高校生の頃に同じ場所にいたことを僕だけが知っている

珠宮さくら

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「あ、それ、御当地キャラクターですね」
「え?」


叔母のところから帰る途中で、うとうとしていたら、知ってる声でそちらを見た。莉緒さんがいた。珍しい。この時間に会うとは思わなかった。


「あ、すみません」
「莉緒さんも、これを知ってるんですね」
「はい。キャラクターが可愛くてついつい集めてしまってて」
「ちなみにここのは?」
「持ってないです。私の高校は修学旅行、別のとこに来週行くんで」


マジか。

僕もは、別のところに行くと聞いて、すぐさま行動に出ていた。


「あの、頼みたいことがあるんですが」
「?」


僕は、従弟妹たちにかこつけて、自分もハマっているそれを莉緒さんに頼みこんで買ってきてもらうことにした。その分のお金は渡すし、余分に買って布教しようとしていた分を莉緒さんにあげることにした。

実物を持って、日にちを決めて会うことにまで、なって、僕的にはウキウキしていた。


「え? 3種類も??」
「県境だったのと博物館限定ものですよ」
「凄い! え? いいんですか?」
「もちろんです」
「なら、お金いいですよ」
「いや、そういうわけには」
「こんなにもらって、お金までもらえませんて」
「いえ、その、従弟妹たちがいまして、その、3個買ってく来てほしいんです」
「なるほど」


そこで、僕みたいに限定ものが、あるかも知れないからとお金を渡して、あまったら美味しいものでも食べてくれと言ったが、きっちり返すと言って譲ることはなかった。


「従弟は黄色が好きで、従妹は水色とピンクが好きなんです」
「凪さんは?」
「僕は、全色好きです」
「全色」
「はい。全色で。欲張りなんです」
「ぷっ、初めて聞きました」
「よく言われます。あー、でも、蛍光色は苦手かな」
「蛍光色は、私も苦手かも」


そんなこんなで、従弟妹たちにかこつけて、莉緒さんに頼み込むことに成功した。心の中で、ガッツポーズを取ったのは仕方がない。

布教用に多めに買っておいて良かった。園芸部の1年の女の子と副部長さんも、それをあげたら喜んでいた。

部長と1年男子は、お菓子を喜んでいたが。わかりやすいな。


「副部長。去年、買わなかったんですか?」
「去年は、知らなかったんです。ううっ、知っていたら、買っていたのにと悔しい思いをしていましたが、凪くん。ありがとう。報われました」
「それは、良かった」


流石に県境うんねんや博物館限定ものうんねんの話はできなかった。

多めに買って役に立ったようだ。母さんには理解できなかったようだ。同じものを上げる予定もないのに無駄遣いして、何やってると言わんばかりだった。

言い返したところで、喧嘩になりそうでやめたら、そこに父さんが帰って来た。

父さんにも同じ話をした。それが他のものに代わりそうだと話したら、わらしべ長者のようだと笑っていた。


「そうか。食べたらなくなるものもいいが、残るのもいいもんだよな」
「そうだよね」


ちらっと見れば母さんは、聞こえていないかのようにキッチンに移動していた。

これだから、我が家には思い出が残るものを買って来づらいんだよな。

父さんに買って来たら、母さんが拗ねるのは目に見えている。それならばと当たり障りのないお菓子しか買っては来れなかったのだ。

それを母さんは全くわかっていなかった。


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