45 / 112
第1章
45
しおりを挟む
プリムローズは、姉を亡くしてショックを受けている令嬢を演じるはずだった。ない頭でも、それを演じたら、みんながいっぺんに味方になると思ってのことだ。彼女にしては、考えている方ではあった。
だが、味方してくれていると思っている時点で、その前まで味方ではないとわかっていたのかと言うとそうではなくて、言葉のあやでしかなかない。
もっとも亡くすも何も、亡き者にしたのは彼女自身なのだが、プリムローズは上手くいきすぎたことが嬉しくなりすぎて、にこにこと笑顔になっていた。そのまま、姉の葬儀に出たのだ。目立たないわけがない。
「何、あれ」
「可哀想に。流石に姉が亡くなっておかしくなったんだな。無理もない」
「前からおかしかったけど、そう。流石にウィスタリアがこんな形で亡くなったら、ショックよね」
色んな人たちに噂以上に頭をおかしくしてしまったと憐れんだ目で見られることになったり、それを見て益々、泣く者もいた。
プリムローズは、周りに盛大に勘違いされていることに全く気づくことはなかった。
彼女の頭の中は、ソレムと幸せいっぱいに過ごす妄想ばかりで、現実を全く見ていなかった。そんな令嬢に妄想通りの未来が訪れることはなかった。
そんな娘を両親だけが怪訝な顔をして見ていた。これまでのことがある。姉の死でおかしくなるなど、あり得ないと思ってのことだ。
だが、母方の祖父母だけがプリムローズを可哀想にと抱きしめていた。それは異様な光景だった。
祖母は泣き真似をしているが涙が一切出ないままだった。抱きしめられる孫は、にこにことしていて、時折ニヤニヤした顔をして、それには会場全体の人たちがドン引きした。
「可哀想に壊れたな」
「あんな顔、まともな令嬢なら人前でできないよな」
「泣きたいのを彼女なりに我慢しているのね」
「無理することないのに」
これまた、プリムローズは勘違いされていた。
ウィスタリアが人前ではやるなと言った顔をして、気を変にしたと思われるのにぴったりな顔だったのは、確かだ。それでも、まともじゃなくなった状態だからと思われていた。
そんなことがあって、数日してプリムローズは色んな人に心配されていた。
葬儀に来ていなかった者も、その時のことを聞いて、そんな馬鹿なと思っていたようだが、みんながそういうのだからとプリムローズは、色んな人たちに気にかけられていた。
全てが勘違いなのだとも知らずにみんなおかしな格好をしているのも、悲しみをごまかそうとしているのだと普段を知らない者たちには勘違いされるほど、いいようにとられていた。
一方のソレムは、ウィスタリアが死ぬ前、婚約破棄した日に婚約しようとしていた令嬢に声をかけていた。
その令嬢には既に婚約者がいたことを知らなかった。その令嬢が駄目だったとしても、ソレムの頭の中にプリムローズを婚約者にしようとはほんの一欠片も考えていなかったことをプリムローズは知りもせず、理解すらできなかった。
姉の葬儀を終えて、数日は大人しくしていたが、待てど暮らせども、ソレムが自分のところに来ないのだ。
それどころか。他の令嬢のところに行って婚約しようとしているとわかって、プリムローズは眉を顰めずにはいられなかった。
「何で、他の女のところに行くのよ」
それどころか。ウィスタリアに妹がいることは知っていても、その妹の名前が何だったかすら、ソレムは残念なことに知らなかったというか。覚えてすらいなかった。
プリムローズの名前は知らずとも、顔を見て思い出したことがあるとすれば、物凄く馬鹿な令嬢だと周りから言わていることくらいだった。
それを覚えているだけでも、彼にとっては凄いことだったが、そんな覚えられ方をしている方はたまったものではない。
それこそ、ソレムには他の人なら言われたくないところだが、唯一言われる相手がいるとすれば、プリムローズしかいないくらい。周りからすれば、どっちも、どっちだったが、本人たちからしたら、そうではなかった。死活問題だった。
そう、ソレムは頭が空っぽに近いというのにプリムローズのことをあり得ないほどの馬鹿な令嬢だと言うことは知っていたというのだ。皮肉なものだ。
「まぁ、何でもいいが。私は忙しいんだ。気安く話しかけるな」
「っ、」
そんな覚え方しかされていなかったことすら知らなかったプリムローズは、あろうことか。その手で姉を殺したのだ。
ソレムと一緒になって誰よりも幸せになるに相応しいのは自分しかいないと思って、そんなことを平然とやったというのにだ。
そして、両親も嫌な予感をしながら隠蔽することに手を貸した。亡くなった娘を守るためにしたかのように見せて本当に守ろうとしたのは、家の存続だった。
そう思いたくなくて、出来の悪い娘のやらかしたことをいつものようにもみ消しただけだと思いたかったようだ。
それだけで、両親を苦しめるには十分だった。それなのにプリムローズは、そんな苦しみを感じることすらなかった。
だが、味方してくれていると思っている時点で、その前まで味方ではないとわかっていたのかと言うとそうではなくて、言葉のあやでしかなかない。
もっとも亡くすも何も、亡き者にしたのは彼女自身なのだが、プリムローズは上手くいきすぎたことが嬉しくなりすぎて、にこにこと笑顔になっていた。そのまま、姉の葬儀に出たのだ。目立たないわけがない。
「何、あれ」
「可哀想に。流石に姉が亡くなっておかしくなったんだな。無理もない」
「前からおかしかったけど、そう。流石にウィスタリアがこんな形で亡くなったら、ショックよね」
色んな人たちに噂以上に頭をおかしくしてしまったと憐れんだ目で見られることになったり、それを見て益々、泣く者もいた。
プリムローズは、周りに盛大に勘違いされていることに全く気づくことはなかった。
彼女の頭の中は、ソレムと幸せいっぱいに過ごす妄想ばかりで、現実を全く見ていなかった。そんな令嬢に妄想通りの未来が訪れることはなかった。
そんな娘を両親だけが怪訝な顔をして見ていた。これまでのことがある。姉の死でおかしくなるなど、あり得ないと思ってのことだ。
だが、母方の祖父母だけがプリムローズを可哀想にと抱きしめていた。それは異様な光景だった。
祖母は泣き真似をしているが涙が一切出ないままだった。抱きしめられる孫は、にこにことしていて、時折ニヤニヤした顔をして、それには会場全体の人たちがドン引きした。
「可哀想に壊れたな」
「あんな顔、まともな令嬢なら人前でできないよな」
「泣きたいのを彼女なりに我慢しているのね」
「無理することないのに」
これまた、プリムローズは勘違いされていた。
ウィスタリアが人前ではやるなと言った顔をして、気を変にしたと思われるのにぴったりな顔だったのは、確かだ。それでも、まともじゃなくなった状態だからと思われていた。
そんなことがあって、数日してプリムローズは色んな人に心配されていた。
葬儀に来ていなかった者も、その時のことを聞いて、そんな馬鹿なと思っていたようだが、みんながそういうのだからとプリムローズは、色んな人たちに気にかけられていた。
全てが勘違いなのだとも知らずにみんなおかしな格好をしているのも、悲しみをごまかそうとしているのだと普段を知らない者たちには勘違いされるほど、いいようにとられていた。
一方のソレムは、ウィスタリアが死ぬ前、婚約破棄した日に婚約しようとしていた令嬢に声をかけていた。
その令嬢には既に婚約者がいたことを知らなかった。その令嬢が駄目だったとしても、ソレムの頭の中にプリムローズを婚約者にしようとはほんの一欠片も考えていなかったことをプリムローズは知りもせず、理解すらできなかった。
姉の葬儀を終えて、数日は大人しくしていたが、待てど暮らせども、ソレムが自分のところに来ないのだ。
それどころか。他の令嬢のところに行って婚約しようとしているとわかって、プリムローズは眉を顰めずにはいられなかった。
「何で、他の女のところに行くのよ」
それどころか。ウィスタリアに妹がいることは知っていても、その妹の名前が何だったかすら、ソレムは残念なことに知らなかったというか。覚えてすらいなかった。
プリムローズの名前は知らずとも、顔を見て思い出したことがあるとすれば、物凄く馬鹿な令嬢だと周りから言わていることくらいだった。
それを覚えているだけでも、彼にとっては凄いことだったが、そんな覚えられ方をしている方はたまったものではない。
それこそ、ソレムには他の人なら言われたくないところだが、唯一言われる相手がいるとすれば、プリムローズしかいないくらい。周りからすれば、どっちも、どっちだったが、本人たちからしたら、そうではなかった。死活問題だった。
そう、ソレムは頭が空っぽに近いというのにプリムローズのことをあり得ないほどの馬鹿な令嬢だと言うことは知っていたというのだ。皮肉なものだ。
「まぁ、何でもいいが。私は忙しいんだ。気安く話しかけるな」
「っ、」
そんな覚え方しかされていなかったことすら知らなかったプリムローズは、あろうことか。その手で姉を殺したのだ。
ソレムと一緒になって誰よりも幸せになるに相応しいのは自分しかいないと思って、そんなことを平然とやったというのにだ。
そして、両親も嫌な予感をしながら隠蔽することに手を貸した。亡くなった娘を守るためにしたかのように見せて本当に守ろうとしたのは、家の存続だった。
そう思いたくなくて、出来の悪い娘のやらかしたことをいつものようにもみ消しただけだと思いたかったようだ。
それだけで、両親を苦しめるには十分だった。それなのにプリムローズは、そんな苦しみを感じることすらなかった。
48
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる