訳あり少女は、転生先でも散々な目に合う道を自ら選び続けて、みんなの幸せを願わずにはいられない性分のようです

珠宮さくら

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護衛騎士にお守りを渡してから、アンジェリーカは部屋に戻ってぼんやりしていた。騎士のことより、王子の方で思うところがあった。


(あれが、この世界の王子なの? 初対面で挨拶に来て、名乗りもしないで、言いたいことだけ言って帰って行くし。まぁ、あまりにも呆気に取られることばかりで、私も自己紹介しなかったけど、それに気づいてもいないし。そもそも、あの格好は何なの? あれが、今の流行り? だとしたら、この国も、相当よね。私なら、全力で拒否するけど、意気揚々と着ている辺り終わってるわよね)


アンジェリーカは王子と聞いて、それなりの人物だと勝手に思っていた。両親が勝手に決めた相手だということと親戚や周りが褒めちぎるような相手だということで、それなりの人物だと思っていてもよかったのだが、どうやらそれでもほんの欠片でも期待してしまっていたようだ。


(過度に期待していたわけでもないけれど、それをこんなにも下回る相手だとは誰も思わないわよね)


そんな人物の足元にも及ばなかったのだ。まだまだアンジェリーカの想像力が足りなかったようだ。……だが、そんな方向へと想像力が強化されていくのも嫌でしかない。

まぁ、元々この世界の人たちは残念な人が多すぎるのだから、そこをよくよく踏まえていれば期待し過ぎていたのかも知れない。したつもりもなかったのだが、その斜め上すぎる人物の登場にアンジェリーカはげんなりしていた。

同じ年頃の子がアンジェリーカの側にはほとんどいたことがなかった。並ぶと何かと比べられることになるため、嫌がられているのは前々から薄々感じていた。

そのため、同じ年頃の子供の基準のすべてが王子となってしまいかけていて、アンジェリーカは頭を抱えたくなっていた。


(この世界の全てが歪んでいるから、あぁなったのか。元々が、歪みきっているから、あぁなったのか。ここの世界は、おかしいわ。祝福は、そもそも自慢し合うものではなくて、感謝するべきなのだと思うのだけど。まぁ、かくいう私が過ぎたものを与えられたと思ってばかりで、満足に感謝できているとは言えないけど。……でも、誰かのために使える日がまたきて嬉しいな。あれで、よくなるといいけど)


まだ、この世界では二桁の年齢まで生きていないというのに。アンジェリーカは、神様に会いたくなってしまっていた。心の中で感謝していても、伝えきれない思いを直接、伝えたくなってしまった。特に今は、与えてくれたものを活かせた気がようやくしていた。

それでも、まだまだそんなものでは足りていないことをアンジェリーカは全く自覚してはいなかったが。人のことをとやかく言うなら、自分をもっと見て磨く方を頑張れば良かったのだろうが、何もしないで面倒ごとに極力関わらないことを頑張り過ぎているアンジェリーカは、とても大事なことに気づいていなかった。


(ここで、生き続けることの正解が、ちょっとだけ、わかった気がする。この世界で早死にしそうもないところを見るとあっているってことなのかな? それとも、祝福や魔力のおかげなのかな? まぁ、何にせよ。この祝福で誰かが苦しみから開放される手助けができるなら、それでいいや)


それが、神様が与えてくれたもののおかげだと思うと嬉しく思いつつ、十分に使えていないことにアンジェリーカは悩んでもいた。

このまま、自分の目に見える範囲だけを幸せにするだけで過ごすことが、神様の望みなのだろうかと思い始めてもいた。

そんなことを思っていても、たくさんついていた先生たちの中に誰もその答えをくれる人はいなかった。

そんなところに残念すぎる婚約者ができたことで、アンジェリーカはこの世の中に期待できることが薄らいでいくような虚しさを時折、感じるようになっていた。

そんなことをアンジェリーカが抱いていることも知らず、両親や親戚は相変わらずの浮かれっぷりを披露していて、そんな彼らを見ては、ため息しか出なかった。


(まともな人に会いたいな。でも、王子の護衛には、一人だけまともなのがいて、それだけがちょっぴり羨ましかったな。祝福がキラキラして見える人なんて、滅多にいないから、つい見てしまったのよね。でも、そのおかげで、私の祝福が少しは役に立っていたらいいのだけれど)


アンジェリーカは、そんな風に思ったが、彼の名前を聞いておけばよかったとも、その後のことを聞きたいとも思わなかった。

ただ、その護衛騎士が王子が度々公爵家に来た時に全く見かけなくなってしまい、余計なことをしてしまったのではないかと思ってからは、祝福を使うことにも、より一層慎重になってしまうようになってしまった。

良かれと思ったことで、その人が仕事を失くすことになっては本末転倒でしかないのだ。アンジェリーカは、そんなつもりではなかったのにと勘違いして後悔することになるとは、あの護衛騎士やその家族も思ってはいなかっただろう。


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