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しおりを挟むシュリティの両親は、王女のことがあって手のひらを返して来たが、チャーヤを勘当したことを取り消すことだけはしようとしなかった。
そのため、シュリティとラケシュは親戚のところに養子に行くことを決めた。養子先の親戚は、シュリティたちがどんな目に合っていたかを話していた。
更には、そこには既に勘当された姉のチャーヤが養子になっていた。
「シュリティ、ラケシュ」
「お姉様」
「姉さん」
勘当されていた姉は、やつれていた。王女が何をしたかを両親にしても、チャーヤの勘当をなかったことにするどころか。何もしようとしなかったこともあり、シュリティたちを養子にしてもいいと言う親戚に姉のことを探してもらっていた。
そして、養父母たちはチャーヤの今回のことで慰謝料をチャーヤに渡さないのは、どうなのかとアガルワル伯爵家に言ってくれて、他の貴族も自分たちがそのお金を好き勝手に使おうとしていると耳にしたとして、あれこれ言われるのに慌てて、預かっていてだけのように取り繕っていた。
「っ、2人共」
姉は話を聞いたようで、弟妹たちに久しぶりに会えたのもあって、シュリティたちを抱きしめるなり大泣きした。それにつられてシュリティたちも泣いた。何なら、養父母たちも泣いた。
「お姉様、もう二度と会えないかと思ってしまいました」
「私もよ」
ひとしきり泣いてから、チャーヤは本当にマヘンドラのことが好きだったようだ。彼の心配をしていた。
そのため、知っていることを養父母やシュリティたちが話した。
彼が勘当された実家にも、王女が何をしていたかを伝えたが、シュリティたちの実の両親のような反応だったため、彼の親戚に話すとマヘンドラを養子にするために動いてくれることになった。
「そう、あの方も養子になれたのね」
自分だけが貴族に戻れたのではないとわかって、ホッとした顔をしていたが、それはマヘンドラの方も同じだった。
再会した2人は、自分たちが勘当されてから散々なことになったことより、相手の心配をしていた。
「あの2人、そっくりみたいね」
「そうだね」
シュリティたちは、弟妹たちの存在など忘れて、自分たちの世界を築く早さに苦笑してしまったが、マヘンドラはシュリティたちに気づくと2人のおかげだととても感謝してくれた。
そこから、2人共、婚約することになるまで、すぐだった。何ならシュリティとラケシュが義兄と呼ぶのにマヘンドラな照れていて、チャーヤも気が早いかのようにしながら満更ではない顔をしているのを見て、養父母たちも婚約するのに反対することはなかった。
その頃にはシュリティとラケシュも姉と同じところに養子になっていて、アガルワル伯爵家から縁を切ることになっていた。
シュリティはともかく、ラケシュは跡継ぎなのだからとシュリティたちの母が渋っていたが、シュリティたちの父が浮気していて子供ができるとわかって、それが男の子だとわかったことが大きかった。
浮気をしていると知って、母の方は跡継ぎうんねんよりも、離婚して慰謝料を多めにもらうことばかり考えるようになった。すぐさま、離婚することにしたため、子供たちのことは、どうでも良くなったようだ。
とんでもない親がいたものだ。
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