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しおりを挟むそれまでのアンジェリーカは、覚えている限りされる側だった。そう、記憶にある限りは生まれ変わるたびに新しい家族や周りに守られて生きてきた。
そんなアンジェリーカだが、無意識のうちに応えようとし続けていた。ちゃんと応えられたことは一度としてないのだから、あってないようなものだ。
そのせいで、新しい人生を終わらせる不運を巻き起こしていたのだ。そもそも、アンジェリーカのやることなすことでとんでもないバッドエンドばかりが起こっていたのだが、そんなことになっていたことにアンジェリーカは気づいていなかった。
この世界で必要とされる存在として、前の世界にいた時から呼ばれていたのも関係していたようだ。呼んでいたのは、人間ではなくてエルフだったのだろう。
ようやく長い年月、必要とされ続けた種族に会うことになったわけだ。感慨深いものは、本人が思ってるよりも大きかったが、それも感動しているからだとアンジェリーカは思っていた。
この世界に来てからも、何かをしてもらう側にずっといたのは、事実だ。たくさんのものを与えられていたのに騒がしくなるのを煩わしく思って、やりたいこともままならなかったなんて言い訳に過ぎない。
たまにする側になれていたが、それはアンジェリーカは僅かなことでしかなかった。アンジェリーカとしては、そんなもの僅か過ぎて全然でしかなかった。
(やっと、この時が来たって感じるのだから、不思議だわ。こうなることを予想してたってこと……? まさかね)
それがようやく、自分の持っているもので助けることができることになって喜んでいた。
もっとも、どういう経緯で与えられることになったものなのかを考えるとアンジェリーカの手柄では全くない。
だからこそ、アンジェリーカはこんなことをケロッと言ってしまっていた。
「別に返さなくていいですよ」
「っ、」
思わず、そんなことを言ってしまっていた。むしろ、ない頃の方が幸せだった気がしているアンジェリーカは、散々な目にあっていたはずの前の世界のことを思い出して懐かしそうにしていた。
「アンジェリーカ様」
「もとより私には、過ぎたものですから」
元より、アンジェリーカには与えられ過ぎていたものだ。そう、ずっと思っていた。それを1番有効利用できるなら、それが1番いいとアンジェリーカは思ってのことだ。
(私じゃ、上手く使いこなせてなかったものばかりだし。魔力も、抑える方が大変で本気でなんて使ったことないんだよね。というか、あれを本気で使ったら、この辺を更地にしちゃいそう。桁外れにありすぎだよね)
本音は、そこだったかも知れない。高すぎる魔力は、、湧き続ける泉の水のように溢れ続けていて、意識し続けて気を張り続けないといけないまでになっていた。
それは熟睡している間もやらなければならないのだが、そんなことをアンジェリーカが常にしていることを周りの誰も気づいてはいなかった。今、目の前にいる2人もそうだろう。
(抑え込んでいても、周りに魔力が高いって言われてるから、それを隠すのをやめたら大変なのは間違いないわよね)
それにメンフィスとエジェオが、信じられない顔をしていたようだが、アンジェリーカはそんな2人のことを見てはいなかった。彼らも、救世の乙女と呼んでいる彼女の全てをわかっていなかったのだ。救世どころか。歩く最終破壊兵器のような危うい存在が、彼女だということを。
ただ、何とも言えない顔をアンジェリーカがしていたのを見ていて、その表情と瞳を見ることになり、グッと唇を噛んだのはメンフィスだった。
「そうはいかない。私は、借りるのではなく、君に来てもらえないかと頼みに来たんだ」
「申し訳ありませんが、私はどこにも行きません」
(人間嫌いがたくさんいるところにできれば行きたくない。揉めに揉めて許可が出たところに行って何年も人間のいないところで生活するのは、こっちで針の筵のような生活と比べるとこっちがマシな気がするんだよね。人間に嫌悪感を感じてるエルフたちより、同じ人間の方がまだ怖くないはず。それに私の長年の夢を諦めたくないし)
メンフィスの言葉にアンジェリーカは即答しながら、首を横に振った。たくさんのエルフに会ってみたい気もするが、先ほどの話を聞いているとどうにも気が滅入ることになりそうなのは目に見えている。
それに時期が悪すぎる。これから、こちらで学園生活が始まるのだ。そのためにこれまでコツコツと頑張って来たのだ。ここまでこぎつけたのに無駄にはしたくない。
それが、アンジェリーカの本音であり、この世界に生まれたアンジェリーカはすっかり自己中な考え方をしてしまっていて、この世界の住人と化していることに本人は気づいていなかった。
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