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第1章
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しおりを挟む彼は、それをウィスタリアから聞いていたはずだが、覚えてはいなかった。何せ、つい最近同じようなことをして、会っているはずなのだが、2人共、綺麗さっぱり忘れていて、たまたまそれを2度目撃することになった者は、自分の頭がおかしくなった気がした。
「どうした?」
「いえ、あの2人、この前も同じようなことをしていたのを見たはずなんです」
「は?」
「あら、あなたも? 私もよ」
「俺もだ。夢でも見たのかと思ったが、現実だったみたいで安心していいのか?」
「どうかしら。凄く変な気分だわ」
「頭おかしくなりそう」
「大丈夫か?」
そんな周りのことなど、何のそので、ソレムの言葉に激怒したのは、言われ慣れていないプリムローズだ。
姉のおかげで、周りが普通に接しているが、そうでなければ相当なのだが、それをわかっていないプリムローズは、怒りのまま自分が姉を殺したことを暴露したのだ。
そこまで言う必要などなかったはずだが、彼女はサラッと白状したのだ。もっとも、何が悪いかもわかっていないのだから、こうしてポロッと言うのは、どのタイミングでもあったはずだ。
「酷いわ! あなたと婚約できると思って、お姉様には死んでもらったのに。これじゃ、意味がないじゃない!」
「っ、!?」
それが聞こえた面々は、自分の耳を疑わずにはいられなかった。そんなことを言い出すとは、誰も思わない。流石のソレムも、人殺しなんてしてまで奪おうとは思っていなかった。
「は? お前、実の姉を殺したのか?」
「そうよ! それなのに最悪すぎる。何だか、将来を有望視されているよ。こんなのと婚約したがっていたなんて馬鹿みたい」
「だから、そんな奇妙な格好をしていられるのか。頭がおかしすぎるぞ」
ソレムが、まともに見えた。
そんな話を大騒ぎしながらしたせいで、プリムローズが何をしたかを知ることになるまで大した時間はかからなかった。
「実の姉を殺すなんて」
「そこまでするなんて、なんて恐ろしいのかしら」
「信じられない。あんなのをウィスタリアの代わりになればと気にかけていたなんて」
たくさんの人たちが、プリムローズがしたことを知ることになったが、そんな暴露をしたことに慌てふためいたのは、姉妹の両親だった。
「なんてことをしたくれたんだ!」
「だって、お姉様を殺さなきゃ婚約者になれないと思ったんだもの。でも、あんなのと婚約できなくてよかったわ。お姉様ったら、あんなのと婚約破棄して、傷物になってお可哀想ったらないわ。貰い手が見つからなかったでしょうから、死んだところで何ら問題もないでしょ?」
プリムローズは、平然とそんなことを言い、父親は激怒してプリムローズの頬を平手打ちした。
「っ、痛い! 何、するのよ!!」
「ウィスタリアは、もっと痛かったはずだ」
「は? そんなの死んでるんだからわかるわけないじゃない」
それに頭にきたのは、母親だ。
「よくも、そんなことが言えるわね。なら、ウィスタリアと同じく階段から落ちなさい。痛みがわかるわ!」
「嫌よ! 助かったって、お姉様みたいに至る所にアザができてしまうじゃない。首だっておかしな方向に曲がって、気持ち悪かった。それこそ、死んじゃうわ。そうでなければ、傷が治らなかったら、どうするのよ。そんなんじゃ、どこにも嫁げなくなるわ。そうなったら、お父様たちだって困るでしょ?」
そんなことを言うのに両親は怒りが込み上げて仕方がなかったが、ウィスタリアにしたことをしても意味がないとプリムローズを階段から落とすことはやめた。
そこから、両親はプリムローズをすぐさま勘当したが、母方の祖父母はプリムローズがウィスタリアを殺したなんて、言いがかりもいいところだと全く信じることすらしなかった。
それは、いつもと同じことだった。
「実の姉を殺す? そんなことするわけないわ」
「そうだとも。酷いことを噂されて、真に受けるるなんて、お前たちが我が子を信じなくてどうするんだ」
「信じるも何も、本人がしたと言ったんですよ」
「そんなわけがないわ。可哀想にあの子が死んでもなお、姉のせいでこんな目にあわされるなんて」
頑なにプリムローズが、そんな事するはずないと言い、平行線のまま、祖父母がプリムローズを養子にすることにした。
プリムローズは、いつものように都合の良いよう記憶を好きなように書き換え続けた。
その後、プリムローズのせいで散々な目に合うことになったのは祖父母たちだが、それは自業自得でしかない。
彼らには、そのつけを払うことになる未来しか存在しなかった。
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