見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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「職を辞したと?」
「えぇ」


公爵は聞き逃すことはなかった。かと言って、公爵に職がないかとは、アンネリースは聞かなかった。


(下手なこと言えないわ。さて、どうしたものか)


公爵ではない。リュドに下手なことは聞かせられないと思ってのことだ。この中で一番の曲者は、彼だ。人畜無害のようでいて、全くそんなことはない。

こんなに油断ならない人と対峙したことはない。


「そうですか。オリフィエル」
「腕は中々、勘は上々。でも、知識はいまいち。運はいい」
「「いや、腕はまだまだです」」


オリフィエルの言葉をそこだけ2人の護衛は訂正した。

それにアンネリースは、こんなことを思った。


(オリフィエルの評価は、そうなのね。……私とは違うみたい)


ラウレンスとヒルベルトのことを気に入ってしまっているせいか。アンネリースの評価はもっと高めだ。


「それと家も捨てて来てる」
「そうか。姫君の護衛は、陛下が選ばれていますが、お連れになったのなら、そちらでしごいてもらうのもよろしいかと。それと姫君付きの専属の護衛が無職なのはまずい。武官の仮試験でも受けられるように手配しましょう。後ろ盾がないのも心許ない。よければ養子先を見繕いましょうか?」
「……よろしいのかしら?」
「息子が世話になって、こうして戻って来ることになった。あなたが出会ってくれなければ、まだ山で遊んでいたことでしょう」


山賊を山遊びに分類しているようだ。それを聞いて、リュドの気配が少し変わったが、すぐに何事もなく戻った。


(今のは何かしら? それは後ね)


アンネリースは、公爵の言葉を護衛たちに丸投げした。


「そう言ってくれているけど、2人はどうしたい?」
「姫様に恥をかかせられないので、それなりに見えるようになりたいです」
「あの、試験って、筆記とかですか? 俺、文字の方は……」
「実技のみもある」
「なら、やってみたいです。でも、養子は……」
「あなたが、したいことをしていいのよ」
「……いいんですか?」
「家を出て、喜んでいるのに新しい家族と会えなかったら、もっと悲しい思いをするのは、あなただもの。家族がほしくなったら、奥さんをもらえばいいわ」


アンネリースの言葉にヒルベルトは、頷いた。


「ラウレンス。あなたも、模範的な答えをしなくていいのよ」
「……すみません。武官の試験だけがしたいです」


この2人と話してみて、アンネリースは彼らの扱いがよくわかった。馬鹿ではないのだ。


「悪い。父上。知識は、ザルじゃなかった」
「そのようだ。姫君は、よくわかっていらっしゃる。武官の試験のみを手配致します」
「よろしくお願いいたします」
「2人共、気が変わったら言ってくれ。君たちのような息子を欲しがっているところは、色々ある」


ラウレンスとヒルベルトは、それに深々と頭を下げた。それだけで終わらなかった。公爵は、本当に気に入ってしまったようだ。


「何なら、いい嫁もいるから、紹介できるが?」
「「え?」」


スヴェンは、この2人をここに残らせたくなるほど気に入ったようだ。


(まぁ、わからなくもないけれど。でも、取られたくはないのよね。私のなのによく言うわ)


アンネリースは、実力主義だとオリフィエルが言っていた意味がわかってきた。ほしいものは、実力のあるものが総取りする。そんな感じだろうか。


「公爵。2人には、フェリーネをすすめているところなの」
「おや? そうでしたか」
「アンネリース様」


フェリーネは、己の名前が出たことにびっくりしている感じはなかった。困惑している方が強い。だって、フェリーネには話していない。


「あら、だって、この2人ほど、あなたを理解している方はいないわ。それに養子にならないでいるのも、そういうことでしょうし」
「「姫様」」


ラウレンスとヒルベルトの声が重なった。


(本当に双子みたい)


「あら、違った?」
「「……違いません」」
「っ!?」
「それに私、この2人がとても気に入ったの。誰かに取られるのなら、あなたがいいわ」
「っ、」


アンネリースが、そこまで言ったのは、公爵に対しての牽制だ。

オリフィエルは、アンネリースが気に入ったと言うのに眉をこれでもかと顰めたが、アンネリースが夫に選ぶことがないと言うのでホッとしていた。

リュドは、それを気配をなくして見ていた。


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