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しおりを挟む(今日も、両親は騒いでるみたいね。まぁ、朝と晩くらいしか、両親が私の様子を見に来てなかったし、メイドたちがしっかりと世話してるかのチェックしかしてなかったから、あの人たちが来なくとも私は全然問題ないし、わざわざ会いたいとも思わないけど。……こんなにも我が子を他の人に任せっきりにするものなのね。両親の顔をいまいち覚えられないなんて経験、初めてだわ)
時折、思い出したかのように顔を見に来ていたが、祝福がたくさんあるとわかってから数日は両親を見かけなかったことで、何をしているかを見てはいなかったのだ。
見てはいない間は、世話係のメイドたちがアンジェリーカを世話していた。両親が何をしているかも彼女たちが世間話しているのを聞いて知ったくらいだ。
「あちらは、今日も大変そうね」
「アンジェリーカ様のお世話係で良かったわ」
「でも、祝福が5つだなんて、本当しらね」
「見た目は、とても可愛いけど、祝福がそんなにあるようには見えないけど」
「魔力も多いって言われたらしいわよ。今はいいけど、暴走したら大変そうよね」
メイドたちが、アンジェリーカがしっかりと聞いて理解していることを知らずに好き勝手なことを言っているのは、いつものことだった。
「でも、親戚だけでなくて、知り合いみんなに知らせようとしているみたいだけど、俄には信じられないわよね」
(は? 両親は、そんなことしてるの?!)
アンジェリーカは、それを聞いてムスッとしてしまった。
「あら、どうしたのかしら?」
「外が騒がしいから機嫌が悪くなったとか? でも、こんな騒ぎなんて、これから親戚たちがよったくったら、大したことないと思うくらいだけど」
「え? 親戚の皆さん、来るんですか?」
年若いメイドが、機嫌が悪くなったアンジェリーカを抱っこし始めていたが、他のメイドの言葉にそんなことを尋ねていた。それは、まさにアンジェリーカが聞きたいことと一緒だった。
「そりゃ、来るでしょうよ。信じてなくとも、様子を見に駆けつけないわけがないわよ」
「そうそう、お祝いしとくだけしとかないと出遅れるもの」
(……出遅れるって、何?)
アンジェリーカは、益々わけがわからなくなっていたが、若いメイドは他のメイドたちよりも、アンジェリーカのことを気にかけていた。
「……アンジェリーカ様のお祝いじゃなくて、自分たちに使える人材か見に来るだけってことじゃない」
(あぁ、そういうことか)
年若いメイドがぽつりと呟いた声が抱っこされているアンジェリーカにだけよく聞こえた。
そのメイドだけが、アンジェリーカのことを親身に考えてくれていた。アンジェリーカは、何とも言えない顔をして他のメイドたちが、親戚にアンジェリーカの情報を与えたら、それなりの見返りをもらえるかも知れないと言い出して、いかに自分たちの懐を潤すかで話しているのが聞こえた。
(公爵家に仕えている人間が、何を話してるんだか。ばっちり聞こえてるんだけど、色々と馬鹿にしすぎじゃない?)
誰に媚を売るかで、話していた。それこそ、売り込むものが被らないようにまでしていたが、そういうメイドたちはアンジェリーカの世話など大してしてはいなかった。
あちらは懐を潤すことから、見初められるかもしれないからと綺麗にしとかなきゃと浮かれたことまで話し始めていて、すっかりお喋りに夢中になっていた。
その間も、アンジェリーカの世話をしていたのは年若いメイドだけだった。彼女は、他のメイドたちを冷めた目で見ていたが、それに気づいてしまったのはアンジェリーカだけだった。
(私をダシにして色んな思惑が渦巻いているようね。これが、貴族なのだとしたら、馴染みたくないな)
その後、大慌てでたくさんの人たちがアンジェリーカのことを一目見ようと公爵家に親戚たちがこぞってやって来るようになった。それこそ、一目見たら、もう来なくなるかと思いきやそうはならなかったのだ。少しでも、アンジェリーカに覚えてもらおうとしている者やアンジェリーカにではなくて、アンジェリーカの両親に自分を売り込んで覚えてもらおうとしている者やアンジェリーカの祝福を見極めて、どうやって利用するかを見定めようとしている者やらが、公爵家に毎日のように顔を出すようになったのだ。
それは、アンジェリーカには煩わしくて仕方がなかった。
(安眠妨害もいいところだわ)
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