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第1章
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しおりを挟むわざわざ石を集めてはポケットに忍ばせて、それを先生方に見つかるようになると色んなところに隠すようにまでなったのは、すぐのことだった。
そこまでして、人に石をぶつけたいのかと呆れながら、彼のやりたいことがいまいち琉斗にはわからなかった。周りからも再三言われても、頑なにやめようとはしなかったのだ。
そのため、彼の母親は連日のように学校に呼ばれているが、彼が石を投げつけるのをやめることはなかった。誰も彼にわざわざ近づこうとしていないのに。彼の方が、難癖をつけて話しかけて来るのだ。
そのせいか。すっかり、学校で彼を知らない者はいなくなっていた。色々と言われていても、彼は学校には来ていた。クラスでは、完全に孤立してしまっていても、授業にも出ていた。休みになるとふらっと出て行くのだ。先生が見ているのだが、それをまくのが上手くなっているようで、1人で歩いている時は要注意人物となっていた。
その日、今日もどこかであの男の子がやらかしてそうだなと思いながら、琉斗は廊下を歩いていた。琉斗は、未だに彼から石を直接投げつけられたことはなかった。
一番投げつけられているのは、有紗だと思っている。本人は、それを先生に話してはいないようだ。
「あ、琉斗くん」
「ん? 有紗ちゃん。……それ、あいつ?」
「え? あ、これは、転んだの」
「石、投げられたんだね」
「あたってないよ。びっくりして、転んだだけだから」
「……」
だから、悪くないわけではないはずだ。
すると外を歩いている彼を見つけた。きょろきょろと辺りを見渡して、こそこそと石をポケットにしまおうとしているのが見えた琉斗が、窓を開けて怒ろうとした時だった。
「っ!?」
あちらが、琉斗たちに気づいたことで、隠していた石ではなくて、壊れたブロックをあろうことか、投げつけて来たのだ。
「っ、」
「危ない!」
咄嗟に琉斗は、有紗を庇うようにした瞬間、ガラスが割れて琉斗たちに降り注ぐことになった。
重いブロックが2人の近場に落ちる音がして、琉斗はゾッとした。
(あんなの当たってたら、死んでるとこだ。何、考えてるんだよ!!)
「琉斗くん……?」
琉斗は、怒りが爆発しそうになっていたが、名前を呼ばれてハッとした。自分よりも、有紗を心配したのだ。
有紗を庇ってガラスが腕に刺さっているというのに琉斗は、有紗の身体に怪我がないかを見るのに必死だった。
「っ、有紗ちゃん、怪我してない?」
「あ、そんな、やだ」
「有紗ちゃん……?」
彼女は、琉斗の腕から血が滴るのを見て絶叫した。パニックを起こした彼女の中から何かが爆発する気がした。それは、琉斗には馴染み深くなっているものだった。
琉斗にはよくわかっていた。感情が爆発するととんでもないことが起こるのだ。有紗のことが気になっていたのは、自分に似ていたからのようだ。
同じ年頃で、同じように爆発しそうな何かを持っていて、それに彼女はずっと怯えていたのだ。彼女だけでなくて、その母親も。だから、気になって仕方がなかったのだ。
だが、今はそんなことを納得している場合ではなかった。やっと繋がったことに喜んでいる場合ではなかったのだ。自分と同じものを抱えていて、それを抑えきれなくなってしまったのをどうにかしなくてはならなかった。
その瞬間、学校中のガラスが割れることになるとは、誰が想像できただろうか。それができたのは、琉斗だけだったはずだ。
(まずい!!)
有紗を止めなければと琉斗は、すぐに彼女を抱きしめていた。でも、全てが遅すぎたようだ。
琉斗は己を抑え込むのに常に力を使っている状態で、有紗を抑え込もうとするのに時間が足りなかったのだ。
そう、できないわけではなかったことが、そもそもおかしいのだが、間に合わなかっただけなのだ。
それによって、学校中のガラスが割れることになり、学校を中心にして何キロにわたって、怪我人どころか。死人が出る状況になったのは、すぐのことだった。
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