったが、あれは直らない気がする。


「申し訳ありません」
「あら、あなたが謝ることではないわ。まぁ、あの無礼者に謝罪されても許す気はないけど」
「……私、長らく幼なじみをしてますが、彼女に謝罪されたことがありません」
「そんな感じね。どこにでもいるのね。でも、そう。あれが、公爵令嬢なんて、世も末ね」


王女の言葉にヴィディヤですら、苦笑するしかなかった。

そう、世も末なのだ。公爵は、一体、なにをしているのやら。あんなのを野放しにしているのだ。苦情と抗議をしたはずなのにおかしな話だ。


「ヴィディヤ。本当に何ともないか?」
「?」
「……足、腫れてるように見えるけど」
「え?」


王女も、サントスが心配そうにするのを見て視線を下に向けた。階段を踏み外した時に捻ったようだ。


「あ、本当ですね」
「いや、ヴィディヤ。お前……」


サントスは、他人事すぎるだろうと言おうとしたところだった。


「ヴィディヤ!」
「殿下」
「お2人もいたのですね。ヴィディヤ、絡まれていると聞いた。大丈夫だったか?」


王太子は、この間のこともあり、騒ぎを耳にして駆けて来たようだ。


「足を捻ったようだぞ」
「っ、あぁ、可哀想にこんなに腫れて」


王太子は、手当てが先だとばかりにヴィディヤをお姫様抱っこして移動した。

その間に他人事だったはずが、物凄く痛いことに気づいてしまい、医者に診てもらう時には涙目になっていた。王太子は更にオロオロして大変だったが、ヴィディヤは痛みに耐えるのが大変だった。


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