見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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アンネリースは船酔いならぬ、陸酔いをしてダウンしていた。今後のことなんて考える余裕などなかった。


(船の上の方が、マシだった。どういうことなの。私の身体、ズレてない?!)


そのせいで、ローザンネ国の王女が死にかけたとか。物凄い病弱だとか。色んな憶測が飛び交うことになったが、それを気にしている余裕もなかった。

アンネリースは、人とズレていることの方が気になってならなかった。


(あの両親の間に生まれたのなら、普通はありえないか。……なんか知りたくなかったわ。なんか、一番苦しくて辛かった時より、しんどい。メンタルまでやられたからかしら?)


そんなことを思って、しょげていた。何に落ち込むかというと、両親とマルへリートと似ているところがあるだけで、嫌だった。

そんな風に落ち込んでしまっている姿を誤解したのは、周りだ。アンネリースの普段を知らなかったのも大きい。


「お可哀想に」
「大丈夫だろうか」


ゆっくり休んでから出発するのではなくて、アンネリースが寝込んでいるのを港の近辺の者たちのほとんどが気にかけていた。

とにかく、数日の間、今まで経験したことないほど気持ち悪くて仕方がなかった。

用意された宿の一室で、アンネリースはフェリーネに世話をやかれていた。


「アンネリース様」
「……」


フェリーネは、ぐったりしているアンネリースを心配そうに見つめていた。もはや、薬を飲んで休んでいるしかないと侍医に言われたが、その薬すら吐き気が酷くて飲めないのだ。

そうなると侍女はやることがなくて見守るしかなかった。無理やり飲ませても、吐き出してしまうのだ。そうなると、益々辛い思いをするのは、アンネリースだ。

そもそも、こんなにぐったりした姿をフェリーネは見たことがなかった。


「……船に戻りたい」
「アンネリース様。気をしっかり持ってください」


船の上に戻ったらマシになる気がして、そんなことを言っていた。フェリーネは、それを思いとどまらせるようなことをしたのは、自分が船に戻りたくなかったのが大きかったが、それをいつもなら見抜くアンネリースがぐったりしていて、話が続くことはなかった。

だが、それを侍医は、部屋の隅で聞いていて、ローザンネ国を恋しがって帰りたがっていると誤解した。

帰りたいとは一言も言っていないのだが、侍医は国を離れて苦しい思いをして、故郷が懐かしくなっているのだと思ってもいた。

そっと侍医が、部屋を出ると扉の外で護衛していたエデュアルドが話しかけた。その顔は、心から心配している顔をしていた。

その容姿だけで、女性がキャーキャーと騒ぎそうな憂い顔をしていた。何でも様になる者がすると違う。


「侍医殿。アンネリース様のお具合は?」
「……お可哀想に。国に帰りたがっておられます」
「っ、」


エデュアルドは、それを聞いて眉を顰めた。船旅を終えて、具合を悪くなったのに帰りたがるほどなのだ。護衛長は、何とも言えない顔をした。

この国に着いた途端、具合を悪くさせてしまっているのだ。船旅を共にした者たちも、気にしていた。

エデュアルドは、アンネリースという王女がどんな方なのかを知るために彼らに聞いて戻って来たところだった。

粗末な食事に文句も言わず、侍女が具合を悪くしてしまって、ずっと看病していたようだ。陸に上がってから、具合を悪くさせたのだから、かなり無理をしていたのだろう。


「お姫様だから、もっとわがままを言われると思ってたんですけどね。そんなの一言も言われませんでしたよ」
「そうそう。俺らと同じのしかなくても、怒りもしねぇでいい人だ」
「それも、侍女の具合を心配して、自分も具合悪いの隠してたなんて、ちっとも気づかなかった」
「俺、礼を言われやした」
「っ、」
「は? 何でだよ」
「っ、あ、謝ってばっかりいたんで。気にかけてくれたみたいで」


「そんなことないわ。ありがとう」


そんなことを言うと他の船員も、自分も言われたと話しだした。そうなると礼を言われなかった方が少なかった。


「邪魔になると思って近づかないでいたからな」
「んなに気さくな方なら話しかけりゃよかった」


船に乗っていた面々は、アンネリースのことを心から心配していた。部屋にいてくれと言えば、ずっと大人しくしていて、心配になるくらいだったが、出てもいいと言われない限り、部屋から全く出なかった。

それを聞いて多くの者が驚いていたが、アンネリースはそういう王女なのだろう。何日も狭い部屋に押し込められて、侍女は具合を悪くして話し相手にもならないのだ。やることが制限される中で、

エデュアルドが話を聞く者、こぞって、悪く言う者は1人もいなかった。

その話を侍医にもエデュアルドはした。


「そうですか。お可哀想に。吐き気止めも、あの調子では吐き出してしまわれる」


侍医は、何かいいものがないかと探しに探したが、良いものは見つからなかった。

そのため、当初の侍医の予定よりも大幅にゆっくりと王宮に向かうことにした。

これ以上の無理をアンネリースにさせられないと思ってのことだ。無理をさせれば、蓄積されていってしまう。ただですら、ここから王宮までは長いのだ。

それが、国王の思惑なのだとわかっているのは、この2人くらいだったが、仕方がない。


「そうだな。それが一番いいな」


侍医の言葉にエデュアルドも、すぐに同意した。

そんな風に思われていることに寝込んでいるアンネリースに何をしたらいいのかとフェリーネが気が動転している状態でいたため、誤解が解けることはなかった。


「アンネリース様」


フェリーネは、母を見ているようで、なおさら辛かった。そんな思いをしているとも知らず、アンネリースはぐったりして、そのうち悪夢に魘されて昔のことをあれこれ思い出すまでになることに気づかなかった。


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