最愛の亡き母に父そっくりな子息と婚約させられ、実は嫌われていたのかも知れないと思うだけで気が変になりそうです

珠宮さくら

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ヨランダは、2年ほど前に最愛の母を亡くした。ひとりっ子で、他に兄弟はいない。

母親が亡くなる前から、ヨランダが隣国に留学したがっていたこともあり、姉妹のようにヴァランティーヌとヨランダの母が仲良くしていたこともあり、娘が留学することになったら頼むとお互いが嫁いだあとも変わらず手紙のやり取りをして、そんな話をしていた。

ヴァランティーヌは、その手紙が徐々に間があき始めたことに忙しくしているせいだと最初はあまり気にしていなかった。

でも、その手紙の文字が代筆されるようになった。代筆をしていたのが、ヨランダだ。

最初は、利き手を怪我して、しばらく娘に代筆を頼むことにしたような内容だった。

それが待てど暮らせども、怪我がよくならないようで代筆が続き、そのうち怪我ではなく病気が理由で字を書けなくなっているとわかり、その後、亡くなった。

夫妻では出席が難しく、ヴァランティーヌだけが葬儀に出たが、その頃は、子爵令嬢らしくしていた。母を亡くしたヨランダは気丈に振る舞っていた。

まさか、そのあとで1年も経たずに子爵であるヨランダの父親が再婚して、義母と義姉に虐げられる日々を送っているとは誰が思うだろうか。

アポリネール子爵は、外面が良くて再婚するまでにその2人を住まわせていたのも、上手く誤魔化していた。

妻を亡くしているのに早く再婚するとなっても、1人娘のヨランダを家に1人で置くのが心配だとか、何とか。思ってもいないことを口にして、周りの同情を誘って再婚した。

自分のためでなく、1人娘のヨランダのことを考えてのこととして、これまた外面のよい再婚相手と連れ子が上手く周りに溶け込んだことで、そちらを悪く言う者は、ほとんどいなかった。

それこそ、母方の親戚たちですら、仕方がないかのように思うほど巧妙だった。


「素敵なお父様ね」
「……」
「あそこまで、娘のことを考えてくれる方は、そういないわ」


親戚たちや周りにヨランダは、そんなことをよく言われた。

そう言う人たちは、母をよく思っていなかった人たちが多かった気がするが、言われすぎてヨランダは微妙な顔しかできなかった。

ヨランダにとって、素敵な父とはどうしても思えなかったのだ。それと再婚相手の義母となった人も、義姉もそうだ。ヨランダには、全く良さがわからなかった。

そんなこともあり、ヴァランティーヌは信じていた。母を亡くしても、あちらで幸せに暮らしていると。

ヨランダとは、ヴァランティーヌは手紙のやり取りを続けていたが、再婚したことも、使用人のように扱われていることも何も書かれてはいなかった。

ただ、留学できることになったとなり、ヴァランティーヌに会えるのが待ち遠しいとしか書かれていなかったのだ。

その待ち遠しい中に父親に無視され、義母と義姉に使用人のように扱われていることなど、どこにもそれを悟らせるものはなかった。 

数週間前だ。手紙が届いて、留学が決まったと手紙が来て、ヴァランティーヌのみならず、クロードとエミリアン、何なら使用人たちも浮かれていた。

この時に迎えに行って驚かせようとしたかったが、仕事が忙しかったのとヴァランティーヌも予定があって行けなかったのだ。

それが、悔やまれてならない。仕事だとか、都合がつかないなんて言わずに夫妻のどちらかが、子爵家に行っていれば、嫌でも耳にしていたはずだ。

どんなに外面がよかろうとも、娘を勘当したのだ。

あちらで、留学生となった者が色々と言われていようとも、全ては妬みと嫉妬でしかない。頭の良い者を好まないのだ。特に女性が、婚約者よりも頭が良いが、気に入らない者が異様に多い。

アルカン国とは、真逆なことになっていて、何ならそこそこな子息よりも下の成績しかない令嬢を好む傾向が強いようで、そのせいで隣国との学力の差は開く一方になっているが、それを誤魔化すように留学したがる者を婚約者目当てだのと揶揄する者も多い。

そのせいで、ヨランダは学園でも誤解されていたのもあり、義姉がそこにつけ込んで味方を増やすことになるとは思いもしなかった。

そもそも、ヨランダが留学することを夢見ていたのと周りが留学生に抱くものに大きな食い違いがあることを知らなかった。

ヨランダは、純粋に勉強がしたかった。ガイエ国では受けられない授業があり、昔から家庭教師たちが教えることでは物足りなさを感じていたヨランダには、アルカン国はもっと難しい勉強ができる夢の国だった。

そこで勉強したいだけなのに。そんな夢を持つ令嬢などガイエ国では理解する者が少ないため、婚約者がいるのに男漁りに行きたがっているように一部の者からは思われていた。

そのため、友達と呼べる令嬢がヨランダには学園にいないようなところがあった。そこに義姉がつけ込んで、ヨランダのあることないことを吹き込んでやっぱりそうなのかと思われていったに過ぎないのだが、ヨランダは留学して勉強できることしか考えておらず、そのために勉強していてガイエ国では、そんな頭の良すぎる令嬢を息子の婚約者にするのに難色を示す者は少なくなかった。

息子が、より馬鹿に見えると思っているのだが、そうならないように息子にもっと頑張れというより、婚約者となった令嬢の方に色々言うのが普通になっていた。

そのため、ヨランダも婚約者や婚約者の母親から、色々言われていた。嫌味がほとんどだったが、その嫌味に全く気づいていなかった。

彼の父親は他とは違い、才女のヨランダを歓迎していた。それが気に入らないのだが、そこにも全く気づいていなかった。


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