最愛の亡き母に父そっくりな子息と婚約させられ、実は嫌われていたのかも知れないと思うだけで気が変になりそうです

珠宮さくら

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アルカン国では、ヨランダと最初に会った王太子は、ヨランダが元気になって学園に通うようになっても会えずにいた。

いや、ヨランダのみならず、王太子は体調不良を理由に執務もできていない日が続いていた。

それこそ、寝ても覚めても、幽霊を見たがっていたはずの王太子は、侯爵家に行きたがって出会った頃の彼女のような姿になっていた。そうなるのは、ヨランダとわかれて、すぐだった。

もっとも、ヨランダの姿を見ているものは限られていて、学園に通うようになった今では、そこまでだったのかと驚くくらい元気になっていた。

今の彼女が幽霊に見えるなんて者はどこにもいなかった。少し痩せているのが気になるくらいで、肌艶もよく、髪も艷やかになっていた。子爵家にいた時よりも、女子力は上がっていた。すっかり見違えるほどになっていた。

それも、ヴァランティーヌが使用人たちと張り切って、あれやこれやと世話をやくおかげだ。ヨランダは、それまで勉強一筋だったが、再従兄のエミリアンと養父のクロードに褒められて嬉しそうにしながら照れていた。

ちょっと前にしつこくしていた子息のところに苦情と抗議をして、ギヤギレされたりして、落ち込んでいたが、今はそれもなくなった。

もっとも落ち込んでいたというより、子爵家やあちらの国にいる時のようだと思っていただけだった。

だが、そんなこと知らない面々は、エミリアンがよくヨランダと一緒にいる令嬢にそのことを伝えていて、共有されていて、二度と変なのを近づけさせないと他の令嬢たちと団結していた。

彼女の婚約者も、エミリアンから聞いて物凄く怒っていた。この国の子息にそんなのが入ることを嘆いてもいた。

そこまででなくとも、王太子は変わっているのだ。だが、体調不良で学園に来ていないこともあり、そちらの心配はいらないと油断していたのもあったようだ。

なにせ、その王太子らは幽霊を見るために色んなところに行っていた。幽霊が出没したところに行っていた王太子は、毎回見れなかったと残念がっていて有名だった。

それこそ、見えなかったのは、運が良かったからに他ならなかったことを彼は知りもしなかったし、周りは知りたくもなかったことだった。

そんなことになると知らなかった王太子は、ヨランダの忠告を無視して、寄り道をしてしまい、それから色々と見えるようになっていた。

そこから、こんなことを思った。見たかったものが見えるようになったのにそれを見えなくしたいと思っているのだ。

それこそ、幽霊はわざわざ見に行かずとも見える者には、どこにでもいるなんて思いもしなかったのだ。


「彼女は、何か見ていたのかもしれないな」


だが、王太子は見えるようになったあとのことを全く考えていなかった。彼は、気が変になりかけていた。どうしたらいいのかとすがったのが、あの時に出会ったヨランダだった。

学園に通い始めたと耳にして、会いに行こうと思ったのだ。そんな彼女は、彼に声をかけられてきょとんとした。


「えっと、どちら様でしたっけ?」
「え?」


まさか、どちら様かと聞かれるとは思いもしなかった。前に会っているのだ。

ヨランダの側にいた令嬢は、ぎょっとしながらも耳元でそっと教えた。


「ヨランダ様、王太子殿下ですよ」


そう話しながら、着ているもののおかげでわかったが、美青年だったはずなのに見かけないうちに一気に老け込んで見えた。それこそ、本当に本人なのかと疑心暗鬼になるほどだった。


「あぁ、王太子殿下でしたか。失礼しました。初めまして、ヨランダと申します」
「いや、待て! 会ったことがあるだろ!」
「え?」


間に入って王太子だと言ってくれた令嬢も怪訝な顔をした。王太子は、ずっと体調不良で休んでいたはずで、どう見ても今も体調がよろしくないように見える。

だからこそ、彼女と会ったことがあるわけがないと思ったのだ。

必死になって、会ったことがあると言ったところで、ヨランダが目の前の人物を思い出すことはなかった。なにせ、見た目がすっかり様変わりしているのだ。美形だったはずだが、目の前の方は別人にしか見えない。側にいる令嬢たちですら面影もないほどだ。


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