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しおりを挟むこうして、アンジェリーカは12歳でエルフの国とエルフたちを救うべく、神様に与えてもらったものだと思っているが、本当のところは祝福として見えるようになり使いやすくなってるだけなものかも知れないものを迷いも躊躇いもなく、あっさりと全て貸すことにした。
その思惑も話すこともせずにエルフに丸投げしたとも言うが、それはいいように解釈された。
メンフィスとエジェオからしたら、そんなにあっさりと決断するとは思ってもみなかったことだったのは間違いないだろう。
「ありがとう。言葉にできないほど、君に感謝している。必ず、返す。私の名前にかけて誓おう。私は……」
その時に名前と身分を聞いたような気がするが、アンジェリーカは彼の名前や身分、それに容姿について思い出せなくなっていた。
不思議なことに長年、家庭教師をしてくれていた先生のことも、名前が思い出せなくなっていて、学園が始まることもあって、家庭教師を辞めることになっても、両親や使用人たちが疑問に思うことはなかった。
そんな力もエルフは有しているようだ。もしかするとアンジェリーカも、綺麗さっぱり忘れ去るところだったのかもしれないが、アンジェリーカが忘れたのは全てではなかった。
(不思議だな。でも、名前がわからなくなったところで、呼びかける距離にいるわけでもないし、おぼろげなことは覚えてるのよね。別に全部忘れても良かったのに。そしたら、私が押し付けたことも綺麗さっぱり忘れられたなんて思っているところが、最低よね)
そんなことを思っていたが、本当はアンジェリーカも忘れ去ることになっていて、持ち逃げしたなんて風に考えることは一度もなかった。
あの2人には、それに物凄く言い表せないほどの感謝をアンジェリーカに示してくれていたことをしっかり覚えていたからだ。
あれが、見せかけのものだったとしたら、アンジェリーカの見る目がなかっただけだ。そう、全てはアンジェリーカが騙されたことが悪いのだ。そのことで、彼らのことを責め立てるなんてする気にはならなかった。
そんな彼らを見送ってから、アンジェリーカは茨の道を歩むことになったが、それに理解を示してくれる人は殆どいない状況になるのも、アンジェリーカの自業自得でしかなかった。それにきちんと向き合ってこなかったアンジェリーカが悪いのだ。
アンジェリーカは針の筵で生活することを余儀なくされたが、それを選んだのは本人だ。自分が選択したことを後悔することはないと思っていたが、後悔にも色々あることを思い知ることになることまでは予想していなかった。
もっと深く考えておけば良かったのだ。アンジェリーカが気づかないうちにいつも紙一重で選択を誤ってしまっていることに気づいていたら、違っていたはずなのだ。
少なくとも、自分の近しい未来を把握できていたら違っていたのだろうが、どうにも自分の未来を祝福があっても見ることが不可能だったのか。見たくなくて見ようとしていなかっただけなのかはわからないが、アンジェリーカが思っていた方向に進むことが予想していたよりも、かなり難しいことになるとは思ってもみなかった。
それだけ、何もない状態が思っていたのと違いすぎたのだ。つまり、前の世界と同じになると思っていた今の状況が、同じではなかったのだ。
全く何もない状態が今なら、前の世界は恵まれ過ぎていたことを痛感することになった。貴族社会だからではなくて、根本的に何もない状態がどんなものなのかを知らなさすぎたのだ。
それによって、とんでもないことになるとはアンジェリーカは思いもしなかった。全てを他人任せにし過ぎたこととアンジェリーカ自身がユヴェーレンの世界に染まりきった考え方をするようになったことで、最悪の結末を迎えることになるとは誰も思っていなかった。
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